PSOみんなの広場





第3章 成功作品

翌日、ユナと待ち合わせ早速メールでゼフィルを呼ぶことにする。
「あ、返事かえってきた」
「なんだって?」
「今くるってさ。あはは、すっごいうれしい」
昨日から顔がほころびっぱなしのユナ。昨日まではあんなに悲しそうな目をしていたのに…
私も不思議とそれにつれられて気持ちが浮く。

「おっはぁ〜」
ゼフィルがやってきた。
「おっはよう!」
「おはよう」
「待たせちゃったかな?」
「ううん!全然待ってないよ。速攻だった」
「あはは、ならいいんだけど」
「じゃ…今日はどこに行こうか」
私がそんな問いかけをしている途中だった。
「あら…ユナ、偶然ね」
目の前には記憶にある人物が通りかかった。
………リナだ。
「あ…おはよう…」
「うん、おはよう。ユナ、昨日はごめんね…本当手が離せない状態になっちゃって…」
申し訳なさそうに頭を下げるリナ。
「う、ううん!気にしてないよ。リナってもてるし、しょうがないよぉ」
「そんなことないってば…。おはよう、エンデルク。昨日はごめんなさい」
「ああ、おはよう。気にしてないから謝ることはない」
「エンデルクとは初対面だったし…本当に申し訳ない事しちゃって…ごめんなさい。もし嫌われたら都思うと…私夜も眠れなかった…」
「だからいいといっている。気にするな。」
「ええ…ありがとう、安心したわ。ところで…そちらの方は?」
リナの視点がゼフィルを捕らえる。
「あ、俺はゼフィル。ユナの友達さ」
「うん。友達友達♪」
「そう…よかったね。友達欲しいっていってたんもんね。でも私も友達だよ?」
「…うん!わかってるって」
…一瞬ユナの表情に陰りができたと思ったのはきのせいか?…まあいい…
「じゃあ、部屋作るわね。3人ともついてきて。」
一同頷くとリナがロビーカウンターに登録をしている姿を見守る。
「あ…飛んだ。じゃ、ゼフィル先にいっていいよ」
「え?こういうのは普通レディーファーストだろ?」
「ううん、あたし最後がいい」
「ふーん…まぁいいや。じゃ、いってくるね」
ゼフィルもカウンターに登録するとすっと飛んでいった。
「じゃあ、私達もいくとしようか…」
そういいかけるとユナが私をくいっと引っ張る。
「…?どうした?」
「うん…あのね…ちょっと気になる事が…」
「…?」
「リナって…本当に偶然にここにきたのかな…ここのシップって私達昨日始めてきたじゃない」
「…確かにそうだが…謝りにきたんだろ?申し訳なさそうだったからさ」
「うん…そうだね…」
「じゃ、私は先にいくよ?いいかい?」
「あ、うん。待っててね」
「了解」
私はロビーカウンターに行くとすぐに2人が待っている部屋を確認してチェックを済ませて降りる。

「やあ、待ったよ。長かったけど…どうしたの?」
ゼフィルが心配そうに聞いてくる。
「いや、ちょっと話しをしていただけだ」
「そっかぁ…それにしてもリナさんって綺麗だよなぁ…」
「そう?ありがとう」
さらりと自分の髪の毛をなでる。
「今日はどの辺にいくんだい?」
「そうだな…昨日坑道で散々な目にあってるから…今日は洞窟にでもするか」
「あ………ごめんなさい」
リナがすまなそうにうつむく。
「あ、いや、そういった意味でいったんじゃないんだ。気に触れたのならばすまん」
「ええ…」
私はまだ下を俯いているリナの頭にそっと手を乗せなでた。
「優しいのね…エンデルクって…」
「…初めていわれたな、そんなこと」
「そう?」
「この黒い瞳は表情を表にださない。だから…不気味がる人間の方が多いからな」
「そんな事ないと思うわ。とっても…素敵だと思う」
「…ありがとう」
「あの〜」
ゼフィルが突然間にはいってくる。
「ああ、失敬。どうした?」
「いや、ユナ遅いな…と思って」
「ふむ…そういえばそうだな…どうしたのだろうか…?」
「気になるな…ちょっとメールだしてみるよ」
「ああ、そうしてくれ」
ゼフィルがコントロールパネルをふところからとりだす。
「あ、私買い物してくるわね」
「ああ、気をつけてな」
リナが元気よくショップへと向かっていった。
「…で、どうだ?ゼフィル」
「…それが…」
ゼフィルが不安に刈られた表情でパネルを見ている。
「どうした?」
「いや…部屋に入ることができないって…」
「…は?どういうことだ」
「なんだ、知らないのか?同じラグオルでも経験つんでないと部屋に入れないところがあるんだよ」
「ほう…と、すると…」
「ああ、察しの通り多分ユナは俺らよりレベルがかなり低いんだろうな」
「…なんてこった…」
「どうする?」
「リナは買い物いってしまったからな…ゼフィル、すぐにユナのところへいってくれないか?」
「おっけ、わかったよ。」
そういうとゼフィルは駆け足でロビーへと向かう。
「リナは…この事知らないのか?」
私は一瞬疑心暗鬼になった。
しばらくするとリナが帰って来た。
「あれ?ゼフィルは?」
「…ユナのところにいったよ…」
「へ?なんで?」
「…その様子だと知らなかったようだな…あのな、ユナは私達よりも経験が足りなくてここに入って来れなかったんだ」
「嘘…そんな…知らなかったのに…い、急いでメール送るね」
「ああ、そうしてくれ」
リナがコントロールパネルをいじる。

