
CACE4パイオニア2
「博士〜準備できましたぁ」
「うん。こっちもOKだよ」
パイオニア2高層ビル群。その中でも一番高い場所。
そこに二人はいた…パイオニア2随一の科学者とその愛娘。
何を隠そうエルノアとモンタギュー博士だ。
「ウフフフ…今日この日の為に随分苦労したけどいよいよだね♪」
「そうですねぇ♪」
「あの…」
楽しげ(&怪しげ)に笑う二人の後ろには、
何故か自転車にまたがるアッシュ、ウェインズ姉妹、ライオネル、
そしてスゥとその子分二人。そして、彼らの背後には、
巨大スプリンクラーが……。
「ウフフ…そうだね、事前に説明しておこうか。実はね…」
―雪を降らせようと思ってるんだ―
「雪って…でも、毎年振るじゃ無いですか…?」
人工的な明かりと、気温調節がなければ四季も昼夜も無い船内。
しかし、昼夜と四季を人工的に演出する事で、
時間の間隔を人は感じ続けていた。
「んっふっふっふ…駄目だなぁ。僕があんな紛い物の
フォトン雪で満足すると思うかい?」
彼は間をおいて一気に吐き出した。
「生物を連れて帰るのもダメ!直接 地表に行くのもダメ!
当然本物の雪で雪合戦も駄目!!うっぷん 溜まりまくりさ!」
…最初の二つは関係ないだろうというツッコミはこの際無し…
「で…だからってパイオニア2全体に振らせなくても…」
「雪遊びで遅刻したアッシュ君に
言われる筋合いは無いんだがねぇ…ウフフ」
ウフフ…などと言っているが目は本気だ。
「で…この自転車は何ですか…てか今時人力発電って…」
もはやこの場にいる全員の代表にされてしまったアッシュの肩を、これでもかと力強く叩くジャンカルロ・モンタギュー。略称モン太。
「よくぞ聞いてくれたアッシュ君!!」
「ひぃっ!」
「計画は単純!パイオニア2上空の気温を下げて、
そのスプリンクラーでまき散らす水を雪にするだけ!!
と・こ・ろ・が…回しはじめに必要な電力が恒星から直接取れる
エネルギーじゃまかないきれなくてねぇ…もう解るよね…」
「は…はぁ……」
「じゃ、今からそれこいどいて。もう準備できてるんだから」
眼下に広がる居住区。豆粒のような人々が
動いているのが見える。一番不規則に動いているのは子供達か…
その子達に本物雪を見せてやれるのなら…
アッシュは悪くないと思った。それと同時に、こうして作る雪も、
やっぱり紛い物なのではという罪悪感もあった…。
「やってくれるよね?」
「はいっ!」
子供達の夢を…そう思えばアッシュの瞳に光が宿るのも当然だ。
「じゃ、始めようか」
「いつでもOKです!!」
気合いを入れてこぎまくった自転車の発電量は常軌を逸した。
その結果に満足げに笑うモンタギュー博士は、愛娘に指示を出す。
「エルノアぁっ!パイオニア2空調システムハッキング開始!!」
「はーい♪」
……ん?ハッキング?
「「「「「「何イイイイイイイイイイイイイイイイイイっ!?」」」」」」
一斉に叫ぶ一同。しかし悲しいかな、
気合いの入りすぎたアッシュの足はちっとやそっとじゃ止まらない。
「誰にもなんの相談も無しですかいっ!!」
「当然!あんなお堅い連中僕ぁ嫌いだね!!」
そう言う問題では無いと思うのだが…。
「それとも何だい?子供達の夢とどっちが大事だい!?」
「それ以前に出来るんですか…?」
「ウフフフ…この僕に不可能は無いのだよアッシュ君!!」
暴走し放題のモンタギュー博士の笑い声響く中…
パイオニア2の気温は下がり、スプリンクラーから霧が舞い、
それは凍り付いて綿雪に変わっていった……。
で…ハッキングなんかして騒ぎにならないはずのない総督府。
「総督…」
「いいんだ。このくらいは…な。軍にはこちらから言っておこう。
と言っても…向こうの連中も黙認するらしい」
「でしょうね…本物の雪…当分見られないと思ってましたもの…」
―Merry Christmas…父さん―
「ん…アイリーン…何か言ったか…?」
「いえ…何も?」
「うむ……気のせいだったか…誰か…」
翌日降り積もった雪は、
パイオニア2の子供達を大いに喜ばせたという…。
CACE5遺跡エリア
それは…躊躇していた。
目の前の、年端の行かぬ少年が背負う袋を見て…。
それが何か…数多の命を取り込んだそれに、
解らないはずが無かった…。
その存在は知っている。今日は赤いローブを着ているが、
この少年の普段の法衣は蒼天のそれに似ている事を。
訴えるような瞳の少年が、この生け贄の台座に持ち寄った物。
