―― 前作の『ダービーオーナーズクラブ』(以下 DOC1)が出たときに続編を作るというのは計画にあったんですか?
小口 無い無い、全然無い。
芹澤 2をつくろうってなったのは去年の年末かな。それから企画を練って、実際に動き出したのが今年の2月くらい。
―― そもそも、なんで『2』を作ろうと思ったんすか?
小口 また根本的な質問だな(笑)。開発もお客さんもそうだと思うんだけど、常に新しい楽しさの追求ですよ。
まあ、ひとことで言えば“飽きた”ってことですね(笑)。
―― ああ、非常にわかりやすい(笑)。まあ『DOC』が新しいアーケードの形を提案したわけじゃないですか?
その結果、ユーザーさんだけじゃなくてセガからの期待っていう部分も少なからずあるわけですよね。そういうのがあったから続編を作ることになった、ということは?
小口 そりゃあお前、ヒットメーカーがセガ支えてるんだもん、な(一同に同意を求める)。
一同 ・・・うん。多分(笑)。
津田 あとマイナーチェンジがけっこう重なってきて、今回ここで前作では解決できなかった大きな変更を入れて新しく出したいっていうのがあったよね。
Hiro 車だってそうじゃん。マイナーチェンジしていって、何年かたつと新しいの出すでしょ?。それと一緒。
―― なるほど。変えたかったけど変えられなかった部分というのはどういう所なんですかね?
小口 僕が一番変えたかったのはねぇ、単純に馬の肉体を強くしていくだけの遊びから、もう少し生き物としての遊びにしたかったっていうとこかな。
―― でも、今まではそれを楽しんでもらってた訳ですけども。
小口 もちろん、その要素も入ったうえでね。
やっぱり馬は生き物だから、純粋に肉体的な部分が強ければ勝つっていうものじゃなくて、馬にも感情があって、体調があって、そういったものを入れていきたかったのね。あと馬そのものを、より固有化を表現したかった。同じ馬でも、その馬そのものが“かわいいヤツなんだけど弱い”とか“憎らしいヤツだけど凄く強い”というような、本来の生き物的な面白さを実現したいっていうのが、今回の趣旨なんだけどね。
―― それはどういう形で反映されているんですかね?
小口 固有の性格と、固有の疲れだとかやる気だとか、そういったものがいろいろなパラメーターとして複合的にプログラムされてる。もちろん、それを表すモーションも多数用意してる。まあ、その辺のアルゴリズムはミスター芹澤が語ってくれると思うんですけど(笑)。

―― はい、じゃ芹さん。どういうことやってんの(笑)?
芹澤 ファジィ推論を使って、馬固有の性格に対してのその時々の感情を表現してます。プレイヤーが馬に対して行った行動が、現在の馬の感情に対してどのように左右されたか、当然、同じ答えばかり行っていても、正解だとは限らないと。馬の性格、それまでに行った行動、その時の感情を考えて正解を導き出すっていう。
小口 もっと簡単にいうと、性格のいろいろな因子ってあるじゃない? 正直者とか、荒々しい性格だとか。そういった因子を一個や二個じゃなくて、何十個も持っていて、さらにそれらが数値化されたパラメーターになって複雑に絡んでると。
――ああ、10年前くらいに掃除機とか炊飯器についてハヤったやつね。とりあえず凄いってのはなんとなくわかった(笑)。じゃ、前作にもあった馬の性格の変更点は?
津田 『DOC1』では数えるほどの性格しかなかったのね。で、『2』を作る際に性格の因子の量を多くすることで、すべての馬が違った性格を持って、個性がある動きができるようにしました!
――それ、ちょっと凄いぞ!なんで『DOC1』でやんなかったの?
小口 『DOC1』の時にホントはやりたかったの! やりたかったんだけど、正直そこまで結局手が回らなかったの!だから性格だけは残ったんだけど、それがゲーム的に反映されてないレベルでリリースしたっていうのが現状だったんだな、前作は。
津田 今回はデザインチームに随分苦労してもらって、モーション数もめちゃくちゃ増えてるんですよ。
―― 喜怒哀楽モーションってこと?
宮城 そうそう、いろんなモーションをパーツごとに作って、それを組み合わせていろんな表情を出したり。
あと前回にもちょこっとあったんだけど、馬の顔の表情もたくさん変化するんで、前よりずっと馬に対して気持ちの入り方が違ってくるんじゃないですかね。
小口 馬の表情ってすごく難しいんだよ。人間みたいに喜怒哀楽を表現しづらいじゃない?
Hiro もともと表情無いから(笑)。
小口 そうそう、馬ヅラだから。
―― そのまんまだ(笑)。それじゃ、前作あった反省のシーンも変わるんですか?
野田 今回は反省の部分を、さっきも話に出たファジィ推論を用いて、より生き物らしい感情表現をさせていることと、プレイヤーの意志がより伝わる選択肢を設けました。
―― ふーん。前はレースが終わると幾つか選択肢があったじゃないですか、今回は?
野田 うん、今回はレースや調教の反省、馬の性格を理解して気持ちのキャッチボールをするコミュニケーションの他に、馬とふれあうコミュニケーションを用意しました。
津田 馬に対してのコミュニケーションの取り方はリアルに近づけようと努力はしたんですけどね。
―― ああ、感情表現とかの部分で実際に取材に行ってたもんね。
Hiro でも言っていいかわかんないけど、実際厩舎の人に「いまこの馬は嬉しいんですかね?」 って聞いたら「いやぁ、俺にはわかんねぇ」って言ってたぞ。
一同 (爆笑)
―― そんなもんなの?(笑)そこはゲーム内ではどうやってるんですか?
津田 デザイナーには、多少マンガチックな部分を入れて、なるべく解りやすくして欲しいとは言ったよね。
―― 前は馬がいきなり二本足で立って歩いていくシーンとかありましたよね。
野田 今回は馬の骨格上可能なモーションってのをテーマにしたんですよ。僕は個人的に馬が好きなので、ゲームなんだけど馬には2本足で歩いてほしくなかったんです。なんかヤじゃないですか。
津田 うん、だから実際の馬から離れずにどれだけディフォルメして表現できるかと。

―― その表現は大体どれくらいあるんですか?
宮城 うーん、組み合わせ次第なんで、いくらでも。理論上は1万通り以上あるかな。
―― ひゃー1万だ、すげえ。
小口 今回の『2』は、馬よく寝るよ。しょっちゅう寝てる。こっちがいくら愛情をこめてもずーっと寝てる(笑)。起きない。
Hiro それは小口さんが育てた馬が寝てるだけだと思うぞ(笑)。
小口 まあ、馬によるんだけど、今回はそういうシーンがいっぱい入ってんだよ。
野田 小口さんはやる気のない馬にあたったんですよ、きっと。
―― まともなのもいると。当たり前だけど。
小口 そうそう。本編の狙いとしてはね、『DOC1』の時は弱い馬はすぐカードを捨てられちゃったじゃん?
今回は弱い馬でもカワイイから捨てられないんだよねぇ〜、みたいなね、そんな感情を覚えてもらえたらいいなあと思ってさ。まあ、ゲームの目標は強い馬を作ることなんだけど、強い弱い関係なく純粋に自分の固有の馬を育てるレベルでも十分楽しんでもらえたらいちばん嬉しいかな。
―― っていうことは調教できる機会も前よりは増えていると。
小口 いいこと聞くねぇ。
ということで、ちょっといい話は次週に持ち越し。来週のテーマはゲームの流れと変点!DOC2の核心にがぶりより!な予定。
ンじゃまた。
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