……本当に知らなかったのか?
私のように孤独をいつも共にしてきた人間ならともかく…だ。
話しによるといつもリナは誰かと一緒にいるということになる…本当に?

「終わった…急いで部屋を変えよう」
「ああ、そうしよう」
私がロビーに向かって歩き出すとリナが突然口を開く。
「あの…エンデルク」
「…?何だ」
「私…あの…その…」
「?どうした?君らしくもない」
「うん…その」
リナは下を向いたまま俯いている。少し顔が赤いような気がするのは気のせいだろうか…?
「なんだ、早くしろ。ユナ達が待っている」
「うん…その…エンデルクってさ、彼女っているの?」
「………………は?」
唐突な質問に思わず呆気にとられた私。
「だから…付き合ってる人とかっているの?」
「…いや?私は孤独という文字がお似合いのようでね」
「そう…よかった…」

?よかった…?何がだ?リナのいわんとしていることがよく理解できない。

「あの…エンデルク、私と付き合って欲しいの…」
「……………………………………な…」
思わず言葉をなくしてしまった。こんなことになったのは産まれて初めてだった。
しかもこんな状況で…どう返せばいいのだろうか…
「駄目かな…」
涙がちの瞳でこちらを見上げるリナ。動揺する私。
「いや…駄目とかそういうのではなく…その、私はこういう事にあまり慣れていないというか…その」
「エンデルクの事一目ボレしちゃったの…昨日からずっとその事が胸につかえて…」
「……………………いや、なんといったらいいのか…」
頭の中がこんがらがってきた。
早くユナの所に戻らねばならんのだが…こんな話しをされては…
「…あ、ちょっとごめんね」
リナがパネルでメールを打っている。これで少し考える時間ができた。

えっと…付き合えって…仲間?友達?…いや、違うな…恋人ってことか?
は…?この私がか?待ってくれ…頭が追いつかない…
「あ、ごめんね。終わったから」
「あ、ああ…」
答えが自然にしどろもどろになる。
「あの…付き合えって…恋人ってことか?」
「そうだけど…他に何があるの?」
「いや……あまりにも唐突すぎて…その…わ、私じゃなくても君は色々な人にもてるだろ。そっちに…」
「私はもうエンデルクしか見えない…」
「う……………………………」

こ、困った…どうしよう…。
こんな事している間にもユナ達は不安がって待っている…そうに違いない。
が、しかし…こんな私を思ってくれているリナの気持ちを無碍にするのも…どうかと…

「こ、この話は後にしないか?少し考えさせてくれ…。それにユナ達が…」
「…うん、そうだね。わかった」
私達はそれから一言も口をきくことなくロビーへと向かうのだった。

