PSOみんなの広場






第2章 トラブルメーカー

さて、ユナ、リナとガドルを連れて坑道に行くことになった。
ここならば熱射病はない…などとくだらないことを考えながら私も3人の後についていく。
「なんかさぁ、意外だよね。ラグオルっててっきり無人の星かと思ったのにさ。」
リナが呟く。この坑道はどう考えても人工的に作られたと思われる。しかも高度の技術を持ってしてだ。
「やっぱ襲ってくるこいつらもプログラムミスってやつかな…」
目も前に出てきたギルチックを睨みながらユナが構える。
「さぁね。何かあの爆発事故と関係あるんじゃないの?」
「出てきた奴はぶっ倒すまでよ!!」
ガドルが大剣を振りかざし皆より先にギルチックに襲いかかった。
「早いっ!!」
ユナがシフタを唱えようとしたその時すでにガドルは敵に向かって突進していた。
「待ってよぉ!もう!」
リナがガドルの後を追った。

ガシャーン!!

ギルチックがいい音を立てて倒れる。だがすぐにギルチックは立ちあがってきた。
「しぶといなぁ、ふっ壊されるだけなのにねぇ…」
ガドルはニヤリと笑うと再び大剣を構える。
「俺のハニーには指一本触らせないぜ!!」

ガシャーン!!

再びギルチックが倒れる。そしてまた再び起きあがってくる。
「ったく…」
「ガドル!!後ろ!!」
ユナの声が飛ぶ。ガドルの背後にカナディンがふわっと浮かび上がってきた。
「…!!」
ガドルは目の前のギルチックを攻撃しようかカナディンを攻撃しようか躊躇する。
「うわぁっ!!」

シュイン!!

私のカノンの真空派がカナディンを捕らえた。
「何をしている。ギルチックを殺れ」
「…い、いわれなくてもやるさ!!」
ガドルが再び剣を構えギルチックを攻撃した。…そして今度は起きあがってこなかった。
そのまま粉々に部品が散る。
「よっしゃ!みたか、俺の実力!」
後ろからリナがつんつんとガドルを突っつく。
「よくいうわよ…あんた、エンデルクの支援がなかったら今ごろぶん殴られてるわよ…」
「ちょ、ちょっと油断しただけさぁ。あっはっは」
笑ってごまかすガドル。
「ふぅ…」
思わず溜息をつく私。
「まって、今全員にシフタとデバンドをかけるから」
ユナがテクニックを唱え始めた。
「ったく…先に突っ込むからこういうことに…」
リナがそう言い終わらないうちにガドルが次の部屋へと突進していった。
「ちょ…ちょっとぉ!!話しは最後までききなさいよ!!」
リナが慌てて後を追う。
「なんか…先がとっても不安…」
ユナが呆れた顔をして呟く。
「同感…」
私も思わずつられて呟く。ユナと私は急ぎ足で2人の後を追った。
遠くの方からガシャーン!!と機械が壊れる音がする。
「随分派手な人だなぁ…まぁ…大方予想はついたけど…」
敵を蹴散らしながらどんどんと先に進んでゆくリナとガドル。私達2人が目にする物は無数に転がったアイテムだった。
「もう、修行にならないじゃない…」
ユナが不服そうにもらした。とりあえず2人を追いかけて進む。
「あ…あれ?」
ユナの足が止まった。
「どうした?」
「ええと…ほら、みてよ。エリアマップ。かなり遠くの方にいっちゃったね…どこからいくんだろ…」
「どれ…」
ユナのエリアマップを見てみるとガドルとリナが画面の端っこに存在するのがわか
る。ここからでは道が途切れていてわからない。
「…多分ワープを使ったんだな…」
「もう!どこまで自己中なのよっ」
「…メールでもだしてみろ。」
「ええ?!ガドルのギルドカード貰ってないから通信が…」
「いや、せめてリナのものなら貰っているだろう」
「あ、そっか。あはは…やってみるね」
携帯式コントロールパネルのボタンをプチプチと押しメールを送信するユナ。
「おっけい。あとは返事待つだけだよ」
「うむ…」
「あのさ、これからどうする?先に進む?」
「む…下手に動いても道に迷うだけだと思うが…」
「だよね…でもこんなところで突っ立ってるわけにもいかないし…」
「…とりあえずこの場所を覚えておいて先に進むか。ワープがあった時点でストップすればいい」
「あ、そうだね。おっけい」
ユナが元気そうに走り出す。それにならって私も小走りをする。
「…おっかしいなぁ、返事が返ってこない…」
「通信ミスかもしれん。もう一度出してみろ」
「うん…そうする」
ユナが再びコントロールパネルを操作する。その時

ガシャガシャガシャン!!

