PSOみんなの広場





〜覚醒〜

この日の調査は遺跡エリアにて行われる。
D亜生命体の生態調査は今までごく一部でしか実施されておらず、ダークファルスの倒されたことにより調査も本格化したのだ。
遺跡内にはディメニアン・クロー・デスガンナー等のエネミーは現れるが、ダークファルスという主人を失った今では、動きに統率性がなくなっている。
それでも数は思ったより多くいて、軍の調査隊より場数を踏んだハンターズの方が良い働きをしているとクリッパーは護衛の繁多ーズを誉めていた。
特に、ドレインの連れてきた護衛は強かった。ディーナが騒いでいただけのことはある。

「さすがは私の護衛だ!サリアチーフ、あなたの造ったガトー君ももちろん強いのでしょうな!」

ドレインは馬鹿にしたような目でサリアとガトーを見た。

「本当に強い方たちですね。ならその方達に島の調査をしてもらえばいいのでは?」

サリアも反論した。

「ふん、言ったでしょう。感情があってはだめだと。彼らも所詮は人間ですからな。ところで、ガトー君は感情を持っているのですかな?必要ないぞ、そんなもの。調査がしたければ捨てることだ。それにサリアチーフ・・・・」

「博士にからむのはやめてくれないか、ドレイン。」

ガトーもついに言った。ディーナも横で膨れっ面を作っている。

「呼び捨てとはずいぶん偉そうだなガトー君。まったくもって不愉快だ。・・・・隊長殿、こんなチンタラした調査はもううんざりだ。私は自分の護衛を連れて先に進ませてもらう。」

クリッパーは止めようとしたがドレインは言うことを聞かなかった。
強い護衛がいるのだから平気だと、誰も追うこともしなかった。
そのまま調査は進められ、終了の時刻が近づいてきた。
しかし、ドレイン達はまだ戻らない。

「心配だな。探しに行くか。」

「ガトーったら!あんなやつ探しに行くことないよ!」

ディーナはずっと膨れっ面でいたのだ。

「そうも言ってられないわ。クリッパーさん、あたし達は東の方角に向かって探します。」

「大丈夫ですかな?サリアチーフまで行く必要は・・・。」

「あたしはガトーの機能調査もしなくてはいけないので・・・。それにガトーがきっと護ってくれますから。」

「博士、あたしもいるんですけど!」

ディーナの機嫌はまた少し悪くなった。

「分かりました。では別の場所は我々で探してみましょう。お気をつけて。」

こうしていくつかに手分けしてのドレイン探しが始まった。
手間のかかるやつだとディーナは怒り、途中に出てきたエネミーに八つ当たりをしているかのようにも見えた。
しばらく進むと広いフロアに出た。
かなり激しい戦闘があったように、あちこちにエネミーの残骸や体液が散らばっていた。

「なにかあったのかしら・・・。」

「ぎゃあああああああ!!」

ふとフロアの奥からドレインと護衛ハンターズが走ってきた。
しかし、最初2人いた護衛は一人しか見当たらない。
ドレインと護衛の一人はガトー達の前まで走ってきて、目の前で転げた。
2人とも傷だらけだ。

「どうした!もう一人はどこだ?」

「わからない!逃げなきゃやばいぞ!」

2人とも逃げ出そうともがいているが、ディーナに取り押さえられている。

「博士達はそこで待っててくれ!俺が向こうの様子を見てくる!」

「危険だわ!」

「まだもう一人がいるんだろう!助ける!」

そういってガトーは走っていった。奥には長い廊下が伸びており、さっきのフロアより一回り狭いフロアにつながっていた。
フロアの中央には護衛の一人が倒れていた。

「怪我がひどいな・・・・。」

「うう・・・・。」

「大丈夫か?緊急転送機能は生きてるな。スイッチがオフになってるだけか。すぐメディカルセンターに運ばれる、安心しろ。」

「あ、あいつらは・・・・まだい・・・るぞ・・・。」

「あいつら?」

護衛の身体が光に包まれた。
防具に装着された緊急転送装置が作動したようだ。彼はパイオニア2に送られていった。

「あいつらって・・・。まさか、ドレイン達を追っていったのか!」

ガトーは急いで前のフロアに向かった。
長い廊下を全力で走り抜け、フロアにたどり着いたが遅かった。
ディーナともう一人の護衛の姿はなく、傷だらけで横たわるサリアしか見当たらない。

「博士!しっかりしろ!」

「・・・ガトー。」

ガトーはサリアを抱えこんだ。

「ディーナと護衛は、それにドレインはどうした?」

「2人は・・・転送された・・・。ドレ・・・インは・・・・。」

「助けてくれぇ!」

突然ドレインの助けを求める声がした。
フロアの端は崖のようになっているところがあり、そこにドレインが腕一本でぶら下がっていた。

「た、助けてくれぇ。」

ガトーはドレインの腕をつかみ引き上げた。

「大丈夫か。」

「あ、あいつらはまだいるぞ!」

ガトーはドレインにモノメイトを1つ渡し、サリアに近寄った。

「博士、大丈夫か。緊急転送装置は持たされてなかったのか、くそ!」

そう言いながらモノメイトを取り出し、サリアにも飲ませた。

「ガトー・・・・。」

「ん?どうした?」

「逃げて・・・・。私とドレインを連れて行ったら追いつかれる。・・・・・だから逃げなさい。」

「なにから・・・・。」

ガトーは振り返って見て意味がわかった。10数メートル離れた位置にデルセイバーが出現した。
しかもその数は一匹ではない。

「・・・・12匹か。なるほど。」

「ガトー・・・・逃げて。無理よ、無事では済まない。」

サリアは懸命に訴えた。
しかしガトーはすっと立ち上がり、12匹のデルセイバーと向き合った。そして博士に言った。

「博士。」

「なに?」

「3分だったな。試させてもらおう。」

「・・・・だめよ。・・・・逃げて!」

「あなたを護ると言ったはずだ。」

プログラムが作動準備を始めた。
異様な雰囲気に包まれながらガトーの身体が熱くなった。
3分というタイムリミットはスタートを切った(0:00)
デルセイバーの群れが一斉にジャンプしてガトーとの間合いを詰めてきた(0:02)