再びロビーに上がってきた私達。そこには泣いているユナとそれをなぐざめているゼフィルがいた。
「おい、ユナどうした?」
「ひっくひっく……」
「…ゼフィル、何が起きたんだ?」
私の質問を蹴散らすようにゼフィルが私に怒鳴りつける。
「何がじゃねぇよ!なんで早くあがってこなかったんだよ!!仲間だろ?!」
「そ、それは………すまん。すまない、ユナ。許してくれ」
「ひっくひっく…」
尚もまだ泣き続けているユナ。さっきまではあんなに笑っていたのに…。
「あ、あのさぁ…ゼフィル、エンデルクを責めないで。私の買い物が長引いちゃってそれで…」
「………………………」
私のことをまだ疑っている様子のゼフィル。
「ユナ、大丈夫?」
リナがユナに近づく。
「ひっく…」
「一体どうしたんだ…?遅れただけ…でこんなに泣くものか…?」
私がひそひそとゼフィルに耳打ちする。
「…それが理由をいわねぇんだ…メールみた瞬間泣き出して…」
「メール…?」

いくつものパズルが頭の中で交差する。でも上手くまとまらない…。

「ユナ、今度はユナが部屋を作ろう。それならみんなはいることができるだろ?」
私がフォローのつもりで言う。しばらく泣いた後にユナはようやっと頷き一同再び下へと降りるのだった。

「さぁて、今度は4人仲良く入れたな。じゃあ洞窟にでもいこうか!!」
ゼフィルが雰囲気を変えようとめいいっぱい明るく言う。
「うん!いこう!」
リナもそれに便乗する。
「……………………」
先ほどから何も言わないユナ…。
「大丈夫か?体調が優れないのならば明日にしようか?」
私がユナに尋ねる。
「…ううん、ちょっと確かめたいことがあるから…」
「…?」
ユナはそれだけいうと危険地域へむかって歩き出した。
「お、おい、ユナ。洞窟だぞー!!」
「え……洞窟は嫌…」
リナが突然言い出した。
「あそこ暑いし長いし…嫌だわ…」
「う…うーん…」
流石のゼフィルも答えに困る。
「こ、坑道にしましょ。あそこならレベルの低いフォニュエールでも怪我しにくいし」
言ってることはもっともだが…言葉に刺があるような気がするのは私だけだろうか?
「ユナ、どうする?」
「……坑道でいいよ…」
「OK、じゃあいくとしようか」
私はユナの手を無理矢理引っ張ってゲートへと向かう。
リナの突き刺さる視線に気付かずに…

一同坑道へ到着…昨日みたいなことにならないといいが…
「ではでは、出発ー!!」
ゼフィルが元気良くリードする。すると…
「ねーゼフィル!私にシフタとデバンドお願い♪」
といいながらリナがゼフィルに抱きつく。
「……………………!!」
それに過剰に反応するユナ。私も少し不思議な感覚がした。
「う、うん、わかった」
少し驚いた素振りをみせたゼフィルだったがすぐに皆にシフタとデバンドをかける。
「ありがと〜」
「じゃ、先に進もうか」
先ほどから足のおぼつかないユナを引っ張って私は歩く。

途中敵を蹴散らしながら順調に進んでいく一同。
と、その途中にスイッチがあった。
「あら〜、これ向こうに3人いかないと駄目だね〜」
「うむ…誰かここに残るってことか…。じゃあ私が残ろう」
「えーーーーー嫌。エンデルクと私は一緒にいたいもん」
リナが不服そうに呟く。困ったな…
そう思ってる矢先、沈黙していたユナが口を開いた。
「あたし…あたしが残る…足手まといになるから…」
「ユナ……………」
黙りこくってしまう一同。リナがとっさに言う。
「無理しなくていいんだよ?あんな目にあったばかりなんだから…」
「私も同感だ。ユナ、一緒にいけ。私がここにいる」
ユナはゆっくりと喋る。
「いい…あたしがここにいる…」
「…わかった。じゃあスイッチ入ったらメールだすから」
リナがぽんとユナの肩を叩いた。
「……………………うん」
「じゃ、待っててね。できるだけ急ぐから」
3人で奥の部屋に進む。
流石にレベルが高い人間同士なのでさくさくと進む。
「あ…見て」
途中にワープがある。
「またか…昨日みたいなことはもうないようにしよう」
「うん、そうだね」
「?」
ゼフィルだけはわけがわからないという顔をしていたが私達は注意深くワープに飛びこんだ。
そこからしばらく進んでいくとやっとスイッチがみつかった。
「あった!これじゃない?」
「多分そうだと思う。踏んでみよう」
「ああ」

ガチャン!!

