
コメント
作品の内容は結構自分勝手なPSO世界の解釈をしてしまってますが、どうか許してください^^
今までの作品のなかでは、一番ドラマチック(まとも?)になってると思います。長いですが読んでください。 |
〜序章〜
母なる大地、惑星コーラルの衰えが原因で実行された大規模移民計画。それが「パイオニア計画」だった。
無人探査機の発見した惑星ラグオルに、第一陣として移民船「パイオニア1」と、それに乗船した移民団が無事到着した。
7年後、移民団の招待を受けて「パイオニア2」がラグオルを訪れた。
しかし、「パイオニア2」は不時着する間もなく、惑星表面での大爆発を目撃した。
総督府はハンターズにラグオル地表の調査を依頼し、ハンターズは「パイオニア1」の乗組員を発見することなくラグオル地下深くに存在する邪悪な敵「ダークファルス」に遭遇する。
しかし、多くの犠牲はあったものの、ダークファルスはハンターズの活躍により倒されたのだった・・・・。
〜起動〜
ここはパイオニア2内のとあるラボ。
「博士、こっちは準備できましたよ。」
「そう、それじゃあ始めましょう。」
部屋にはこの二人の声しかしない。しかし部屋の中央には電源の入っていないアンドロイドが横になっていた。
博士と呼ばれる女性がコンピュータを操作すると、アンドロイドの電源が入れられた。
二人は緊張した面持ちで見守る。
アンドロイドの電源が入れられてから5分程たった。いよいよアンドロイドが動き出す時が来た。
青いボディの上半身を起き上がらせ、二人の方を見た。しばらく見つめた後、アンドロイドが第一声を放った。
「あんたたちは・・・誰だ?」
「あれー、わかんないの?おかしいなぁ、スターティングメモリー(アンドロイドが始めて起動した時から持っている記憶)にあたしたちのこと書き込んでおいたのに。」
ピンクの髪をした研究員は少し困った顔で言った。
「きっと“例の”プログラムのせいじゃない?元々なにが起こるかは分からなかったし・・・。これから覚えてもらえればいいわ。」
博士と呼ばれる女性は落ち着いて言った。アンドロイドは2人の会話を聞いた後、なにも言わず2人を見ていた。
研究員は納得した顔で喋り出した。
「それじゃあ自己紹介します!あたしの名前はディーナ。ディーナ=ガイダンスだよ。覚えた?」
アンドロイドはゆっくり頷いた。
「私はサリア=サーチェイス。一応このラボのチーフをしているわ。ラボといっても私とディーナの2人しかいないの、あなたで3人目なのよ。よろしくね。」
「ああ、よろしく。オレの名前はガトーだ。」
「もう、知ってるわよ!だってあたしと博士があんたを造ったんだから。」
そう言ってディーナが笑った。サリアもつられて笑っている。ガトーは立ち上がって部屋の中を見回した。確かに部屋の中にはサリアとディーナ、そして自分しかいないようだ。コンピュータに囲まれた部屋は窮屈ではないがそれ程広くもない。
サリアが言った。
「さあ、これからガトーにはいろいろとやってもらうことがあるの。」
「ん?なにをするんだ?」
「実は私たちの仕事の為にあなたを造ったのだけれど、あなたにはハンターズに所属してもらいたいの。それと、住民登録もね。ディーナが一緒に行ってくれるから、今から行って来てくれない?」
今はアンドロイドにも人権が与えられる時代だ。そのため製造されたアンドロイドは、起動してから10日以内に総督府・人民生活局に届け出を出すことになっている。
ハンターズになるのも総督府・職務局に届け出を出さなくてはならない。ハンターズは第一特別職種に該当するが、就職するにはいくつかの方法がある。
1つはハンターズ訓練学校に通うこと。ここで基礎知識や戦闘訓練等を学び、卒業と同時にハンターズライセンス(ハンターズに所属していることを示す証明書)と進化する防具、マグが授与される。
2つめの方法は、直接職務局に申請する。訓練学校に通わなければいけないという訳ではないので、こっちの方が手っ取り早いように思われるが、戦闘技術を持たないもの等は実戦の際に痛い目目にあうかも知れない。この方法の場合、いくつかの基本的知識のテストと身体検査(健康状態をチェックシートに記入する自己申告制)を受ける必要がある。
一般的にはこの2つがハンターズになる方法である。それぞれの方法に長所・短所があるのでどちらがいいとは言えないが、アンドロイドの場合はほとんどが後者の方法によるものが多い。なぜなら基礎知識は最初からプログラムに書き込んでおけばいいし、身体検査にいたっては正常に起動すればいいだけであるからだ。
