PSOみんなの広場

 




  なんとか午前中には、FACT用の武器を整備できた。整備といっても、FACTでもドライブできるように、フォトンブースターを使ってほとんど違う武器に作り変えてしまったという感じだろうか。今度、FACT自体のパワーアップを図ってみようと思った。

「うーん。まだしっかり体が馴染んでいないみたいだね、90」

 整備室で90の調子を見ている。

「デスガ、8割方ノ出力ハデマス。本日ノ調査ニモ同行スル」

「いや、今日はゆっくり休んでいてくれ。FACTをカスタムして、来てもらうことにしたから」

「同行シマス。今回ノ調査ハカナリノ危険ヲ伴ウユエニ、マスタートFACTダケデハ非力デハトカンガエル」

「ぬ・・・」

「マスターニトッテハ、今回ハ重要ナ調査デアルハズダ」

「・・・・・・そうだね」

 正直、90について来てもらえたほうが心強い。そして90は僕がそうしたいことも理解しているかもしれない。

「オ言葉デスガ、夜間ニオケル生物ノ凶悪性ハ、昼間ノ比デハアリマセン」

「だろうね。90だってそれなりの性能はあるものな」

 本当は日を改めれば良い話だけの話だった。90が完全に回復すれば、もっと着実に調査を行えるだろう。しかし、僕にはあまり時間がない、というのが現実だった。

 端的に話そう。僕の狙いは、夜間にのみ活動を行う希少生物種の発見と、その生態系の解明にあった。

 そもそも、ラグオル地上における生態は摩訶不思議なことばかりだった。ブーマの二足歩行や、バーベラスウルフの集団的ハンティング、ラッピーの逃げ足の速さ、モスバートンの巣の引越しなどなど。ヒルデタイプはどうやって、あの巨体を維持するに必要な食物を摂取しているのかを研究していた時もあった。

 そして、なぜ時間がないかというと、それは昔の話になるのだけど・・・・。

 僕の研究の大部分は、前の研究所から引き続き行っているものなんだ。いまでは趣味といわれても言い返せないけど。それでその研究所を辞める時、データの引渡しを強制させられた。遺憾ながら応じたけれど、その後が問題だった。僕の研究を研究所でも引き継いで行っているんだそうだ。これは確実な情報だった。最近では、軍との癒着もすごいらしい。要するに、融通利かず意固地な僕は切り離して、内輪でヤバイ研究に利用しようとしているん--だ。それが許せなかった。

 だから、奴らよりこの研究を先に終える。それが僕のせめてもの意地で、プライドだった。

「マスター」

 ン。少し昔を思い出しすぎたか。気づいたらFACTも手前にいた。いつもなら足音が聞こえるはずなのに。

「マスター。私タチハ、アナタヲ優レタ才能ノ持チ主ダト理解シテイマス」

「え・・・」

 不意を突かれたその言葉。FACTにそのように理解するプログラムなんていれた覚えはなかった。

 「マスターニハ才能ガアルト思ワレマスガ、一人デ全テヲ抱エ込モウトシスギデハナイデショウカ」

 FACTの言葉だった。彼からそんなコトを言われるなんて予想外だった。

 「才能ハアリマスガ、基本的ニマスターハ身体的能力ガ劣ッテイルノデ、一人デ行動スベキデアリマセン」
 
「う・・・」

 90・・・・。いつもながらわかりやすい言葉だった。

「先ニ勤メテイタ研究所ノコトデオ悩ミデショウ」

FACT・・・・。気づいていたか・・・。

「加エテ、先月ノパイオニア2ラボハンターズ登録試験ノ不合格デ、アセリヲ感ジテイル」

「うっ!・・・・・」

 痛たた・・・・。90が続けて言った言葉だが、事実だけになにも言い返せない。 

「アレハマスターニトッテハ不利ナ試験展開デシタ。予想以上ニ戦闘ニ付加ガ高ク、カツ女性ニ弱イマスターハID取得ニモ困難ヲ極メ、試験中ノVRフィールドノ不具合モアリマシタ。ソモソモ、二人一組トイウシステムガ友人ノ少ナイマスターニトッテ・・・・」

「あ〜もういい・・・。フォローになってないよ、FACT」

「モット私タチヲ信頼シテクダサイ」

「私タチヲ信頼スルベキダ」

「・・・・・・・・すまねえ。ありがとう・・・・。二人とも出発の準備をしてくれ。FACTは装甲の付加と、戦闘プログラムの追加を行ってくれ。プログラムは90と同じものを用意してあるから。90も急げよ・・」

「承知シマシタ」

「了解」

 ・・・ありがとう・・・。みんな。うれしくって、涙が出そうで、逃げるように整備室を後にした。


 日は落ちた。そのラグオルの地表には、3人の姿があった。

「視界ハ悪イノデ、余リ離レナイヨウニ」

「そうだな。FACTは後方の援護を頼む」

「承知シマシタ」

 なんて美しいんだろう。何百、何千という星々が、煌びやかにまたたいて・・・。遠くには、セントラルドームがひっそりと怪しげな影を落としていた。美しすぎて、静かすぎて、神秘的だった。でも、ほんの一線を超えてしまったら、それらは変貌をとげる。心に恐怖を抱けば、星は怪しく光始め、目に見えぬ一寸先に注意を払い、そして何度も後ろを振り返ってしまう。

 でも、大丈夫。そんなことになりそうなのは一人もいない。

 僕らは信頼できる仲間だから。

「マスター」

「ン。どうした?」

「新種ニハマスターノ名前ヲ用イテハイカガデスカ」

「あはは。・・・・・ンと、スノーラッピーかな」

「イイ名前ダ」

「はは。そうかい?だったら可愛いといいんだけどなァ。でも、それはないよ」

「ナゼデスカ?」

「僕ら3人で見つけるからさ。僕だけで見つけられるわけないだろ?それに肉体労働は不得意なモンでね」

「承知シテイマス」
 
「ムーンアトマイザー所持」

「あはは。そりゃどうも」

 もうマスターなんてどうでも良かった。それでいいと思ったから。

「いこう」

「承知シマシタ」

「了解」

 この闇を抜けて、僕らは再び舞い戻る。そしていつか、この世界に平和が訪れるコトを、少し祈った。


アンドロイドと人間を描いた作品で”主従関係”が”友情”に変わっていくという展開はとても珍しいものですが、”仲間”や”協力”といった言葉をコンセプトとするPSOにはぴったりですね!
まるで、自分の子供のようにFACTと90の事を大切に思っているSNOWと、そのやさしさをじゅうぶんに感じ取って成長していく2人の関係がとても暖かく感じました。

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