「えー・・・と、ガルス博士はっと・・・」
これで何回目になるだろうか、ラッピーの集団に出くわしたタカネ。中にガルス博士がまぎれてるかもしれないので、慎重にラッピーに触れて探す。手がラッピーの毛に触れ、何とも気持ち良い感触を感じるタカネ。
だが、触られたラッピーは大人しくいるのもあれば、そうでないのもある。この場合、後者であり、直につつき返す。
「よし、本物のラッピーだな。」
その反応で本物とガルス博士を区別するタカネ。ラッピーのつつきを交わした後、ダブルセイバーの柄でラッピーを気絶させる。よし、と次のラッピーを確かめようとした時、遠くからタカネに向かって突撃するラッピーを見かける。
「・・・」
タカネには想像がついていた。確固たる想像が。
「ラピー!!(コラー!!)ラッピーラピピラピッピー!(ラッピーを苛めるではない!)」
明らかにラッピーの鳴き声ではなく、人間の鳴き声だった。その人間の声を出すラッピーはスピードを緩めず、タカネに体当たりを仕掛ける。
「ガルス博士。見つけましたよ。」
それを手で止めるタカネ。顔は微笑んでいるのに、その手には微かに力をこめている。ヌイグルミのラッピーの顔面が奇妙に歪む。それに比例して、タカネの右手に血管が浮き出る。
「ラ・・!(い・・・!)ラピピピ!!(イタタタ!!)」
羽をばたつかせながら、必死に離れようとするガルス博士。ガルス博士ではなく、本物なら可愛い仕草だが、中身を知っている為、博士を名乗る者としては威厳が無くなる仕草だった。
「いい加減人間語話しましょうね。話があることですし。」
ヌイグルミのラッピーの顔に近づけて、微笑みを崩さないタカネ。
「ラッピピ!(わかった!)ラピラピピピ!(放してくれ!)」
さらに右手に力をこめるタカネ。
夕日が沈みかける時、白衣を着た博士号を持つ者は、緑の服のフォニュームを前にして正座している。フォニュームは、元々倒れていた木に腰をかけ、比較的大人しい野生のラッピーを抱いているが。
「ごめんなさい。まさか君が来るとは夢にも思わなかったです。今度という今度はもうしません。」
赤くなった顔に古い時代の遺産、湿布なる物を張っているガルス博士は懲りた様子だった。下手な敬語を使いながらも、土下座するガルス博士。
「はい、OKです。僕も助手の方々によぉくお願いしますから。」
と、言いながらラッピーの頭を撫でるタカネ。
「それにしても博士。」
「はい。」
「敬語はもういいので、何故野生のラッピーに魅力を感じるんです?」
と、タカネが言った瞬間ガルス博士の目が光る。いや、目ではなく、彼のメガネらしき物が光ったというべきか。
「よくぞ申してくれた!前にも言った通り、もこもこでふかふかなのは分かるかね!?」
「ええ、まぁ。一応ハンターなものでして。」
「そうッ!そこでワシはラッピーになりすまし、彼らの生活を探ったのだ。それでわかったのは、彼らのありのままの生活!なんと我ら人類と同じなのだよ!そして、あの可愛さ!我ら人類と同じ生活で共感を感じないわけにもいかないだろ君!だからこそワシは彼らに魅力を感じるのだよ!あの可愛さ!我らと同じ生活!ああ、彼らを飼いたい・・・」
途端に人格が変わり、熱く熱弁する中年博士。
「別にペット用でもいいじゃないですか?」
少し水を指すように、聞きたかったことを言うタカネ。
「それではいかん!ペット用は所詮ペット用。それでは、彼らの素のままが見られない!そうではないか!?」
と、丁寧に答えを返してくれるラッピーについての権化、ガルス博士。
「だから、ワシは家でラッピー天国なぞ作らんのだよ。どうせなら、このままここに住み着いたいのだがね。」
(あんたなら、確実にできるよ)
「野生のラッピーならでは凶暴なラッピーもいる。このことについては?」
