PSOみんなの広場





〜翌日〜

「アハハハッ!そんなことがあったんですか?」

「笑えないですよ。」

ムサシは膨れっ面で言った。チップスとクロウの姿はない。

「ククッ、ごめんなさい。ところでチップスさんとクロウさんは?」

「あの二人は地表に降りて勧誘してくるって。僕は引き続きパイオニア2内での勧誘、って言っても今昼時だから全然人いないですね。」

ムサシは辺りを見渡したが、自分と目の前にいる女性、エリ以外は数人の科学者の姿しかない。
チップスとクロウもまだ戻ってこない。

「んークロウさんが熱烈に誘ってきてくれたら少し考えちゃうんですけどね。」

「えっ、だってエリさんは・・・」

「そうですよねー。やっぱりだめです、私には愛しのコンピュータ、“カル”がいますから。」

「いやそれ以前にエリさんハンターズじゃないじゃん、オペレーターじゃん。」

エリはムサシの言葉を聞き流し話し出した。

「一人紹介しましょうか?」

そういって彼女はしばらく待つように言った。
数分後、連れてきたのは一人のフォニュエールだった。オレンジのショートヘアーに、目の回りにはいかにもフォニュエールといった感じの化粧をしている。
そしてムサシが個人的に喜んだのは、彼より背が若干低い。

「リンです。よろしく。」

少し無愛想な挨拶だった。

「ムサシさん、彼女を仲間にしたら?あなたたちと同じでVR神殿まではクリアしてるのよ。それに彼女も仲間探してるところなの。」

「そうだな、せっかく仲間を探してるもの同士だし。彼女にお願いするよ。よろしく、ムサシっていいます。」

握手を求めて差し出した手は無視された。
ムサシとエリは少々呆気にとられた。

「勘違いしないで。仲間にはなってもそれは戦いをサポートするというだけの話。馴れ合う気はないから。」

この後、チップスとクロウが戻ってきたので彼女を紹介したが、相変わらず彼女の態度には変化はなかった。
全員の顔合わせが済むと彼女はさっさと帰ってしまい、ムサシたちはラボの談話室に入った。

「なんだよあいつ!なんであいつを誘ったんだ?」

「仕方ないよ。VR宇宙船のテストは明日だし。」

チップスはひたすら文句を言いつづけ、クロウはただ黙っているだけだった。

〜さらに翌日〜

案の定四人の雰囲気は最悪だった。
チップスは常に目が釣りあがっていて、リンも誰とも目を合わせようとはせず、クロウは今日も黙ったまま。
ムサシはそんな三人を見るのが嫌だった。
こんな状況のまま試験は始まった。

『みなさん頑張ってくださいね。私も応援してますから。』

通信端末から聞こえるエリの声援もこの空気を変えることはできなかった。
エネミーが現れた。
ムサシとクロウは先頭をきって突っ込んだ。チップスの射撃により二人の背後に敵は近づけないでいた。
しかしチップス一人では追いつかないくらいに数が増えてくる
と、リンはグランツを唱え多くの敵を撃破。
次に全員のダメージを回復させ、さらにシフタとデバンドをかける。

「第二陣が来たぞ!構えろ!」

クロウの言葉に全員が構え、ギルチックの群れを迎え撃つ。
なかなかいい感じではある。
しかし、あるフロアにてチップスが敵からの集中砲火を浴びた。
リンがテクニックを連発させ、レスタをかける。そして一言。