「…!!」
突然前後にシノワビートが降りてきた。
「あわわ…」
コントロールパネルを慌ててしまおうとパニックになるユナ。
「通路に逃げろ。任せておけ」
「へ…?」
ユナの返事を聞かずに私はシノワビートに向かって斬りかかる。ユナはとっさに通路に隠れる。

ガスガスガスガス!!

途中後ろのシノワビートからの攻撃!!

ガコン!

「つッ…」
私は少し顔を歪めた後に目の前のシノワビートにさらに追い打ちをかける。

ガスガスガス!!
ガチャン…

一つのシノワビートが膝をついて転がる。
「次だ…こい」
もう一体のシノワビートに向かって斬りかかる。

ガスガスガスガスガス!!
ガッチャン…

もう片方のシノワビートもあっけなくぶっ倒れた。
「す…凄い…凄いじゃん!エンデルク!」
ユナが通路から飛び出してきた。
「ん…そうか?」
「グラスアサシンに殺されそうになってたからてっきり貧弱かと思っちゃった…」
「ああ…あれか、まさに不意をつかれたと言ったところかな」
何度も言うが熱射病などとは決していえない…
「うーん…」
「どうした?」
「やっぱり返事が返ってこない…どうしたんだろ…」
「…不安だな。やはりこのまま先に進もう」
「あ、待って」
私が歩こうとするとユナが引き止める。
「なんだ?」
「いやあのね、今敵が出てきたってことはこっちは2人は通ってないってことだよ
ね」
「…そういえば、そういうことになるな」
「じゃあ、逆の道にいってみよ」
「わかった」
今まで来た道をひき返すユナと私。
「えっと…さっきはこっちからきたんだから、こっちかな。どう思う?」
「………………ノーコメント」
「えーなんで?!少しは協力してよぉ」
「…恥ずかしい話私は方向音痴なんだよ」

(ナレーション)事実、プレイヤーも方向音痴です。オフの遺跡で3時間迷いまし
た。

「なんだか頼りになるのかならないのかわかんない人だなぁ…」
「いいから君の思った道を進んでくれ。私は護衛にまわる」
「らじゃー…」
ユナが再び歩き出す。

それからどのくらいの時間がたったのだろうか…行けども行けども2人をみてけることはおろかワープまで見つからない。
「どこいっちゃったんだろ…」
ユナに段々不安の表情が浮かんできた。
「うむ…」
「もう1回メールだしてみる…」
「わかった」
再びコントロールパネルを操作し始める。
…………………………
「あっ!返事がきた!」
「!」
思わずコントロールパネルを覗く私。そしてその内容をみて2人は凍結した。

”今バイオニア2に買い物に行こうといったん戻ったら他の人に声かけられたからそっちの人といくね。またねぇ〜ん”

「………………なんで…そうならそうと早く…」
ユナが落胆する。
「まぁ、気を落すな。…私達も戻ろう。」
「…………」
「うーむ…」
こんな時に気の利いた事が言えない自分が情けない。ない頭ひねって思いついたのはこうだった。
「そ、そうだ。景気付けに一杯ご馳走するよ。」
「……………うん?」
「な、なんでもシップ5のブロック13に新しい飲み屋ができたという噂を聞いた。」
「飲み屋…?」
「ああ、話によると裏では人材派遣もやっているそうだな。一度顔を出そうと思っていたところだ」
「……友達…できるかな…そこで…」
「え…」
ユナがいつにもない悲しい表情で地面を眺める。
「あたしね…いつもこうなんだ。一緒にいこうっていってリナともぐって…でもリナってかわいいし美人だし、すごいもてて…」
「………」
「あたしさ、実力もないし、産まれつき顔に変な模様ついてるしさ、がさつで…それに…」
ユナの声が段々涙声になってきた。
「ユナ…もういいよ…」
ユナがふっと私を見上げる。
「ねぇ、そこならさ、仲間ってできるかな…」
「…行ったことがないからなんともいえんが…」
「……そう」
また下を向いてしまった。
「む…まぁ、少なくても…私は君の仲間だと思っているが…?」
「ふぇ…?」
ユナが意外といった表情で私を見る。
「とにかく、そこの飲み屋にいってみよう。何か発見があるかもしれん」
「…うん!」
涙をぽろぽろと流しながらユナがうなずいた。