ガトーはディーナに連れられ住民登録を済ませた。
そして次に向かうのは職務局だ。
職務局の窓口の前には様々な人が集まっていた。
体格のいい男、すらりとした身体の女性、頑固そうな老人や気の強そうなおばさんまでいる。
ここにいる人はこれから基礎知識に関するテストを受ける人たちなのだろう。
ふとディーナを見ると、窓口の受け付けの女性となにやら話している。
「・・・・よし!ガトー、帰ろう。」
「なに?テストは受けるんだろう?」
「ああ、ガトーはいいの。たった今からハンターズだよ。職業はヒューキャストだから、しっかりね。」
なぜ自分だけテストを受けないのか不思議に思ったが、とりあえずその場を後にした。その場にいたハンターズ志望者達の驚きと羨ましさの混じった視線が気になったからだ。
職務局を離れてからガトーは尋ねた。
「なんでオレだけテストがないんだ?」
「えっとね、博士の研究はラグオル調査専用の人員を造ってその性能を見るものだから。ガトーは元々ハンターズに所属することが決まってたの。」
「そういうことか・・・。しかしちょっと気が引けるな。」
「へへ、いいんじゃない?それよりこれからは実戦でハンターズの厳しさを教えるからね!よろしくー!!」
最初ガトーはこの言葉の意味がよくわからなかった。
研究員にハンターズのノウハウを教わるのかというのが引っかかったのだ。
しかし翌日になって謎は解けた。
「ほらー!ガトーったら気ぃ抜くとメディカルセンター行きになっちゃうよ!!」
ディーナはハニュエールでもあった。つまりハンターズの先輩なのだ。
ラグオル地表に降りての特訓は最初から激しいものだった。
ガトーはーラボに戻るといつもサリアの点検を受ける。
「ディーナ、少しハード過ぎないかしら?」
「なに言ってるんですか!明日はもう少し厳しくいきますよ!」
「・・・・。」
こんな特訓が何日も続いた。
ある日、森の中での特訓が終わり、しばらく休憩となった。
「ふー、今日もハードだな。」
「なに言ってるのよ。これぐらいで根を上げてたらあたしのお兄ちゃんにすら勝てないよー。」
「兄がいるのか。」
「うん。お兄ちゃんもハンターズに所属してて、フォーマーをやってるんだけどね。本職のコンピュータープログラマーの仕事も忙しいらしくて弱っちいよー。」
「フォーマー?すると人間か?ディーナはニューマンだろう。
おかしいと思うが・・。」
ディーナはニューマン、つまり人工生命体である。外見は人間とたいして変わらないがハンターズの中でも職業によって名称が分けられている。
アンドロイド×男×ハンター⇒ヒューキャスト
ニューマン×女×ハンター⇒ハニュエール
人間×男×フォース⇒フォーマー
このようにいくつかの名称があるのだ。
「あたしは元々孤児だったんだけど、引き取られた家族にお兄ちゃんがいて、すっごく優しいし面倒見てくれるの。家族とか仲間ってさ、そういう・・・血のつながりとかより絆!そう、絆ってのが大事だと思うの。ね?」
「そうか。なるほどな。」
「ガトーだってあたしや博士にとって、研究対象とかではなくてすごく大事だよ。大切な仲間でしょ?」
「オレが?ははは、そうか嬉しいな。ありがとう。」
ディーナは満面の笑みで頷き勢いよく言った。
「さて、特訓の続きだよ!」
〜真相〜
「二人ともちょっと聞いて。」
サリアがなにやら書類を見ながら話し出した。
「ガトーあなたにはまだきちんと話してなかったけど、あなたは元々ガル・ダ・バル島専門の調査員として造ったの。」
「ガル・ダ・バル島・・・?」
パイオニア1の人々が建設し、あの大爆発の中心地でもあったセントラルドーム。そこよりはるか離れた場所にその島はある。
まだ多くの謎に包まれており、現在は選び抜かれた数名のハンターズにより調査中である。
「5日後、ガトーには島の調査員として実際にガル・ダ・バル島に行ってもらうわ。ただし、最後の調整として明日と明後日の2日間、私の護衛をしてもらうわ。」
「護衛?どういうことだ?」
「実はその2日間、わたしは軍の調査隊と遺跡エリアに行くのよ。夜間の原生生物とD亜生命体の生態調査の為にね。この2日間、パイオニア2には戻らないわ。テントで一夜を明かすの。だからわたしの護衛として、あなたの最後の機能調査をさせてくれない?」
「あたしも行きます!」
「よし、わかった。必ず護ろう。」
「ふふ、頼もしいわね。」
