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もっと軽い話だたはずが…こんなにも長く重くなってしまいました。(HARU) |
第一章 VALKYRIE
惑星ラグオル…新たなる新天地を求めて旅を続ける私達にとって、新たなる楽園となるはずだった星。
パイオニア計画…衰えた大地を旅立ち人の住める新しい星を探し、当ても無く…宇宙を流離う大規模移民計画。
パイオニア2…私達の乗るノアの箱舟。
パイオニア1…私達パイオニア2より先に旅立った偉大なる開拓者たち…
今でも私は夢に見る…彼らの苦痛ゆがむ顔…悲痛なうめき…そして…『ダークファルス』
「!」
私は目を覚まして、今自分がいる場所を確かめる。………自分の部屋だ。
ダークファルス。惑星ラグオルに封じ込められていた邪悪な思念体…破壊の権化…無力にて全能なる者…
パイオニア1の人々を取りこみ、ある凄腕ハンターの肉体を依り代に復活した知られざる破壊神。
私はかつて三人の仲間とともに、かの邪悪を滅ぼした…いや、止めを刺したと言うべきか。
リーダーのハニュエール、リズ。フォマールの、インエイ。
隻眼のハニュエール、アシェリー。そして私………
四人の見守るなか、開放され天へと召される赤装束の少女。
そして、すべてが開放されたラグオルは幾らか平穏を取り戻した。
多大な犠牲と供に………
窓のブラインドを上げる。すると、暗闇に慣れた私の目につきさすような光が飛び込んでくる。現在私達パイオニア2は惑星
ラグオルの衛星軌道上ではなく、ラグオルの大気圏内にいた。
かつてパイオニア1の人々に起きた災いからかなりの時間が、たっていた。私の名はヴァルキリー。ハンターズの分類でいうとレイマールというレンジャーだ。
かのラグオルにおける事件以来、ハンターズの仕事は激減していた。
正確には、戦闘などの行為をする仕事が減っただけだった。
私としては戦闘よりも、こっちのほうが性に合っているからいいが、その他のハンターはほとんど無職の状態だという。
私は洗面所に行き顔を洗ってから、今日はどんな依頼があるかを
チェックするため端末を覗き込んだ。すると、メールが一通届いている。
かつてのチームリーダーのリズからだ。内容はこうだ。
「お久しぶり。元気にしてた?驚いたでしょ。あの日以来、お互いに連絡すらとらなかたもんね。実はね、ある所からチョット特殊な依頼が来ててね…そこの条件にあの日のメンバーに依
頼したいらしいの。もう、インエイには連絡ついてて快く引き受けてくれたよ…OKだったらメール頂戴ね。アシェリーはやっぱり連絡つかなかったよ。どこ行っちゃたんだろうね。まあ、あの人のことだか
ら心配ないか!じゃあ、連絡待ってます。またね!」
(リズは変わってないな)
私はすぐに返事を書いて送った。
パイオニア2 第68シップ 第1ブロック ロビー10。
人があまり来ない辺境と言われるロビー。そこが私達がいつも集まる場所だった。
そこには金髪の(うらやましいぐらいの)グラマーなニューマンが座っていた。リズだ。リズは近づいてくる私に気づき大き
く手を振る。
「ヴァル〜!こっちこっち!」
私は軽く手を上げて挨拶を返す。
「久しぶりね、リズ。…なんて言うか、相変わらずいろんな意味で迫力があるわね。」
半分嫌み、半分セクハラまじりのジョークを飛ばす。が…リズはきょとんとして
「そおぉ?あはは、ありがとね!」
と、さらっと流してしまった。天然というか…普段はこんな感じの彼女だが、戦場に立つと一変…敵に死を告げる死神と化す
。
あたりを見まわし、もう一人の姿を探す。
「………インエイは?」
「遅れてくるって。何でも、知り合いを連れて来るらしいよ。」
「ふ〜ん」
インエイが知り合いを連れて来るなんて珍しい。その強烈なキャラと話の濃さと毒舌なインエイの知り合いか…どんなのだろう?
「遅れてゴメンナサイ」
噂をすれば影。ロビーの入り口から黒いローブを身に纏ったフォースが優雅に姿を現した。彼女はインエイ。フォースでありながら、前衛に立ち敵を一刀両断するパワフルフォマールだ。
「久しぶりインエイ。」
私が軽く挨拶をすると、インエイはにこりと笑って挨拶を返した。
「あれ?その子は?」
リズがインエイの後ろを見ると、レンジャー帽をかぶった人影が見える。なるへそ。これがインエイの知り合いか。
「ほら、セツナさん!ご挨拶なさい!」
「は、はい!」
インエイが一括するとセツナは飛び上がって前に出た。顔から滝のように汗が流れてる。まだあどけなさの抜けないレンジャーの少女だった。装備などがまだ真新しい。新人かな?