バイオニア2に上がりシップ5ブロック13に飛ぶ。
「いらっしゃいませぇ〜!!」
突然景気のいい声が耳に飛び込んできた。
「な、なんだぁ?」
ユナが一瞬ひるむ。私は声のする方向へと歩き出した。
「いらっしゃいませ〜!!クラブ”ノーチェ”へようこそ!!」
元気な声で宣伝しているのはごっついロボットだった。
「クラブ…だって。さっきいってた飲み屋って…あれかな?」
「わからん…とにかくあのレイキャストに話しを聞いてみよう」
ズカズカとそのロボに向かって歩き出す。
「わ…ちょっと待ってよぉ…」
ユナも慌てて私の後を追ってくる。
「失礼。クラブ”ノーチェ”とは何だ?」
「ちょ、エンデルク!いきなり肩ひっつかんで話すのは失礼だよぉ…」
「おや、お客さんかな?クラブ”ノーチェ”っていうのは一般人もハンターもご用達のクラブだよ」
「ほう…例えば?」
「かわいいホステスやホストもいるよ」
「へぇ…」
関心するユナ。そこで私は確信を突く。
「ほう…例えばそこの従業員は全員ハンターだったりしてな…」
「…随分有名になったなぁ…ノーチェも。はっはっはっは」
ロボが大声で笑い出す。
「興味あるんならロビー3にいってみなよ。すぐにわかると思うから。あ、私こういう者です」
そういうとロボはギルドカードを差し出してきた。
「宣伝マン…?なんだ、そのままじゃないか…」
「宣伝を必要とする人の、宣伝による、宣伝する為に産まれてきたのが私でございます」
「ほう…どこかの有名人みたいなこというんだな。早速いってみるよ」
「はい〜ありがとうございます〜」
私はロビーカウンターに向かって歩こうとした瞬間彼に一つ質問をした。
「全然関係なにのだが…………君のレベルは?」
「はっはっは、……………………………………1です」
「…本物の宣伝マシーンだな…」
「では、また〜」
宣伝マンは軽く私達に手を振ると再び大きな声で宣伝を始めた。
「面白いレイキャスト…」
「まったくだな…」
私は苦笑しながらロビーカウンターに向かった。


ロビー3、すぐに下に下りてみるとノーチェとかいう場所はすぐにわかった。
まばゆい光が夜道をいっそう明るく照らしつけていた。
「すごい…なんだか高級…」
「うむ…同感…。まぁか、ぼられたりしないだろうな…」
「わかんない…でもさっきのレイキャストさん、いい人そうだったし…大丈夫だと思う」
「うむ、じゃあ開けるぞ」
私がドアに手をかけようとした瞬間

バタン!!
ゴンッ!!

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!」
思いっきりドアが私の顔面めがけてとんできた。自動ドアか?私が視線を他に移すと小さいフォニュエールが出てきた。
「じゃ、まったねぇ〜ん…あれ?」
フォニュエールが私の事を気付いたらしい。
「どうしたの?顔面真っ赤だよ?」
「どうしたの?じゃない…!ドア開ける時くらいそっと開けろ!」
「へ?ああ、勢い良く開けたからぶつかったんだ。だっさぁ〜」
ケラケラと笑うフォニュエール。
「ほっとけ。私は昔っからどん臭いんだ!」

(ナレーション)事実、プレイヤーもどん臭いです。

「だ、大丈夫?エンデルク?」
ユナが心配そうに私の顔を見上げる。
「ああ、大丈夫だ…ところで君もここの客か?」
フォニュエールに視線を移す。
「ん?ああ、別に客ってわけじゃないんだ。ただここのママと仲がよくてたまにひや
かしにくるのさ」
「ひ…ひやかし?」
「じゃ、またね〜」
「あ、ああ…」
フォニュエールは元気よく街の雑踏に消えていった。
「マイペースな子だな…」
「エンデルク、入ってみようよ」
「…ああ、そうだったな」
気を取りなおしてドアノブにもう一度手をかける

バターン!!
ガツン!!