翌日ガトーら3人は、軍との待ち合わせ場所へとやってきた。
そこは会議等に使われる部屋で、全員揃い次第出発となる。
すでに部屋には軍人によって構成された調査隊が待機しており、調査隊隊長のクリッパーが挨拶をしに近寄ってきた。
「サリアチーフ、お忙しいところお越しいただき恐縮ですな。」
「フフ、こんにちはクリッパーさん。私も良い経験ができて光栄です。」
「ははは、それはなによりですな。我々もお美しいサリアチーフとご一緒できて光栄ですぞ!」」
しばらくサリアとクリッパーの雑談が続き、ガトーとディーナは退屈になってきた。調査隊はきっちり整列したまま微動だにしない。
「いつになったら行くんだ。」
「なんか、他のラボのチーフも来るんだって。」
ガトーとディーナが話していると、ちょうど他の参加者が現れた。
別のラボでそれぞれの研究をしているチーフ達が3人。そしてそれぞれのチーフが連れてきた護衛が全部で5人。
「あとはドレインチーフだけですな。」
最後にやってきたのは、大きく太った中年の男、ドレイン=ドードーだった。ドレインが現れた瞬間サリアの表情が曇った。
「いやぁお待たせしましたな。おっ、サリアチーフ。横にいるのは“例の”調査員かな?」
ドレインはガトーを凝視した。なぜか薄ら笑いを浮かべている。
「ええ、ガル・ダ・バル島の調査をする“大切”な仲間です。」
「ほぉ・・・。」
2人の間には妙な空気があった。
ドレインの連れてきた護衛を見てディーナが、腕利きの有名なハンターズだと騒いでいる。
これで全員が揃い、さっそく調査に出発することとなった。
森エリアに降り立ったのは、もう日が沈みかけている夕暮れだった。
調査隊がクリッパーの指示通りに大きいレーザーフェンスを設置し、幾つもテントを張っていった。
夜間の原生生物調査はフェンス内からの観察が主であり、フェンス外に出ての調査はわずかな時間のみだった。当然たいした収穫もなく終わった。
「こりゃあちょっと慎重すぎんかね。私の連れてきた護衛もいるんだし。これじゃあろくな調査になりませんな!」
ドレインが最後に皮肉を言い放ち、その日の調査は終了となった。
深夜の見張りは、護衛でやって来たアンドロイドと調査隊メンバーのアンドロイドの数人がそれぞれ等間隔に広がり、フェンスの外を見張っていた。
ガトーも見張りをやっていたのだが、ふと後ろに人の気配を感じた。
「誰だ?」
「私よ。」
「博士か・・・。眠れないのか?」
サリアはガトーの横に来て、その場に腰を下ろした。ガトーも一緒に腰を下ろしたが、視線はフェンス外をしっかりと見つめ、見張りに勤めている。
「見張りは大変かしら?」
「アンドロイドは特に眠る必要がないからな。大丈夫だよ。」
「そう・・・・。星が綺麗ね、ラグオルは。」
「・・・・。博士、1つ聞きたいんだが。」
ガトーは少し遠慮がちに聞いた。
「今日、ドレインチーフがオレのことを“例の”調査員と言っていた。それに以前博士はオレに対して“例の”プログラムがどうのこうのと言っていただろう?なんのことなんだ?」
サリアは少し困った表情を浮かべている。ガトーはただ気になって尋ねただけの質問が博士を傷つけたと思った。しかし、サリアは少し笑って言った。
「・・・・。いいわ、教えてあげる。でも、もしかしたら気を悪くするかも。そのときはちゃんと怒っていいから・・・。」
話は、ガトーの起動日より少し前にさかのぼる・・・・。
ガル・ダ・バル島が発見され、ナターシャチーフの統括するラボではVRシステムというものを使っての試験の合格者を島の調査に送り込むという方法で研究を進めていた。
そして、各ラボのチーフが集まる定例会議でナターシャチーフのラボによる研究方法が取り上げられた。
「なぜVR試験などというものをやっているのかね。話を聞くと相当難しいテストで合格者は10名にも満たないらしいじゃないか。これでは島の調査も進まんぞ。」
ドレインが喚いた。
以前からVR試験に反対していた彼は、どうやら島の調査の進捗状況に不満を感じているようだ。
「VR試験をクリアできないような腕ではあまりに危険な所だと前回の会議でも説明したはずだが?」
ナターシャが反論した。
「ふっ、くだらん。そんなチマチマした方法より効率の良い方法があるぞ。」
「どんな?」
「島の調査専用のアンドロイドを造ればいい。とびきり強いやつをな。なにものにも恐れず、忠実に命令に従い、ただただひたすらに調査しつづけるアンドロイドをだ。」
この言葉にサリアが猛然と抗議した。