「跳んだ!助けてぇ!」

ドレインの悲鳴を背にガトーが走り出しジャンプをし、空中で一体のデルセイバーを地面に叩きつけた。(0:05)
勢いよく頭から落下したデルデイバーに続き、ガトーとデルセイバーの群れが着地しガトーはセイバーを構えた。(0:07)
デルセイバーの右手の剣が様々な方向からガトーに襲いかかってきた。(0:11)
ガトーの動きは信じられないほどに速く、全ての剣撃をかわす・よける・受け止める・流す・さばく・返す。(0:18)

「なんだあの動きは・・・・信じられん。」(0:23)

「覚醒したわ・・・・。ガトーの強さはこれから。」(0:29)

ガトーは反撃に出た。(0:31)

正面からの攻撃を受け止めてすぐに斬りつけ、振り返り様に後ろの敵を下から斬り上げ、前後左右、上下斜め、あらゆる方向の敵に有効な攻撃を放ち、自分はまったくの無傷。(0:48)
12匹のうち、すでに3匹が倒され残りのデルセイバー達が焦りを感じたようにさえ見える。(0:51)
攻撃の激しさが増した。(0:54)
今までなんの協力もせずに次から次へと攻撃をしかけていったデルセイバー達がチームプレイを見せ出した。(1:05)

「ほう・・・・賢くなったのか?」(1:10)

3匹のデルセイバーが一斉にガトーに斬りかかってきた。(1:15)
それをさばいていると後方から1匹が攻撃をしかけてきたが、とっさにガトーはマシンガンに持ち替えて、後方の1匹の頭部に銃口を押し付けもう片方の銃口は前方の3匹に向けて同時に引き金を引いた。(1:23)
さらに残りのデルセイバーにもしつこくマシンガンを撃ち込み、再びセイバーに持ち替え次々と斬りかかる。(1:38)
とうとう残りは3匹となり、3匹同時の連続攻撃をセイバー一本、しかも片腕でさばきながらガトーは少し意地悪そうに言った。(1:48)

「あきらめろ。無駄だよ。」(1:55)

そして、一瞬のうちに敵の後ろをとり、一気に斬りかかり3匹のデルセイバーを地に沈めた。(2:01)

「ふー、ちょうど2分ぐらいか・・・。」

ガトーはサリアの方に戻っていった。

「ガトー、すごかったわ。まさかこれほどの力が出るなんて。」

「しかし、時間制限付きにしたのは正解のようだ。身体が異常に熱を持ってる。触らないほうがいい、火傷するぞ。3分以上動けば回路がやられただろうな。」

「ふふ、気をつけなくちゃね。」

「確かにな。・・・・ドレイン、調子はどうかな?」

ドレインは怯えながらも必死に悪態をついた。

「う、うるさい!それよりさっさと助けを呼んで来い!」

「ああそうするよ。しかし、もし俺に感情がなかったら助けも呼ばないし、崖から落ちそうなあなたも見捨てていたことをわすれるな。」

「ふん!・・・・だまれ。」

その後、クリッパー達とも合流し、全員がパイオニア2に帰ることができた。サリアとディーナ、それにドレインの護衛2人はしばらくの入院が必要となり、クリッパーが毎日のように見舞いにやってきていた。
そうして一週間がたった。

「ガトー、島の調査は結局行かなかったの?」

「ああ、博士とディーナが治らなければ調査なんてしてられないからな。しばらく待ってもらっている。」

「そう、じゃあもう少しラボの留守番よろしくね。」

「そういえば今回のことでナターシャチーフが俺を気に入ってくれてな。うちのラボに来ないかとまで言われたよ、はは。」

それを聞いてディーナが叫んだ。

「だめ!行ったらだめだからね!」

「行かないよ。博士もディーナも大事な仲間だから。これからも一緒にいたいんでな。」

ディーナが嬉しそうに笑っている。

「じゃあ俺はそろそろラボに戻る。また明日顔をだすよ。」

「ガトー。」

サリアがぽつりとつぶやいた。

「ありがとう。」

ガトーは病室を後にした。
するとディーナがすぐ後ろにやってきた。

「なんだ、寝てなくていいのか?」

「ガトー。ガトーがナターシャチーフのところに行かなかったのを一番喜んでるのは、本当は博士なんだよ。」

「はは、そうか。」

「へへっ。じゃあ明日ね。」

ディーナはそういって病室に戻った。
あんなに素敵な仲間がいるのだ、絶対に護りつづけていきたい。
ガトーは強い思いを抱きながらメディカルセンターを後にした。

           END


アンドロイドの立場については、エピソード3のストーリーにも通じるデリケートな部分ですね。
仲間を思う気持ちがあるなら、それはもうただの機械ではなく、立派な仲間の一人です。きっと良い関係が築けることでしょう。

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