PSOみんなの広場

 




第三章 ASHERY


パイオニア1の事件以来、私は毎日のように手にした大金を、この酒場に来てはちびちびと酒を呑む事に使っている…あの事件…結局はパイオニア1の人達に止めを刺したのは、私達だ…あれ以来私は毎晩のように悪夢を見る。

「アシェリーさんですね?」

いつのまにか私の隣に黒ずくめの格好の男が座っていた。サングラスで表情は見えない。気配も消していた…あやしいねぇ。

「実はあなたに仕事を依頼したいのですが…」

なるほど、ギルドを会さないとはね…どうやらかなりヤバイ仕事らしい。
ギルドも見放して友人もいない私に白羽の矢を立ててきたのか。消えても誰も不信がら無いから……

「報酬は?」

「現金で100万メセタです。」

私が聞くと男は即答してきた。

「へぇ…ずいぶんと太っ腹じゃないのさ。よほどの金持ちか…政府の高官さんか…それとも…最初から払う気なんてないのか…」

私がそう言うと微かにだが男の気配が揺らいだ。
ふふふ…未熟だねぇ。そんなんじゃ悪党の一つも出来ないよ。
坊や。
やはり事がすんだら消す気でいたのだ。結局のところ、受けるかどうか少し迷ったが、受けることにした。フフフ…消せるものなら消してご覧。このアシェリーさんをねぇ!
依頼内容はガル・ダ・バルという島にある地下プラント施設に行き、そこにある研究データ無事持ち帰ること。という簡単な任務だった。
私は腑に落ちなかった。こんな簡単な任務で100万メセタか…ますますきな臭い。そのデータというのがよっぽど重要なのか…それとも、その場所がよっぽど危険なのか…どの道百聞は一見にしかず。いって見るしかないようだね。
黒服の手引きでラボ内に侵入した私はラボの転送装置でガル・ダ・バル島の地下プラント施設へと、降り立った。
その場所は私の記憶を揺さぶった。似ている…場所は海底で、明かりも完備されているだからあの場所よりは明るくてきれいだ。けど、明るさどうのでは無く、ふいんきが似ているのだ。
あの遺跡と…

「まったく…嫌な場所だよ…」

思わず独り言を呟かなければ一歩もそこを動けなかっただろう。
私は意を決して海底プラントを奥に奥にとすすんでいった。
そこらへんに青い血が広がっている。良く見ると焼け焦げた機械の部品らしきものも見える。どうやら先客がいるらしいねぇ。
しばらくすると通路の奥のほうでカタカタと何かの音が聞こえてきた。
通路の奥はチョットした広さの小部屋だった。そこの中央に巨大な制御端末が見える。その端末に向かって、緑色の法衣を着た金髪のフォースが何やら入力している。ハイスクール出たての坊や…というくらいの年齢か…
私は気配を殺してフォースの後ろに近づいていく。そして、愛用の武器である『ラストサバイバー』をフォースの首にあてがった。鉄製のラストサバイバーの感触でフォースの体が硬直する。

「動かないでね。坊や。ここで何をしているんだい?」

私は出来るだけ優しい声で言った。殺気は加減無く出していたけどね。
私の殺気を感じたのか、フォースの坊やは作業を止め、無抵抗であることを示すために両手を広げた。出来るだけゆっくりと、横へ…

(へえぇ…)