「それには反対です。アンドロイドだって感情があるんです。
そんな危険な所でひたすら調査だけをしていろだなんて・・・。怖い思いだってするかもしれません。それで機能障害でも起こしたら、それこそ調査が遅れます。」
「私もサリアチーフに賛成だな。確かに私のラボの調査は遅いかもしれない。が、これ以上調査が遅くなるかもしれない方法は取れない。」
ドレインは2人の発言を鼻で笑い、見下したように言い放った。
「サリアチーフ、ナターシャチーフ。あなた達は物分りが悪いですな。それはアンドロイドに感情があるから起こり得る可能性でしょう?・・・感情を無くしてしまえばいいだけでしょうが。」
「それはアンドロイドではなく、無人調査機を造れということですか?」
「アンドロイドだよ。自分で判断はできるように自我を残して感情などは持たせなければいい。」
「ふざけないでください!そんなのアンドロイドとは呼ばない!!」
サリアは怒鳴った。周りのチーフ達もドレインの発言を不快に思う者が多いようだ。
しかし、ドレインのようにアンドロイドは機械だと区別する人はそんなに少ない訳ではない。だんだん差別されることは減ってきてはいるが、無くなることは無いと言われている。
会議の出席者にアンドロイドがいなかったことがせめてもの救いだろう。
「感情の無いアンドロイドなど操り人形のようなものだ。使えなくなったら次を用意すればいい。」
「あなたって人は・・・・。どうしてそんなことを言うんですか?」
「ふん、これを見ろ。総督府上層部に知人がいてね、私の提案を応援してくれている方がいる。すでに操り人形の製造許可も降りている。誰が何と言おうと私はやるぞ。」
「だったら・・・、私がやります!要は優秀なアンドロイドを造れればいいんですよね。あなたにやらせるぐらいなら私がやります。」
ドレインは眉間にしわを寄せ怒鳴った。怒りが頂点に達したようだ。
「ふざけるな!権利証は私が持っているんだぞ!」
「ドレイン、我々は揉め事は全員の意思を考慮して解決するのが決まりだ・・・・。サリアチーフに権利を譲るか譲らないか、多数決にて決めよう、公平にな。」
「くそ!なにが公平だ!・・・・いいとも、あんたがやればいいだろう。ただし、できのいいのを頼むよ。希望としては感情を持たない忠誠心あふれる操り人形をだ!ふん・・・。」
ドレインは権利証を投げ捨て部屋を出ていった。
ガトーは話を聞いている間一度もサリアの顔を見なかった。
サリアの声がとても悲しく聞こえたから、見てはいけないかと思っていた。
「・・・・ごめんなさい。こんなことで造られたなんて気分悪いわよね。でも、悲しいと思わない?ただひたすらに任務をこなし、いつか動けなくなるまで命令に従うなんて・・・・。」
ガトーはそれに答えず尋ねた。
「“例の”プログラムというのは?」
「・・・あなたを造る際の条件的なものとして、やっぱり強くなくてはならないの。ドレインなんか見返してやりたいとも思っちゃって・・・。そこでディーナのお兄さんにも協力してもらったのよ。」
ガトーはやっとサリアの顔を見れた。
「ディーナの兄?確かコンピュータープログラマーだったな。」
「そうよ。あなたもいつか会っておきなさい。その人に協力してもらったプログラムを作動させればあなたは誰よりも強くなるわ。作動方法は知ってるはずよ、使ったことがないから気づいてないだけ。それと、プログラムの使用は3分間だけ。」
「時間制限付きの理由は?」
「・・・・その力は強力だから。もしかしたらその力に自惚れて悪用するかもって考えたら怖くなったの。・・・・ごめんなさい、あなたを最初は少し信じられなかった。」
「謝ることはない。感情があるんだ、有り得ないことではないはずだ。」
サリアはすっと立ち上がりながら言った。
「もう寝るわ、あなたに話せてよかった。肩の荷が下りた気がする。いっぱい謝ったからね。ガトー・・・・あなたは優しいから、きっとその力を良いことに使うわ。」
そういってガトーに背を向けテントに向かっていった。ガトーは振り向くことなくその場で言った。サリアに誓うように、そして自分に言い聞かせるように。
「ありがとう、あなたに造られてよかった。必ず護ろう。」
サリアも振り向くことなくテントに入っていった。
もうすぐ夜が明ける、ガトーは強い思いを胸に抱きその場に立ち上がった。 |
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