言ってることと考えてることが疎通していないが、次に聞きたいことを述べるタカネ。
「彼らの生活を探ってみたが、その凶暴なラッピーは我らで言うなら、軍隊みたいなものだ。罪無きラッピー達を守る為、侵略者を撃退する為に凶暴になっているのだよ。だから、襲ってくるとはいえむやみに殺しちゃいかん!」
右手を握り、震えながら赤い顔をさらに赤くしながらも、熱弁するガルス博士。
「ラッピーは殺せませんよ。」
「え?」
意外な答えで驚く博士。
「いや、僕もこう見えてハンターの端くれ。ラッピーとの戦いも数知れず。それに気付いたのは・・・ラッピーは殺せません。どんなに攻撃を加えても、どんな一撃でも死んだ振りするだけです。」
「な・・・何ッ!」
顔に衝撃を走らせながら体をのぞけるガルス博士。
「例えば・・・今あそこに殺したはずのラッピー。あ、今起きようとしてますね。んじゃ、グランツ!」
タカネが指した方向にいる、殺したはずのラッピーが起きようとしている。それを追い打つかのように、光がラッピーを包む。大きな爆発音と共に、残ったのは。
「一度死んだ振りしたラッピーはあのように逃げていきます。その際落としてくれるのが、アイテムです。」
タカネの言うとおり、煙の中から焦げたラッピーが出てきて、そのまま走る去る。
残ったのは緑のコンテナだった。
「おおお!!!これは意外な事実だ!!!」
ガッツポーズをしながら、事実に対して喜ぶガルス博士。それを冷やかに見るタカネと、抱えられているラッピー。無視するかのように、向き直るガルス博士。
「よし!また潜伏しなければな!」
「待て。」
「ああ、どうもどうもありがとうございます!本当に心配してました!こんなに遅くまでかかって・・・」
頭を何度も何度も下げ、謝る助手。因みに、戻ったのはもう夜らしい。彼の隣には、紐できつく腕を縛られ、気絶したガルス博士が座っていた。さらにその隣には、タカネの計らいで、連れて来た野生のラッピー3匹が並んで寝ていた。
「ええ、もうこんなことが無いようにラッピーも連れてきました。」
疲れ気味の顔で応えるタカネ。
「はい!この馬鹿博士にはよく言っておきます!では、報酬はカウンターにて受け取ってください!」
最後に、大きく頭を下げ、ガルス博士とラッピー3匹を連れて帰る助手。それを見守り終えたタカネはカウンターで報酬を受けた。その際、トランクガールから質問された。
「ガルス博士って、またやらかすと思いません?」
「ええ。あの博士ならやりかねないでしょうね。」
と、さらっと言い返すタカネ。
人が少ないロビーで気を抜きながら椅子にもたれかかるタカネ。人が少なくても、少し耳を澄ませば会話は聞こえるのだが。
ともあれ、一つの仕事を終えたタカネは疲れを取るかのように大きく溜息をついた。
「タカネタカネ。」
と、後ろからまたもや声をかけるBATTLE。彼も一仕事を終えたようで、少し疲れ気味のようだ。
「なんだい?」
向き直り、顔を向けるタカネ。
「報酬はどうだったよ?」
「んー・・・ぼちぼち5000メセタって所かね・・・」
「ありゃ、意外に少ないな。」
意外だったらしく、少し驚くBATTLE。どうやら、もっと高く取れると思っていたらしい。
「まぁ・・・これぐらいあれば暫くは飯代にも困らないし、大丈夫さ。」
「そうか、それと明日のクエストを予約しておいたぞ。」
早くもクエストを手に入れたらしい。ちょっと驚いた顔を作って、どれどれ、とカードをまた受けるタカネ。
『どうもラッピーの中に伝説のラッピーがいるらしい。腕に覚えのあ』
またもや半分いくどころか、全体の4分の1位の所でタカネはカードから目を放し、あらぬ方向へ投げ飛ばす。
END
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