「はぁぁ!は、はじめましぇ…まして!セッツ、セツナといいます!あ!帽子が!きゃぁ!」
セツナは激しく敬礼をしようとして、帽子を落とした。それを拾おうとして転倒。そのまま2回転して茂みに突っ込んだ。
どうやらかなりの緊張で体が上手く動かなかったらしい。
このとき、噴出さなかった自分を誉めてやりたかった。
リズなんか、思いっきりつばを飛ばして爆笑していた。
インエイなんか、こめかみに血管が浮き出ている。
(あ〜あ。後でインエイの雷が落ちるな。こりゃ。)
などと心の中で呟きながら私は…笑いをこらえるのに必死だった。
「はい!みんなそこまで!笑うのヤメ〜!」
笑ってたのあんただけでしょうが!などと心の突っ込みもほどほどにして挨拶もそこそこに、リズは本題に入った。私達にきた依頼とは……ラグオルの新しいポイント、ガルダバル島の調査と…
陸軍副司令官 ヒースクリフ・フロウウェン氏の捜索だった。
私達はこの時…この依頼がとんでもない事件の始まりだったことに、気づくはずも無かった。
第2章 HARU
僕の名前はハル・グラント。ハンターズのフォースのヒューマン…つまり、フォーマーなんだけど…現在はラボでアルバイトをしている。
え?なんでかって?ハンターズの仕事が減ってきたからさ。たとえ、巨大な移民船で健康・生活などが管理されているパイオニア2といえども!働かざる者食うべからずはかわらない。
僕には上に三人の姉がいるけど、一番上の姉は結婚して、今ごろ新婚なラブラブ生活を送っている。
2番目の姉は現在ラボの研究員だ。
そして三番目の姉はハンターズの腕利きフォマールだったけど、もういない…
僕も3番目の姉の跡を追いハンターズのフォーマーになったけど、2人の姉の猛反対をうけ、断念。2番目の姉がラボのお偉いさんに口をきいてくれたし、仕事が減ってきたのもあいまって現在に到る。
ラボでアルバイトをはじめてもう4ヶ月がすぎるけど。はじめの頃は簡単な荷運びしかやらされなかったが、最近は実験の雑用もやらされている。
ラボのアルバイトはとにかく時給が安い!それこそすずめの涙という言葉が適用されてしまうほど安い!だか、衣・食・住が総督府によって保証されているので、時給が安くても生活はしていける。
特に医療品、メイトやフルイドがタダで支給されるのが一番うれしい特典だった。…だけど、たった13メセタでこき使われるのはやっぱり割に合わないと思う今日この頃だった………
でも、いいことも有る。ラボの食堂はハンターズの食堂に比べると、メチャクチャうまい!!
同じパイオニア2に在る食堂なのに、なんでこんなに違うんだと疑問に思わざるを得ないほどうまいのだ!
さらに!
こんな美味い飯が『タダ!』なのだ!く〜お母さんこの世に生んでくれてありがとう!!
などと平和な日々を送っていた僕にある日、変化が訪れたのだった。
そして、この変化が僕をある事件へと誘っていく。
事の始まりは食堂で仲良くなった「ジャン」という研究員との昼食の時だった。ジャンはパスタを、僕はラザニアを食べていた時の何気ない会話だった。
「ウフフ、そう言えばハルくん。聞いたかい?」
パスタをすする手を止め、ジャンが話を切り出してきた。
「ん?なにを?」
「新しく見つかったポイントのことサ」
「あぁ…姉さんから聞いたよ。なんでも、救難信号だか通信だかがその場所から出てたんだって?やっぱり軍が派遣されるのかな?」
「いんや。どうやらハンターズのチームが派遣されてるみたいだよ。すでに『カル=ス』によるVRシステムの適合検査をパスしてもう上陸しいるはずさ。ラザニアおいしそうだねぇ。一
口頂戴。」
「あぁぁ!チーズだけそんなに食うなよ!そっか…でも、『カル=ス』がそこまで使えるようになってたとはね…」
『カル=ス』ラボの新しいメインコンピュータだ。ラグオルでパイオニア1が作ったと思われる坑道から回収されたデータの断片を繋ぎ合わせた最低限のバックアップをラボが修復、稼動させたものだ。その性能、計算速度は従来のCPUを凌駕するほどの物だっただった。
「僕としてはそっちのほうが驚きだよ。パスタイタダキ!」
一瞬の隙を突いてジャンのパスタをゴソリと盗る。
「あぁ!そんなに食べたら僕の分がないじゃないか!…でもそうだね。
僕もよくあの暴走した『ボル=オプト』に汚染されずに無事回収されて、ここまで復旧したもんだと思うヨ。………キラーン!!」
しみじみと自分の感想をもらしてスキを作ったつもりだろうが、そうは行かない。ラザニアを狙ってきたジャンのフォークを僕は自分のフォークでガードした。フォークがキーン!という音を立てる
「ウフフフ…やるねぇ。ハルくん!」
