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ちょっとした執事達の、ちょっとした談話。 |
〜登場人物〜
テイフーさん
ファクト:レイキャスト。小さく痩せていて、白と橙色をしている。
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親愛なるテイフー様は、高名な御家の執事をなさっておいでで、私も場所は違えど、それを天職としています。いわゆる、同業者ということになりまして、その繋がりから多少のご縁ができまして、日曜の早朝、一緒に散歩をする仲というわけであります。
「ご機嫌うるわしゅう、テイフー様」
「いえいえ、あたしなんかにはもったいないお言葉ですよ、ファクトさん」
ギニョーン、ギニョーン
親愛なるテイフー様は、今週も来てくださいました。私とは違い、お仕事もたくさんあるのでしょう。なぜなら、テイフー様には装甲の破損が見受けられない事のほうが多いからなのです。ですから、私はテイフー様が仕事をバリバリこなす姿を思い浮かべては、なんて立派な方なのでしょうと思うのです。
ギニョーン、ギニョーン
「テイフー様」
「なんでしょう、ファクトさん」
「先ほどから、足元で奇妙な音を発しておられますが、いかがなさいましたか?」
「ああ〜ばれてしまいましたよ〜。すみません、ファクトさん。ちょっとお嬢様に吊るされていたもので、足腰の接続が悪いのですよ」
「そうでありましたか。お仕事がんばっておいでですね」
テイフー様はよく吊るされるとおっしゃいますが、多分、庭木の手入れなどのために、高く吊るされる必要があるのでしょう。私の家には広い庭などありませんから、それを考えただけでも、テイフー様は大変な苦労をなさっておいででしょう。
「では、今日はそこのベンチに座って行くことに致しましょう、テイフー様」
「ああ〜ありがとうございます。ファクトさんはいつもお優しくありますね」
「いえいえ」
テイフー様も私も、今となってはかなりの年代物でありますから、無理は禁物なのです。しかしながら、テイフー様の頑張りようとこの物腰の低さは、執事の鏡であると思っています。
「テイフー様」
「なんでしょう、ファクトさん」
「今度、私の家へお越しくださいませんか。専用の整備室がございますので、そこでお具合をみて差し上げたいのですが」
「ああ〜ありがとうございます。ファクトさん。もう、なんと言っていいか、こんな差し出がましいあたしなんかに、そんなにもご配慮してくださって、もう、あたしはうれしくって」
「ぜひ、お越しくださいね。生傷が絶えないテイフー様はさぞ、お仕事をがんばっておいででしょう」
「いえいえ、あたしなんか大したこともないですよ。昨日だってずっとお嬢様に吊られっぱなしで。いえ、本当なんですよ。それというのも、あたしがお嬢様のご機嫌を損なってしまったばっかりになんです。もう昨日もミスの連続でして」
テイフー様はなかなか饒舌でいらっしゃる。
「でもね、そんなお嬢様の会心の一撃でも、あたしゃお嬢様の愛情を感じるのでありますよ。年とともにやんちゃの幅も広がり、あんなに小さかったお嬢様が、こんなものすごいことまでできるのかってぐらいに成長してくださって。あたしはそれを見るだけでもうれしくってうれしくって」
「そうでありましたか」
テイフー様はそのお嬢様を本当に大切に思っていらっしゃる。テイフー様のお世話になって育った方ならば、さぞ人格も器量もしっかり備わったお方でありましょう。 |
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