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!」
またもやドアが勝手に私の顔面めがけて飛んできた。
「だ…大丈夫?」
「がっ…頑丈なのだけが私のとりえだ…しかし…ここのドアは自動ドアか?いたた…」
視線をまたもやドアの方へと移す。
「ありがとうございました〜」
ドアから客らしき人物がぞろぞろと出て行く。それを笑顔で見送る人。多分ここのホステスだろう。
「あら…?」
ホステスらしき人が私達に気付く。
「お客様ですか?…随分顔が真っ赤ですけど、大丈夫ですか?」
あんたらがやったんだろうがっ!!という台詞をぐっとこらえて…
「ああ、そのつもりできた。一つ聞きたいことがある」
「あ、はい、なんでしょう?」
「ここの料金は?ちと不安でね…」
「あ、はい。基本的にはお客様のレベル×100メセタとなっております」
「や…やすっ」
ユナが唖然とする。
「ご利用ですか?」
「あ…ああ、入らせてもらおうか」
「はい、ありがとうございます。2名様ご案内〜」
元気良くホステスが私達を店の中へと通す。
「うあ…なんかすごい…いいのかな…あたしみないのがきて…」
「構わんだろう。さっきのフォニュエールも君と同い年くらいだったからな」
「あ、そっか」
ホステスが進めてくれた席に2人で座る。
「お客様、お飲み物はいかがいたしましょうか?」
「え…えっと…」
でた…ユナの優柔不断。ホステスも待っていることだし私から進めてみる。
「ユナ、酒は飲めるのか?」
「んー少しくらいなら」
「そうか、じゃあ軽くホワイトキティーなんかどうだ?」
「…?なに、それ。かわいい名前だね」
「カクテルだよ。甘くて飲みやすいと思うぞ」
「うん、じゃあそれにする」
「って…勧めておいてなんだが随分レアなカクテルだが…あるのか?」
「はい、ございますよ」
「おお…凄い、品揃えも絶品というわけか…なら…」
悪戯心が私をくすぐる…
「レインボー…あるかな?」

(ナレーション)レインボーというのは世界でプロ上級でしか作ることのできない7種類の酒を混ぜないで作るカクテルです。

「はい、ございますよ」(即答)
「は…?」
あっさり返されて正直驚いた。
「あ…あるのか、作れる奴がいるのか…驚きだな…」
「では、ホワイトキティーとレインボーでよろしいですね?」
「あ…ああ、宜しく頼むよ」
「かしこまりました」
そういうとホステスは店の奥へと消えていった。
「ねぇ、エンデルク。レインボーってなに?」
「みればわかるよ…うんちくなら自分で調べろ」
「う…うん…」

しばらくたつと注文の品がでてきた。
「わぁ〜綺麗。これがレインボーっていうんだね」
「ああ…私も実物は始めて見た」
「へ…?」
「いや…なんでもない…」
そんなどぎまぎした会話の途中に先ほどのホステスが話しかけてくる。
「お客様、今日はどのようなご用事で?」
「この子に一杯おごると約束したのでね…」
ユナの頭をくしゃくしゃとなでた。
「うぐ…」
「そうですか。ホスト、ホステスも待機していますがどなたかつけますか?」
「うーん…ユナ、どうする?」
「うん…」
ユナの表情が一瞬こわばったと思うと重たそうに口を開いた。
「仲間…仲間に…友達になってくれる人がいい…」
「かしこまりました、少々お待ちくださいませ」
そういうとホステスは再び店の奥へと消えた。
酒に口をつけながら店の中をざっと見渡してみる。皆各々楽しんでいるようだ。
どうやら商売繁盛といったところだな…中には一般人までいる。
無骨なハンターもその中にまみれている。いつか…ラグオルが平和とみなされたのならばこうやって
人種関係なく暮らしていけるそんな日がくるのだろうか…
そうぼーっと考えていた時、あるハニュエールに話しかけられた。
「あら…見ない顔ね、とてもハンサムな人と可愛い子ね…。ふふ、好みだわ」
「………失礼、何か用事かな?」
「ふふ…台詞とうって違って表情を変えないのね、そこもまた好みだわ」
「にゅ…」
ユナがハニュエールの雰囲気に圧倒されている。確かに周りの人間とは何かが違う。
決定的に。
「お客様をじろじろ見たら失礼よね、挨拶のつもりだったの。ごめんなさい…ごゆっくり…」
そういうと銀髪をなびかせてその女性は店の奥へと消えていった。
「誰…だろ?」
「さぁな…確かにいえるのはここにいる平従業員とは決定的に違うということだな…」
「ふぅん…」