「鍵が開いたみたいだね」
「おっけい、じゃあユナにメール送るね」
「あ…でもさ、途中随分道をくねくね曲がってきたしワープにも入っちゃったし…大丈夫かな」
「大丈夫よ。一度倒したらその部屋は何もでてこないし、安全だって。道は教えるから」
「うん…それなら平気かな?」
ゼフィルがいぶかしげな顔をしている。
私は心の奥でなにかが騒いでいた。このままでいいのだろうかと…
リナが一生懸命メールを打つ姿を眺めている私とゼフィル。
無事にここまできてくれ…?待て、迎えにいけばいいんじゃないか?
なんで早く気付かなかったんだ!!
「おい、心配だから私が様子をみにいってくる」
「行っちゃ駄目!!」
「何故?!危険だ、もしもの時があるだろう!!」
「だから、今一生懸命やってるっていってるじゃない!!」
リナが怒鳴る。それに私も大人しくさがってしまった。
「じゃあ、俺がいってくるよ。不服ないよな?」
ゼフィルは何かを察したように言う。
「…………うん、わかった」

……?どういうことだ?
私が駄目で何故ゼフィルが?
理解できないという顔をしている間にもゼフィルは全速力で今来た道を走り始めた。
私はどうしても納得がいかなかったのでリナに尋ねる。
「おい、何故私が駄目でゼフィルならいいんだ?理解できないぞ」
「……あのさ、エンデルク二言目にはユナ、ユナっていうけど…ユナの事好きなの?」
「は……?なんでそういう言葉がでるかな。仲間だろうが、当然だ」
「でも、私の心配はしてくれないんだね」
「いや…心配していたからさっき君の帰りを待っていたんじゃないか…」
「ふぅん…まぁ、もういいけどね」
「……もういい?どういうこと…」
そこまで言いかけた時だった。

「きゃぁああああああああああああああああああああああああ!!」

ものすごい絶叫が坑道中に飛び交った。
「何事だ?!」
今の悲鳴は…ユナだ!!
「何故だ?!安全な道を教えたんだろう?!」
「そのはずだけど…何故?道まちがえたのかしら…」
「間違えたって…っくそ…こんな事している場合じゃない!!」
私はとっさにカノンを取り出すと今来た道に向かって走ろうとした。
「待ってよ!!」
リナが叫ぶ。
「なんだ?!今一大事なんだぞ?!」
いつにもなく怒鳴る。
「私一人残しても平気なんだ…ゼフィルがいったから大丈夫だよ…」
「……………………」
こんな時に躊躇する自分が恨めしい…。ゼフィル…そっちはどうなっているんだ…。
と、思った瞬間。
「あ、そうだ…」
私は懐からパネルを取りだしゼフィルにメールを送った。
「………………………頼む、帰ってきてくれ…」
願うばかりの自分…。こんなに情けない気分になったのはいつだっただろうか…。
しかし…待てど暮らせど返事は返ってこなかった…。

どれだけの時間がたっただろうか…
リナと一言も交わすことなく待ち続けていた…。
そして…

「…………………………?!」

私は一瞬自分の目を疑った。
帰って来たのはぐったりと虫の息をしたユナを抱えたゼフィルだった…。

「ゆ、ユナ……」
「………………」
ゼフィルは苦虫でも潰したかのような顔をしていた。
「す、すぐにレスタを…いや、リバーサだ…」
私が唱えようとするとゼフィルがそれを止めた。
「な、何故…」
「…レスタもリバーサも唱えたが駄目だった…この状態じゃ…多分メディカルセンターも…」
「そ…そんな…」
ゆっくりとユナを床におろす。顔には泣いた痕跡と体には数え切れない痣と傷が残っていた。
「痛かっただろうに…ユナ…やはり…私がいけば…くそ…」
傷をみればもう一目瞭然の致命傷だった…
「あ…」
ユナが苦しそうに瞳を開けている…
「ユナ!無理するな!無駄でもいい!今からメディカルセンターにいこう!!」
そう、最後まで諦めるものか…
するとユナは私の腕を掴み首をゆっくりと横に振る。
「どうして…」
「いいんだよ…エンデルク…あたし…失敗作なんだから…」
「え…」
「その続きは私が話してあげるよ」
リナが後ろから言葉を続けた。
「私達ニューマンはいわゆる人口生命体。つまり、古代から科学が発展してきて新たな人類として生み出された。
けど、実験だもの、成功もあれば失敗もある。ユナはね、失敗作なのよ。」
「な…………なんだと…」
「私は優秀作品として研究者にも周囲にも認められているわ。ユナはいくら修行しても伸びない失敗作といったのよ」
「かっ…仮にも友達だといっていただろう?!」
「ああ…あれ?嘘に決まっているじゃない。だって失敗作と一緒にいたほうがいい男が私を見るもの」
リナのあまりにも酷い暴言にゼフィルは必至に怒りを堪えている様だった。
「ゼフィル…友達になってくれて…ありがとね…」
ユナがかすかな笑顔を浮かべる。
「友達だよ!これからだって!ずっと!!」
「…うん、ありがと…」
ゼフィルがユナの手をずっと握り締めていた。
「ゼフィル、そうしてやっていてくれ」

