PSOみんなの広場





気を取りなおして、エリア2へ。
出きるならあのドラ息子が茶だの何だのしている内に終わらせたい。奴が会計を済ませるより早く戻って、「早く終わっちまったんでな」とか何とかカッコいいこと言って、あの喫茶店で一番高額なもんをおごらせてやる。
「っしゃ!」
そうと決まれば善は急げってやつだ。雑魚に構っているヒマなど、チェックルームの待ち時間より無駄ってなもんだ。
わらわらと群がってくる敵を蹴散らし、
ちぎっては投げ、
斬っては捨て、
そして、数分後。
「ミッションコンプリート…」
してないが、つい口に出るその言葉。俺は強行軍での疲れを若干感じながらも、セントラルドームに向かって走り出した。
途中襲ってくる雑魚どもを斬り捨てながら、ロックのかかった扉を抜け、転送装置へ入る。
 
「…遅かったわね」
「!?」
 
カーテンを引き千切って来た様なものを身体に巻きつけ、悪役レスラーの如き仮面を被った、おそらくは女。
「これを取り戻しに来たんでしょう?」
「…どちらさんで?」
「フ…よくぞ聞いてくれました」
そいつは深呼吸すると、一気呵成に喋り出した。
「私の名はアプサラ…」
「ご苦労さん」

超一流の不意打ちだったはずが、そいつは腕組みをしたまま難なくかわし、下がり際にフォイエの置き土産まで残してくれていた。
「何の冗談だ、虚華…?」
「ば、馬鹿な! 私は絶対に高天虚華などではない! ただの通りすがりのアプサラス仮面ですよ?」
今のフォイエでこいつの正体がわかった。
つい数週間ほど前に知り合った、謎の電○系フォマール、高天虚華(Utsuka-Takama たかまうつか)である。
世間様をナメた様な存在であるが、異常な魔力を持っており、初級のテクニックであるなら、何のアクションも無しに発動させる事ができるらしい。
またその細腕のどっからそんな力が出るのかというくらい、肉弾戦も強い。
「やかましい! 何だってこんなところで、そんな格好して、挙句の果てにあのボンボンのヒートソードを…」
ここまで言って、俺ははっとした。
まさかとは思うが…。
「だ、だって、ほら…義賊でありヒールでありシャイボーイでもある私ことアプサラス仮面は、貧しい人は放っておけないし…」
涙腺が思わずゆるんでしまう。
つまりこいつは、貧乏していた俺を助ける為に、ホプキンスをどついてヒートソードを奪い、その奪回の依頼を仕立てあげたというわけだ。
「よ、余計なお世話だぜ…」
「そ、そうかもしれないけど、ほら、私の情報によれば、エグゼ・ヴェルマッハ…アナタ、ガスも水道も止められてて、インスタントラーメンをナマで食べてたりしてるんでしょう? 私の知り合いのタカマウツカって人に頼めば、三食くらい世話してあげられるんだけど、アナタの性格から、それは多分、拒否するんじゃないかって言ってたから…」
畜生、俺はこういった良妻賢母な女にとことん弱いんだ。
「だからまぁ、この様にヒートソードを拝借して…」
ぶばっ。まぁそんな音はしないだろうが、感覚的にはそんなニュアンスで、涙が噴出する。
「もう、もういいよ! 涙が止まらねぇよ…」

その後俺は、どう考えてもおかしな方向に消えていくアプサラス仮面こと高天虚華を見送り、パイオニア2へのゲートを開いた。
「夕日がまぶしいぜ…」
すがすがしい気分だ。
ホプキンスには黙っていよう。なぁに、あいつに罪はない。ちょっとばかり世間って奴が、俺に冷たかっただけさ。
 
今回のおさらい。 
20000メセタ+1280メセタのカレーセット+人情と愛で充足された人=エグゼ・ヴェルマッハ。
リトル甘っちょろい仮面(ちょっといい話好き)=高天虚華。
何も知らず喜んでいるが、かなり私的なダシにされた人=ホプキンス。
 
おわり。

乾 智彦ワールドに、PSOの名優(??)ホプキンスが加わり、今回もとても楽しい作品になっていましたね!
「マントを羽織って、変な仮面をした奴に襲われて…」というセリフを読んだ時点で、「まさか!?」って思ったのですが、やはり期待を裏切る事無くアプサラス仮面が登場…(笑)
パイオニア2一不安な正義のヒーローは今もなお健在のようです!

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