私は心から感心した。この歳で彼我の実力差が解るとはね。これが雑魚なら、何らかの反撃に出ようとして首と胴が離れているところだ。

「キミ、名前は?」

「………ハル………」

「坊や扱いして悪かったね。ハルくん。それで、改めて聞くけど。ここでなにをしていたんだい?」

諦めたのか溜息を一つ付いておもむろにしゃべり出す。

「…コンピュータにウィルスを送りこんでました。」

こうもアッサリ吐くとはね…買かぶっていたか…

「コンピュータウィルスか…あんたの任務はなんだい?」

「この施設にあるデータを全て削除することです、」

削除される前に現場を押さえるとはこれはまた運がいいねぇ。

「それで?もうインストールしたのか?」

私の問いにハルは右手から手品のように一枚のディスクを取り出した。
よかった。まだインストールはされていないようだ。私はそのディスクを取ろうと、右手を剣から離した。その一瞬、わずかな隙が生まれてしまった。
足元から急激に強烈な冷気が吹き上げてくる!
氷の上級テクニック・ラバータ?!視界が冷気に覆われて見えなくなる。
隙を見せてしまった自分に歯噛みしながら、ラストサバイバーを横にふるってみる。手応えは…ない!視界がはれた時、あのハルというフォースの姿はなかった。

「く!逃げたか?!…く、くそ〜!!………フフフ………あははは………あぁぁぁはははは!楽しいのがいるじゃないか!くくくく!つまんない依頼だと思ったらなかなかに…楽しいじゃないか!」

私を出抜いた坊や…ハルか…覚えておこう。それより、今は依頼だ。すばやく端末を操作してデータ内を調べる。…研究データなどはなかったが…

「日記か?…ヒースクリフ・フロウウェン?…?!なに!…オウスト博士だと?!」

オウスト博士…パイオニア1のラボのチーフにして、ラグオルの原生物を狂暴化させた張本人だ。
以前仲間と供に受けた依頼で彼の研究データを回収するという依頼があってその時はとてもひどい目に会った、どうやらこの仕事もオウスト博士がらみらしいね。
まだ何か裏があるね、これは…っくふふふ…なかなか…楽しくなってきたじゃないのさ…!!


第四章 SETUNA


私は現在惑星ラグオルのガル・ダ・バルというところの地下にある実験施設に仲間と一緒にいる………はずでした。

「え〜ん!リズさ〜ん!ヴァルキリーさ〜ん!インエイ先輩!!どこですかぁぁ〜!隠れてないで出てきた下さいよぉ〜!」

そうです!私…迷子になっちゃったんです!…どしましょう…(うるうる)ラボとも連絡が取れないし…私はどうなってしまうのでしょうか?
私の名前は雪菜とかいてセツナ。学校でたての新人レンジャーです………

そもそも、私が迷子になるきっかけは行き止まりの部屋にいってしまって、敵を掃討した部屋に戻ることになったのですが…
みんなが部屋を出ていったあと、姿を隠していたロボット『シノワゼレ』さんに後ろからどつかれ…もといい、攻撃されてしまったのです。
そのときに「きゃぁぁ!」とか、「たすけて」とか、悲鳴を上げたんですよぉ。
でも誰にも気づいてもらえず…悲しいな。それで、なんとか一人で倒すことが出来たんですけどみんなとはぐれちゃって……
…一人って心細いですね。
でも、挫けてはいられません!何とかいってない場所をクリアし、残るは後ふたつ!確率は1/2です!意を決して飛び込みます!

「おりゃ!」

………行き止まりです…(しくしく)
気を取りなおしてもう一つの部屋へ行こうとしたその時、後ろから衝撃が襲ってきました!受身を取って振り返ってみると、イカの化け物が1、2,3,4…いっぱい!
とっさに手にしてた散弾銃アームズを構え乱射しました。ですが、イカだけに、いかんせん数が違います。そのうち囲まれてボコボコに…イヤァァァ!こうなったら、秘密兵器です!奥の手を出そうと背中に手をやったら、あれれぇ?敵の動きが止ってしまいました。良く見ると凍ってるようですね。

「はやく!こっちへ!」

部屋の入り口から声がしました。そっちのほうを見ると、緑の服を着た浅黒い肌の金髪の青年が立っていました。どうやらフォースさんのようです。
私は急いでフォースさんの後ろに隠れました。次の瞬間、ものすごい爆発が巻き起こりました。たしか炎の上級テクニック・ラフォイエです。
爆発が収まるのを待って部屋を覗き込んで見ました。化け物が一体もいません。どうやら爆発でみんな吹き飛んでしまったようです。