そしてユナとしばらく雑談をしていると一人のフォニュームがやってきた。
「お客様、お待たせ致しました」
そう挨拶をするとユナの横にすっと座る。
「俺の名前はゼフィルっていうんだ、宜しく」
にこにことゼフィルが笑う。
「うん…宜しくね…あたし、ユナっていうの」
「私はエンデルクだ。宜しく頼むよ」
「えっと…ユナにエンデルクね、宜しく」
「君にも飲み物が必要だろう。好きなものを注文していいよ」
「ありがとう。ええっと…ん?」
ゼフィルの視点が私のレインボーを捕らえた。
「ああ、君かぁ、レインボーとかまたレアなものを頼んだの。バーテンダーが困ってたよ、あはは」
「ああ、なんでもありそうだから試しにね…」
「そっかぁ、面白い人だな。じゃあ、俺はビールでいいよ」
「OK、じゃあ頼んでくるよ」
「あ…俺が行くからいいよ。お客さんなんさから」
「いやいや、ユナと話をしていてくれ。では」
私は席を立つとバーテンダーに向かって歩き出す。

バーテンを探してフラフラしているその途中なにやら一際騒がしい団体を見つけた。
「…なんだ?」
興味半分にその団体を覗いてみる。するとその真中には銀髪を靡かせ黒い服をきた
ヒューマーがいた。
「ふむ…あいつもやはりホストか?」
試しに聞き耳を立ててみる。
「きゃーふみやーこっち向いてー!!」
「私をみてー!!」
周りを取り囲む女性達がわいわいと騒ぐ。
「…凄い人気だな…」
私が無意識に呟いた。
「ああ、あの人はNO1ホストなんですよ」
その背後に何時の間にかフォーマルが立っていた。
「…ほう…まぁ、確かに…納得できる部分はあるな…」
「ふふ…あなたとはまた違ったタイプのハンサムね」
「私はハンサムだとは思っていませんよ。もう歳も歳ですしね」
「男は年齢じゃないですよ。心です」

心…。
確かユナにもそんなことをいわれた記憶が…

「お客様、なにか御用事で?」
「ああ、ビールを頼もうと思ってね」
「そうですか、私がお持ちしましょうか?」
「いや、私がじかにいくよありがとう」
「そうですか、では失礼しますね」
去っていく彼女に私は質問を投げつけた。
「ああ、気になっていたのだが…」
「はい?」
私の声に反応する彼女。
「君の名前は?」
「ふふ…レイヴンと申します。ここの店のオーナーを勤めさせていただいております。」
「ほう…では、あの銀髪のハニュエールは?」
「銀髪のハニュ……ああ、それは多分姉様ですわね」
「姉様?」
「ええ。私は親しみをこめてそう呼んでいますの。ここの店のママをやっているんですよ」
「へぇ…どうりで他の人間と雰囲気が違ったわけだ…あなたも含めてね」
「ふふ…ありがとうございます。ちなみにママの名前は”カムナ=アーク”っていうんですよ」
「ほう…覚えておくよ。ありがとう」
「はい、ではごゆっくり」

私はビールを手にしてから再びユナの所へと戻る。
「ただいま」
「あ!おかえり!あのねあのね!ゼフィルってとってもいい人なんだよ!」
「ほう…何を話していたのかな?」
「へへ〜秘密」
「ほう…」
ユナの楽しそうな顔をみて一安心する。
「それで…ゼフィルもやっぱりハンターなんだろう?」
「ん?ああ、そうだけど」
「じゃあ、こいつの仲間になってやってくれないか?」
「ああ、構わないよ。はい、ギルカ」
ゼフィルがユナにギルカを手渡す。
「ありがとっ!」
「いつでも呼んでくれて構わないからね」
「あ〜い!」
「じゃ、君にも」
そういうとゼフィルは私にギルカを差し出す。
「?私は別に必要ない。孤独には慣れている」
「まぁ、そういうなって。何かの縁だから、これも」
「…わかった。ありがとう。じゃあ、私のカードも渡しておこう」
「サンキュ」
ギルドカードをコントロールパネルにしまうついでに時間をみてみる。
「おや…もうこんな時間か…。ユナ、今日はもう遅い。宿屋にいって休むとしよう」
「えーーーーーーーーー」
「だだこねるんじゃない…体が大事だ」
「うん…」
説得しているさながらユナの視点はゼフィルを見ていた。名残惜しいのだろう。それを察したようにゼフィルがこういいだす。
「あのさ、明日はラグオルに降りるのかい?」
「私はそのつもりだが…?ユナはどうする?」
「うーん…あたしももうちょっと修行したいし、降りようかな」
「じゃあさ、明日3人で潜ろうよ。な?」
「いいの?営業時間大丈夫なの?」
「ああ、これも仕事の一つだし、お友達だもんな」
「ふぇ…」
「だ…そうだ。よかったな、ユナ」
「うん!」
そうして私達はゼフィルに見送られながら店をあとにした。
明日の約束を胸に……………