PSOみんなの広場




舞台はEp2の海岸エリアです。個人的にも一番好きなエリアです。
ホームページで過去の作品とかも掲載しています。
良かったらご一読いただけると嬉しいです。

http://www.jay-blue.jp/ 
(ゆこうぇぶ@ぶるねっと) 
 

ガル・ダ・バル島の海岸エリアは、白い砂浜と青い海が広がる美しい場所だった。
だけど、風景に見とれる余裕はなかった。戦闘が激しかったから。
吸い込まれて、砂にしみを作っているのは倒された原生生物の血。
あたしは立ち尽くしていた。戦っているをしているあいだは、何もかもを忘れられる。
頭から足の爪先まで集中していないと、待っているのは死という瞬間。
一人きりで戦っているから、誰も助けてくれる者などいない。
だからこそ、エネミーを殲滅させた後の微妙な間が嫌いだった。早くこの場を立ち去りたかった。
持ち主の思惑に反して、二本の足はこれ以上動くことを拒否していた。
武器を投げ捨て、砂浜に腰を降ろす。時間制限があるわけでもなし、慌てることはないのだけど。

「気に食わないんだよな、なんでお前なんかが特別任務が下るんだか」

野太い声を背後から浴びせられて、座ったまま振り向いた。
金色の髪を垂らして、唇の片方だけを吊り上げている男がいる。首の周りと胸板には頑丈なガード、長銃を片手で軽々と担いでいた。
よく知ってる。ここでは会いたくなかった顔。

「なんであんたが、こんなところにいるのよ……」

意識していないのに、眉が寄って行く。不機嫌になるとき、いつもこの癖が出る。
男は相手の表情などおかまいなしで、白い歯をのぞかせたりするから余計憎らしい。

「ふーん。いつからこのマックス様に口答えするようになったのかな、子豚ちゃん?」

笑いながら髪を手でぐしゃぐしゃにしてくるの、やめて欲しいのに。
頭に乗せられた相手の手を振り払い、そっぽを向いて立ち上がる。
いつも馬鹿にするんだから。
嫌いなら、わざわざ来なきゃいいのに。
お尻の砂をはたいて、無言で歩き出す。

「おい、待てよ。無視かよっ、レリエル!」

背後から浴びせられる非難の声に反応することはしない。
マックスは、いつもあたしが探査しているところに来てお前が気に入らないとか言ってくる。
最後には喧嘩になってしまうんだ。
パイオニア2ラボから、正式に特別区画の探査を命じられたときも散々罵倒された。
お前にできる任務ではない、ラボは人選ミスをおかしたと。
言い返せるように一人で頑張っているのに。
……どうして、分かってくれないんだろう。きっと嫌いだから、理解したくないんだわ。
砂浜を踏みしめる力が強くなっていく。


腐れ縁というか。
ラグオルの地表エリアからだから、長い付き合いだ。
でも友人とかっていう関係ではない。会えば罵りあいと喧嘩ばかり。
一体この人は、何でいつもこっちに来るんだろうと鬱陶しくなることすらある。
攻撃してきた原生生物を殲滅してる間、マックスも持っていた長銃で遠方から攻撃をしていた。
一応協力はしてくれるものだと判断して、先へ歩みを進めていた。
頻繁に声をかけてくるがずっと無視。世間話がしたくて、探査をやってるわけじゃないんだから。

「お前ってさあ、なんで戦ってるわけ?」

いくつめかのエリアを通り過ぎた時、ふと彼が小声で呟いた。
はぁ? 振り返って、にらみつける。

「なんかさあ、ただ惰性で戦ってる気がする」

いつもの嫌味ったらしい言い方ではない。静かな、でもしっかりとした言葉だった。

「何が言いたいんですか。あたしが、ハンターズに合わないとでも?」

「ああ。今のお前はハンターズには向いていないような気がする」

身体ごと彼の方を向いて、顔をこわばらせる。

「あなたに、いちいち評価されたくはない! 何かをするのに、目的とかも目標とか意義だとか。いちいちハンターズやるのに必要なことなの!? 余計なお世話よ」

再び前を向いて歩き出す。腹が立ってきた。
なんで惰性なんて言われなきゃいけないんだ。
走り出す。彼の傍にはいたくない。
あ、おい待て! という声が遠くなっていくが、構うことはない。
気が付けばかなり奥に入り込んでしまっていた。
後ろを見ても、マックスは追いかけてこない。いい気味。
ハニュエールの身軽さをバカにしてるからよ。
立ち止まり、うつむく。
考えたことなんて、なかった。なんで戦ってるか、なんて。
ラボや総督府ら依頼を受けて、ラグオルに降下して。
凶暴化したエネミーと戦闘をして、傷を受けることだってある。
頼まれたからやる。それでいいじゃない。
ハンターズに戦う目的とか意義とか。そんなもの必要なの?
マックスは、それを持っているっていうの? ばかばかしい。
首を軽く振る。長い茶色の髪が、首にまとわりつく。
軽く手で払って、顔を上げる。
歩き出す。一人でも、やっていける。
しばらく歩を進めていると、目の前に端末があった。確か、ラボと通信をするものだ。
早速起動させて、連絡をとる。