「あ、ありがとうございました!おかげで助かりました!」

「いいえ、余計なことをしてしまったようですね。何かやろうとしていたのでしょ?」

「いえ!そんな!本当です!助かりました!」

いい人のようです。私に好みじゃないのが残念ですが。

「私セツナといいます!」

私が自己紹介するとフォースさんはにっこりと笑って。

「はい。知っています。僕はハル。ラボの人間です。補給物資を持ってきました。どうぞセツナさん。トリメイトとトリフルイドが10ッコづつです。」

うわ〜助かる〜!ラボ様様です。私がアイテムを受け取るとハルさんはあたりを見まわして、

「他の方々は?」

と聞いてきた。うう〜…はぐれて迷子になったなんて本当は言えないが、そんな事言ってる場合じゃない。私は事の細かに経
緯を話した。するとハルさんは険しい顔をして、通信機らしきものを取り出した。

「実は、僕も先ほどからラボと連絡が取れないのですよ。」

「そうなんですか?!どうしちゃっ…」

ドカーン!!

轟音が響く。爆発音だ!

「こっちです!リズさん達かもしれません!いきましょう!」

私達は必死で駆け出した。連絡の取れないこの状況が自然と焦りを生んでいるのかもしれない。爆発のあった場所につくと、一人のハニュエールが機械の残骸の上に腰を下ろしていた。

「おや?ハルかい。またあったね。」

ハルさんが戦慄するのがわかる。

「リズさんじゃない…」

私がそう言うとそのハニュエールは目を見開き私を見た。

「そこのお嬢ちゃん。いま『リズ』っていたのかい?」

その人が立ちあがろうとしたその時、ハルさんの持っていた通信機からノイズが聞こえた。ハルさんは通信機を確認しようとした…が、そこから聞こえてきたのは老人の声と思われる低くくぐもった声だった。
全員がその異様な光景に息を呑んで立ち尽くす。

「…我ガ身ハ…無力ニシテ…」
「…全ヲ持ツ…存在ト成リ果ツ…」
「…タダ今ハ…」
「…深キ淵ニテ…我ヲ滅ボス…」
「…赤キ捕ラワレ子ノ…救イ手ヲ…」
「…待ツ…コノ深キ…地ノ底デ…待ツ…」
「…ワガ名ハ…スクリフ…フロウ…」

………誰も一言もしゃべらない…この異様な現象に誰もが言葉が出なかった。
その直後、建物全体が何か別の物になったような気配が充満した。私はその気配に気分が悪くなって座り込んでしまう。だが、特に敏感に反応を示したのはハニュエールの人だった。血が出るほど拳を握りこんでいる。

「これは!!この気配は…『ダークファルス』!そんな!」

ハニューエールの人が近づいてくる。そして、気分の悪さから口元を押さえ、座り込む私の胸元を掴んで立たせた。

「あんた!リズを知ってるね!リズの所に案内しな!」

そう言って私を揺さぶる。涙が出そうだった。だが、彼女は容赦しない。

「泣いてる場合か!もし今のが『ダークファルス』だったら!パイオニア1と同じくパイオニア2も全滅なんだぞ!お前もハンターズだろ!だったらしっかりしろ!」

私は彼女の言葉で何とか正気を取り戻し自分の足で立った。が、どうする?
リズ達とは離れてどこに居るかも解らない…そんな時、一番冷静だったのはハルさんだった。

「たった今、ラボと連絡が取れました。リズさん達はココから西に1キロ、地下に20メートルの地点にいるそうです。向こうにも連絡がついて、僕達が来るのを待っててくれるそうです。いきましょう。」

ハルさんの言葉で活気付いたハニュエールは私から離れて走り出した。

「よし!いくよ!」

「ちょっとまった!」

が、ハルさんがストップを掛けた。ハニュエールの人はこれは予想してなかったらしく、バランスを崩してコケた。

「な、なんだい!一刻も早く行かなきゃ…!」

「その前に!あなたの名前くらい教えて下さい。」

悪気のないハルさんの笑顔がまぶしかった。