そういうと私はユナに近づきポケットをあさる。
私はさっきから引っかかっていたものがある…。何故こうなってしまったのかだ。
規定違反ではあるが私はユナのコントロールパネルを取り出した。

「あ…………」
ユナがやめてという顔をしたが、今はこっちが先だ。私は真実が知りたい。
「やめて!!」
リナもそれに反応する。パネルをONにするとさっきまでのメールの記録が残されていた。

”あんた、本気でエンデルクが自分を仲間だとおもってくれてると思ってるの?馬鹿みたい。
あんたみたいな失敗作よりも私の方がいいからこっちに残ってるのに、気付かないの?”

私は続けて他のメールにも目を通した。
すると、先ほどの道順がかかれていた。そう、私達の来た道と逆の方向へ誘う道が。

「き……貴様………………………。」
私は今までに覚えのない感情が芽生えた。
「全部仕組んだんだな…全部…」
私は声にもならないような小さな声でリナを見た。リナががくがくと震えているのがわかる。
「だって…だって…ユナとエンデルクが仲良さそうにずっと一緒にいるから…」
私は黙ってリナに近づく。尚もリナの言い訳は続いた。
「それに、あなたみたいな美男子をそんな失敗作に取られるのが嫌だったのよ!!」
「ほう………………まだユナを失敗作というか…」
私は自分でもブレーキがきかない間にカノンを取り出した。
「な…何をする気?!」
「知ってのとおりだ。お前が失敗作を排除しようとしたように私も失敗作を排除する。」
「そ…そんなことしたら殺人よ!!ゼフィル!!助けて!!」
ゼフィルはユナを見つめたまま動こうともしなかった。
「わ、私は成功作品よ!!エンデルク!!よくみてよ!!」
「……………………………」

殺人か…漆黒のエンデルクが…今…
蜃気楼の絆を断ち切ってくれる…

「ユナの苦しみ…貴様にも味合わせてやるよ…たっぷりとな…」
私が大ぶりに剣を振る。
その様子をゼフィルはただ黙って見届けていた。いや、動けなかったのかもしれない。

私の装備しているマグが過剰に反応し、シフタデバンドが勝手にかかる。

シューイィイイイイン…
ビュン!!ビュン!!

「きゃぁああああああああああああああああああ!!!」

リナがとっさにそれを回避する。
「何故避ける…死ぬのが怖いか…あ?もっとユナは恐怖したんだよ!!」
俺の中でなにかが煮えたぎる…今まで眠っていた何かが確実に。
流石自称成功作品だけあってスピードも速い。
「ほう…まだ避けるか。殺しがいがあるねぇ…ふふふふふ」
不適な笑みを浮かべると俺はリナに斬りかかる。

シュイン!!シュイン!!
「きゃぁああああああああ!!やめてぇ!!」
「止まらないよ…貴様の犯した罪…その体で償え…」

私はカノンでは当たらないと確信して、エリュシオンを出した。
「そ…それは…」
「覚悟しろ…そして闇に葬り去ってやる…」

エリュシオンから炎が舞い上がる!!

ゴォオオオオオオオオオオ!!
「きゃぁあああああああああああ!!」
恐怖に慄き泣き叫ぶリアを尚も私の剣は止まらない。

「貴様はな、生き物として一番やってはならんことを、いや…私の目の前でやった事を…後悔するがいい…」

ガッン!!
とうとう壁に追い詰められたリナ。
「もう…許して…お願い…本当に…エンデルクが好きなの…やめて…」
「…違うだろ?ユナと私が一緒にいるのが気に入らなかっただけだろう?」
「ちが…違う…」
「忘れたか…俺は漆黒のエンデルク…心も体も闇に染まってやるよ。貴様の死と共にね…」
「やめてぇええええええええええええええええええ!!!!」

「そして………………本当の失敗作は貴様だ…リナ。」

「いやぁあああああああああああああああああ!!!!!!」
リナの悲鳴が涙混じりの絶叫へと変わる。

ザシュゥウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!!!!

