Hitmakerのスタッフによるリレーコラムです


えー不思議な流れで、なんだか考えていたより大分早く回ってきました。
もっと後の方だとほくそえんでいたのに。
元ロッソから来ましたデザイナー久保田です。
車話に華が咲く今日この頃、私が言えることはRoverのMINI Cooperラブ、F1ならメルセデスってなことくらいです。
そもそも車持ってないし。実家の車は犬猫も乗る渋緑色サンバです。クレスタです。軽トラです。
ええ、楽しいじゃないですか。ライトドライバー万歳!

ライト感覚で本日のお題へ参りましょう。
「渋いね、それ」。
ふとした拍子にそんな言葉を言われると嬉しくなるのは、私がオヤジ臭いという事でしょうか。
それでもやっぱり居酒屋に行けばもずくと梅キュウは必須だし、渋い漢の代表にハンフリー・ボガートだし、歌舞伎や落語も観たくなるし。猫と日向ぼっこで茶すするし。
そんなわけで今回は、渋好みから考える偏りのあるあれこれを脈絡なく綴ります。

■人の渋味
オヤジズムもダンディズムもニヒリズムも渋さです。
これはその人の仕草や行動からほろ苦い人生の重みを垣間見るという、内面からにじみでるタイプの渋味です。
映画でいうならハードボイルド・西部劇。
王道でしょう。王道が大事です。これがひねったり狙いだすともう胡散臭い。
自然体かつたたずむだけで渋味が出てくる、これが本来の渋味です。
スパイものも渋味にやや近いですが、昔はともかく最近の007シリーズで一目瞭然男の渋味というよりは色気重視のものが多いので、あえて外しましょう。
渋さを語るにはアクション寄りのスパイ映画では少々動きが多すぎるわけです。
俳優ではハンフリー・ボガート、ショーン・コネリー、リチャード・ハリス、アル・パチーノ、クリント・イーストウッドがまずは王道に属するかと。

ジョニー・デップは将来の渋味俳優候補です。
日本人俳優は多すぎるので割愛して逃げます。高倉健、石原ファミリーに多いです。
またこの手の映画は、ビジュアルも重要な要素でして、男性俳優のビジュアルに渋味を加味するのは、そのシワだったりします。
特に外国の方によく見る、目頭から頬を斜めに通るライン、これが一役かっています。そんなシワでちょっと猫背、上目遣いでフッと口の片端だけ上げたニヒルスマイルなんて目撃したら、タバコを目を細めてさも美味そ〜に吸われたら、もうなんだかここがどこだかわからなくなるくらいの時代錯誤な渋味です。
そんでもって人生観がわりとクールなのが渋味の王道です。

■ちょっと気の利いた渋味
目の付け所がちょっと嬉しい、ささやかな演出、そんな渋味。
コーヒーなら少量のブランデーで香りを演出。
日本の景勝地カレンダーでいうところの1月でたとえれば普通の富士山<赤富士<金閣寺雪化粧。
金閣寺?と思うけどこれが意外に多いモチーフでして、きらびやかな金がめでたいものの表現に使われ、かつ雪を静の演出として用いるわけです。静寂の華とも申しましょうか、こだわりともちょっと違う、ほのかな渋味です。

■味の渋味
抹茶に代表される、じわーーっとくる苦味、こちらまで渋顔です。これがまたいい。
渋味の空間を演出するための料理の味付けも渋味と呼べるでしょう。
高級料理から屋台物まで、日本料理はこれが実にうまい。
もてなされれば心身ともにちょっとひきしまった感じがする。
そういう意味で梅(梅キュウ)や酢(もずく)も好きな渋味の内なんですわ。

■日本の渋味
「古風・アナログ・レトロ」の意味でも渋味はよく使われますが、世界各地特有の歴史を含んでるからか、かなり幅広い。
日本では王道「わびさび」の他に、江戸にみられる「粋」には動きがかなりあったり洒落ッ気や色気があったりするんですが、なんか渋味も感じられる。
きせるくわえて着流しのひじ枕、かたわらにたばこ盆、こんな色っぺー時代物の絵も伝統的な祭事の絵も妙に渋く感じるのは不思議です。
それと色味でしょうかね。染めの色といいますか、自然素材の色、渋色、その組合せ方。
時代を感じるあせた色味なんかもまとめて渋いとか言っちゃったりして。
日本のレトロといいますか、お徳用マッチに見られる、明治の面影を残したラベルもいいかんじですね。よく使ってます。


まあつらつらと綴って参りましたが、「渋いねぇ」と言いたくなるのは、ふとしたものが持つ心地よい苦味にズキュンとくる、あるいは和む、そんな瞬間なのでしょう。単純に「ちょっと変わってるね」の類似語ともいいます。
格好いいに少しコショウを足したような、そんな渋味を身近に見つけられるようになったら、あなたももう立派な渋好みです。

さて「好み」に関してはこの方はもう最強です。
どのくらい最強か、『肉王』という愛称からも伺えます。
次回はHM肉部隊のドン、HMのゴッドアーム 黒澤雅仁氏にバトンをお渡しして、「脂と肉の黄金律」について焼き具合ウェルダンで熱く語っていただきましょう。
私的には肉は牛タン分厚め中身激レア、シンプル塩レモンが渋い。いや単に好き。


おあとがよろしいようで。



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■久保田優子(デザイナー)
入社3年目のデザイナー、久保田さんでございます。子供のころから書道をやっていて、高圓宮賞(知らないけどなんかスゴそう)とか新聞社の賞とかいっぱい受賞しているらしい。でも、なんで書道からデザインに? と思ったら「書道の文字構成はある種グラフィックデザインに近い」とのこと。うーん、そうなのか? そうかもな。
普段はカワイイ&オシャレなものと、ちょっぴり変ったものを好むフツー(やや不思議ちゃんの疑いあり)の女の子ちゃんです、ハイ。

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