「ははは、百年早いよ…ジャン!」
「あ〜!博士!食べ物で遊んじゃいけないんですよぉ〜!」
僕とジャンの食べ物に対する殺気が作り出す異様なふいんきに、間延びした声が響く。横を見ると一人のアンドロイドが(一体ではない。僕はアンドロイドを一人と人称で呼ぶ。)立っていた。とたんにジャンが破顔する。
「およ?うっす!エルノアじゃないか。久しぶりだね。」
「やあ。エルノア。君も一緒に昼食でもどうだい?」
「え〜!博士!いいんですかぁ?!あ、でも、私は食べ物は…」
などと言いつつ、もじもじしだす。こんな仕草を見ていると本当に人間みたいだ。すばやくジャンがフォローする。
「冗談だよエルノア。それより何の用だい?」
ジャンが切り出すとエルノアは少しがっかりした仕草で用件を告げた。
「えぇっと、ナターシャチーフが博士を呼んでるんです。至急オフィスまで来いとのことです。」
エルノアの言葉にジャンは表情を曇らせた。備え付けのナプキンで口元を拭き、おもむろに立ち上がる。
「そうか。それじゃぁ、行かないとな。ありがとうハルくん。楽しい昼食だったよ。さあ、行こうかエルノア。………エルノア?」
ジャンがエルノアに促しても彼女は一向に動く気配はない。
「どうしたんだい?エルノア。」
ジャンが聞くと彼女は申し訳無さそうに口を開いた。
「あの……それが……呼ばれているのは博士だけじゃないんですよぉ。ハルさんも一緒に連れて来るようにって言われてるんですぅ」
エルノアの一言にジャンの表情が険しくなる。一人事情を飲み込めない僕はただ呆然とするしかなかった。
「???…へ?…なに?…ぼく?」
エルノアに連れられて僕達はラボへ向かった。パイオニア2研究施設統括チーフ、ナターシャ・ミラローズ。
政府からの天下りくだりと噂されるが、出生その他などすべて謎の人物である。
研究者受けがよく、ラボ全体からの厚い信頼意を受けている人物である。ジャンはそうでもないらしいが。
「昼食の最中ご足労すまないな、モンタギュー博士。アルバイトのハルくんも、わざわざご苦労。」
「いえ…そ…」
「いやいや、僕を呼び出すぐらいだからものすごく重要な用件なんだよね?ナターシャチーフ。」
悪気も無くさらっと言うチーフに対しジャンは僕の言葉を遮り満面の笑顔で答えた。かなり怒ってると見た。
「そう気を悪くしないでくれ。まずは博士にこれを見てほしい。」
ナターシャチーフが手元の端末を操作すると、ジャンの前に色々な立体データが表示された。
専門知識の無い僕には何が書かれているのかはさっぱりだったが、神話に出てくる魔獣のような生き物のデータだということは理解できた。データを見たジャンはまるで汚物を見るような表情をしている。
「現在調査中の島『ガル・ダ・バル』にて目撃された生物のデータだ。この生物について博士の意見を聞き………」
「アルタービーストだね。」
チーフが聞く前にジャンは断言した。これにはさすがのチーフも先手を取られて沈黙してしまった。
調査中のガル・ダ・バルからこのような怪物データが、送られてきたのだ。上陸しているハンターは夜ほどの腕利きだな。
ジャンはさらに意見を述べる。
「ラグオルで発見されたあの巨大芋虫と同じだよ。えっと…なになに?
『ガル・グリフォン』ってのかい?なるほど、ガル・ダ・バルのグリフォンでガル・グリフォンねぇ………安直だね。仕事からして多分、あの人の研究成果だと思うよ。」
ジャンの意見を聞いてチーフは表情を一変した。そう、何かを決意したような表情だった。
「なるほどな、やはり同じ意見になったか。ならば博士、改め
て聞こう。この研究をどうすれば良いと思うかね?」
「愚問だね!過ぎた力は身を滅ぼすよ!自分で制御できない物を利用しようとするのは、馬鹿のすることだよ。」
どうやら2人とも同じ意見に達したようで。ひとつうなずくとチーフは僕のほうを見た。
「では、ハルくん…いや、フォースハル!君に頼みたいことが有る!」
「僕に頼みたいこと?」
チーフは傍らに置いてあった一枚のディスク僕に差し出した。
「我々ラボが開発した新型のコンピュータウィルスだ。データをインストールして30分以内ですべてのデータを食い尽くす
。ガル・ダ・バル島にある地下プラントにあるデータをこれですべて処分してほしい。
アルバイトである君にこんな事を頼むのは筋違いかも知れないが………
これは、われわれラボの非公式な依頼だ。拒否してもかまない選択はキミに任せる!」
なんとまあ、とんでもない事になったなぁ。
はあ、姉さんが聞いたらなんて言うやら………僕は……… |
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