それは見紛う事なきクリスマスツリーの飾り(お徳用サイズ)
そして…その存在は少年の深層心理に語りかける…。
(……私ニ…ソレヲ…ヤレト?…(汗)
少年が頷く一瞬の間が…その存在には永遠にも思えた…。
(…イヤ…デモサ…私ニモ…威厳ッテモノガ…)
少年…目が潤み始める。その時…その存在の中でうずく者が…
その存在にとって、少年のお遊びなどどうでもいいのだ。
その気になればこの場で叩き伏せ取り込むこともできた。
しかし、その存在が取り込んだ命達の中で、
最も大きな位置を占める者はそれを許さなかった。
(………………………………………(滝汗)
内側では己の実体の核が、
外側では何かを訴える子供の眼差しが、
その存在を情け容赦なく痛めつけていた…。
(……今年ダケナ……)
外と中の二重の重圧はとうとう邪神までも屈服させた…。
少年の目には光が灯っていたが、内なる存在はまだ不服だった。
(…モウイイデス…デモ…今日明日ダケネ…(涙)
その存在の中心が破れ、人の形をした物が出てくる。
紫色のゴムスーツのような皮膚を紫の汁を零しながら破る姿は
見ていて気持ちの良い物では決してない。
「うっわぁ…気持ち悪〜ちょっとコレ何とかならないのぉ?」
そして…中から出てきたのは…幾度と無くメッセージパックで
見た姿…レッドリング・リコに他ならなかった。
ただ…その姿は映像同様どこか存在感に欠けていたが…。
「……………リコ?」
「へへ〜今日明日だけだって。でもさ、久々の自由の身♪」
自分の体にまとわりつく液を拭いながらも「気をきかせてよね」と
さっきまで自分を飲み込んでいた存在に噛みついた。
その存在は泣いた。その巨体に相応しい滝のような涙を流して。
(クリスマスナンテ…大嫌イダァ…)
ちょうど良いシャワーで体にへばりついた液を洗い落とすと
どこから用意してきたのかミセスサンタの衣装に着替える。
「そうだ。キミ、名前は?」
「…レキ」
「じゃあレキ君、みんなにクリスマスプレゼント配りにごー♪」
その頃…遺跡債深部へ向かう少年少女がいた…。
「ほんとにあの子ここにいるのかぁ?」
「しょーがないでしょー。他は全っ部探したし、残っているのは…」
目の前にあるのは巨大な転送機。
「でもさ…ここに来る理由なんて…」
「せっかくのクリスマス。『彼女』にも楽しんで貰いたいでしょ?」
「転送機…起動してない…あの子…無事かな…?」
「マイナス思考は感心しないわね」
少女は平静を装っていたが…やはり歯がゆいのか、
転送機付近の壁に強烈なパンチをお見舞いした時、
一瞬の駆動音。駆け抜ける赤い風。転送機には…
リコの前で、レキと名乗った少年。
「レキ…大丈夫?」
無傷で出てきたレキだが、相手が相手なだけに余計
不安になったのだろう。少女はレキのそばに駆け寄った。
「あれ……マスター?」
「ん?どしたの?」
レキは多くを語らず、自分の耳をいじる。
マスターと呼ばれた少女がその仕草を真似たとき…
違和感があった。
「それ…イヤリングだよな…」
少女の片耳を飾るそれ。
どこかで見覚えがあったが、思い出せなかった。
「クリスマスプレゼントにしてはいいセンスね」
「似合うよ。でもなぁ、レキ。心配してたんだぞ」
「えへへ」
「地底だけど…冷えてくるのね…帰ろうか」
「そだな」
来た道を引き返すハンター達。気が付いたのだろうか、
少年の片手に握られたセイバーの奥で、
真紅の光が疼いていることに…。
で、即席クリスマスツリーの飾られた最深部には、
結局他にはだれも来なかったんだそうな。
Merry Christmas in Pioneer2...
後日談
「うう…頭痛い…」
「クロエェ…寒いよぉ…」
「アナ…私も同じだから…」
「ったく…情けないわねぇ…」
「あねさんこそ…」
「今日はやけに重装備じゃないですかぁ…」
雪で遊びすぎたアッシュと、HUnewealのあの格好で
極寒の洞窟を探索した双子の姉妹と、
スプリンクラーから吹き出る霧をモロに浴びてなお
重労働した三人組…。
彼らは翌日に風邪を引いてしまい、雪遊びどころでは無かったとか。 |
クエストに出演するキャラクター、総出演!
パロディー作品ながら、それぞれの特徴が上手く捉らえられていて、とても楽しかったです!
クリスマスに素敵なプレゼントをありがとうございました。
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