「あ…あ……」
心臓を一突き…声も出ない激痛に違いない。
「ゴブッ…」
リナが突き刺さったエリュシオンもたれかかり吐血する。苦しそうにリナがこう言い残す
「あんたは…漆黒よ…永遠に…闇から出ることのできない…罪人よ…」
吐き捨てるとリナはガクリと事切れた…

ガシャン!!

エリュシオンを壁から退き抜くと私はゆっくりとゼフィル達の方へと視線を移す。
「………………………」
「ゼフィル、ユナのこと…任せた…」
俺は懐からメセタの入った袋を出しゼフィルに放り投げた。
「これで…墓を立ててやってくれ…墓ができたらメールくれ…ユナに会いに行く…」
私はそのままリューカを唱えた。
「待てよ!!!」
ゼフィルが叫ぶ。
「なんだ?俺を訴えるのか?…それもいいだろう…どうせいくあてもない…」
「俺…か。一人称まで変わっちまいやがって…一緒にいこうぜ」
「……………………見ただろう、確かに。私は人殺しだ」
「…………………」
しばらくの無言の後にゼフィルがゆっくりと呟く。
「俺が…お前の立場だったら…同じ事していたと思う…」
「……………」
ゼフィルが俺の方に手を乗せる。
「………………俺、な〜んにもみてないから。じゃ、ユナの寝所作りにいこうよ。安らかに眠れる場所がいいな」
「…………ゼフィル…」
「さぁ、いこう」
ゼフィルが笑顔で俺を招く。リューカの調べに乗せられて俺とゼフィルはシップに戻るのだった…。

商店街からかなり離れた平原…そこへユナの墓を立てることに決めた。
事を終えて祈る二人。

安らかに眠ってくれ…ユナ…
そして、お前は私が今まで見てきたニューマンの中でも成功作だったよ…

ゼフィルが私を突っつく。
「なんだ?」
「お前、これからどうすんの?」
「…さぁな…私が徒党を組むとロクなことがないらしいのでな…また一人旅にでるさ」
私はそう吐き捨てると再び賑やかな繁華街へと身を隠すのだった…

ユナの事を思い出す…笑顔、涙、そして…友に裏切られてもなにも言おうとしなかった
その蜃気楼の絆を信じた純粋な心を…

「ちょいと…」
私が考え事をしていると誰かが呼ぶ声がした。見上げると…
「おや…あなたは…確かレイヴン殿…」
「ええ、久しぶりね」
「何か…私に?」
「いえね、ゼフィルからあなたの事をきいてスカウトしに来たのよ」
「は…………?なんですって?私は…」
私が事の真実を述べようとするとレイブンはそれを遮る。
「ゼフィルは何もみていないのよ。さぁ、姉様があなたに会いたがっているわ。一緒に来て」
「しかし………私は…」

レイヴンは遠く広がる空を見上げながらこう私を諭した。
「この空の下でまた多くの人達が困っているわ。悲劇をもう2度と繰り返さない…そうは思いませんか?」
「…………………」

偽りの絆を真実に変える…それもまたよかろう…

「心も体も漆黒ですがそんな私で宜しければお手伝いさせていただきましょうか…」

こうして私はレイブンに連れられてノーチェのスタッフとして働く事になった。
2度と悲劇を繰り返さない事を胸に誓って…


公式設定の中に、プレーヤー間から生まれたお馴染みの単語が上手に取り入れられ、深い世界観がつくりだされています。
リアリティーをもって読めた人も多い事でしょう。
意外と本当にノーチェに行けばエンデルク=ヤードさんに会えたりして…。(??)


『ロビー便り』では、みなさんからの投稿小説を募集しています。素敵な作品は、こちらのコーナーでご紹介致します。詳しくは『投稿する』ページをご覧下さい。 また掲載作品への感想もお待ちしています。同コーナーまで どしどしお
便りください!おまちしてます。