「なにやってんのよ!テクニックだって無限に使えるわけじゃ
ないんだからもっと注意してよ!」

「なんだよそれ!お前こそしっかりサポートしろよ!」

ついに始まってしまった。仲間割れが起きるだろうということは予想していたが、実際に起きるとどうしたらよいのか。
ムサシはあたふたしている。

「おいリン!お前その態度いいかげんにしろよ!そんなんだから今まで仲間いなかったんだろ!オレたちだってもう我慢の限
界だぞ!」

その場にいた全員が一瞬固まった。
そしてリンがいきなり走り去っていく。
一瞬見えた顔は泣き出しそうだった。

「ちょっと行ってくる。」

ムサシも走り出し、二人は取り残された。
今までずっと黙っていたクロウが言った。

「あの子のフォースとしての腕前はいいな。俺たちにとっても必要な人材だ。なぁチップス。」

「わかったよ!オレは言い過ぎた。ちゃんと謝るよ。」

ムサシがリンに追いつくと、彼女はフロアの隅にうずくまっていた。
どうするべきか、こういうときはどうするのが一番なのか、ムサシは物陰に隠れて考えた。

「なんで僕は隠れてるんだ。リンを元気付けなきゃ!・・・・なんて言えばいいんだろう。」

ガシャン!

なんの音だ?ムサシが覗いてみるとギャランゾが2台、リンの方に向かっていってる。
リンは動かない。
気づいていないはずがない。
まさかあのまま好き放題に攻撃させるつもりか!
ムサシは走った。
ギャランゾはミサイルを構え出した。
間一髪、発射されたミサイルより先にムサシがリンを捕らえた。
すかさずムサシはバータを唱え、ギャランゾは氷漬けとなった。

「なんで助けるのよ!仲間だからって自分が怪我してまで助ける理由なんかないでしょ!」

ムサシはミサイルの爆風で右腕に傷ができていた。

「一旦クロウたちのところまで戻ろう。僕のバータじゃたいして効かないし、第二陣が出てくるはずだよ。」

「だから、助ける理由がないでしょ!あたしは頼んでないんだから!」

ムサシはちょっと上を向きながら考えて言った。

「んーと・・・そういう理由がいらないから、仲間っていうんじゃないかな。」

リンははっとした表情を浮かべ何も言えなかった。
氷漬けのギャランゾが震えている、いよいよ動き出しそうだ。

「あたしのこと、まだ仲間と思ってくれるんだ。ちょっと嬉しいかな・・・チップスの言う通り、あたしって人見知りして初対面の人にはどうしても強がっちゃうんだ。本当は淋しいだけなのに。」

「でも、今のリンはすごい素直だよ。」

ムサシは笑って言った。
ギャランゾは氷漬けから復活し、第二陣も出現した。

「やばい!逃げられない!」

「ムサシ、あたしチップスに謝るよ。」

「わかったから!この状況見て!」

そのとき、1台のギャランゾが崩れて倒れた。
クロウだ!続いて2台目に斬りかかり、チップスも銃撃しながらムサシの側に近寄ってきた。

「大丈夫か!」

「助かったよ。」

「気ぃ抜くな!敵はまだいるぞ!」

ムサシとクロウは構えた。
チップスはリンに近づき、照れくさそうに頭をかいた。

「あーその、なんというか・・・」

「ごめん!」「ごめんね!」

二人同時に謝り、お互いに笑顔だ。
ムサシは嬉しくなり自分も笑顔になってる。

「お前ら戦え!!」

クロウが一人叫んでいた。

試験は無事終了。
見事に合格である。
エリも、仲間と打ち解けたリンを見て嬉しそうだ。

「これでリンも本当の意味での仲間だね。」

その夜、親睦会ということでラボで遅くまで騒ぎ、エリさんも含めムサシたちはナターシャチーフにこっぴどく叱られたという。

END


ゲームとはいえ、オンラインプレーで出会うハンターズ達はみんな人間です。お調子者や人見知りな人、いろいろな人がいて当然!
それをちょっと話してみて、自分には合わない人だなんて決め付けてしまうのはとてももったいないことですよね。
そういう中にだって、リンのような大切な仲間が見つかる可能性はじゅうぶんにあるのですから!
四之宮さん、オンラインデビューおめでとうございます。
作品に負けないような素敵な出会いを沢山してくださいね!

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