PSOみんなの広場






それと同時に、私の視界センサが遮断され、仮想視界空間が展開される・・・筈だったがそこに映し出されたのは、モノクロの映像・・・。
・ ・・母星の風景・・仲間と思しき若い男・・孤高の老戦士の姿・・・次々と映し出されて行く画像はモノクロだったが、次の画像には鮮烈な赤・・・まだ幼い赤髪の少女・・・。
成長過程を見て行くかのように・・次々と画像は流れて行く。
ふと、女性の腕に付けられた赤いリングに目が止まる・・・。
しかし次には再びモノクロの画像が流れ出す。
高位軍官の制服に身を包んだ老人・・・向かい合う様に黒い存在が蠢いている。
悶え・・苦しむ・・侵食され・・支配される。
黒い存在は何処までも追い掛けてくる。

「!!」

ようやく、私のシステムが異常に気付いたらしく、エラ−メッセ−ジを発した。

「上位A.Iからの直接干渉・・・だと・・・。」

視界センサは正常に戻り、再び周囲が映し出される。

「やはり異常だ・・・。」

次の瞬間には私は操られている様に走り出していた。
そして・・・一際目立つ転送装置の先にあったものは・・・。
上にも下にも深淵の闇・・・。
突如、振動が襲う。

『解キ放テ・・淵ヨリ・・・解キ放テ!』

現れた・・・奴が・・・直接干渉をしたA.Iを持つ者が・・・。

「リテルナ!!」

奴の腕と思われる部位には力なくリテルナが横たわっていた。

『来イ・・・』

聴覚センサでは無く、メインフレ−ムに直接干渉する声・・・エラ−メッセ−ジの類は既に発せられる事は無かった。
侵食・・・

「悪いが、時間が無い・・・。」

私は床に置かれた奴の剣状の腕に飛び乗り、駆け上がる様にして奴の肩部に辿り着く。
奴は、見を激しく揮わせ振り落とそうとするが、私は奴にダガ−の刃を食い込ませ抵抗していた。
奴は急に抵抗を止め、下降し始めた・・・。
何時の間にか床は遥か下へ・・、闇を纏っていた。
私は、パルチザンを取り出し、柄の半分ほどまで奴の体に突き立てる。
エレベ−タ−全体に奴の叫びが響き、傷口からは紫色の粘液が溢れ出す。
私は奴の腕に留められているリテルナを引き剥がす・・・
しかし、闇は一向に闇のまま・・・私たちを呑み込んで行く・・・。


闇の奥底は水で満たされていた為、衝撃を受けながらもバラバラにはならずに済んだようだった。
リテルナを近くの瓦礫に寄り掛からせると、私は中央に居る奴に近付く。

『解キ放テ!』

奴の体に突き刺したはずのパルチザンが私に向かって飛んで来た、唐突の事に避け切れず左腕を迷いなく切り落とす。
次の瞬間、奴は脚部を変化させその巨体を立ち上がらせた。

「・・・デルセイバ−!」

私は地下遺跡で発見された亜生命体の名を不意に呟いた。
似ていた・・・細い体のフォルム、動き、剣と一体となった腕。
奴は、再び私のA.Iに干渉し画像を見せる。
先に見た老人と黒い存在・・・。
やがて黒い存在は老人を侵食して行く・・・。
地下遺跡でパイオニア1の兵士の遺体が見つからなかった理由・・・彼らも“老人”同様に侵食されていったのだろう、“黒い存在”によって・・・。
私は奴を見上げた。その瞬間だった、途絶える事無く響いていた重低音がぴたりと止む。
聴覚センサが停止し、侵食は進んでいた。
私は焦りを覚え、床に突き刺さったパルチザンを抜く。
上半分は紫の粘液に覆われていた。
奴の動きは遅い物だったが、周辺のいつの間にか現れた生命体が障害となり、奴に近付くには困難を要した。
ようやく奴の足元まで来た時。

「!!」

今までに無い、異常なまでのフォトン濃度を感知した。
そしてそれは・・・降って・・来た。
天空・・・否、遥か上に広がる闇から光の帯となって、私の体を貫いた。


私はその光で目を覚ました。
部屋には水蒸気が満ち、視界は暫くの間遮られていた。
水蒸気が晴れると、そこには一人の人影があった。

「エクセルさん!」

私は人影に向かって駆けて行った。
・ ・・しかし、そこにいたのはアンドロイドではなく白髪の老人だった。
見慣れないハンタ−ス−ツの胸元にはホワイティルのID。
右手は、床に突き刺さった黒い大剣に置かれ、左手にはフォトンの拡大しているパルチザンが握られていた。
そして、老人の足元には一体のアンドロイドが横たわっている。

「エクセルさんっ!」

私の声に気付いた老人は、私を見詰めパルチザンを床に放り投げ近付いてきた。

『リコ・・・』

老人は焦点の定まらない目で私を見ている。恐らく“赤”を見ているのだろう。
彼はそれだけ呟き、私を抱き寄せ、光となって消えて行ってしまった。
私の手には、半透明に輝くフォトンの結晶が握らされていた。


「あらぁ・・なかなか似合うじゃない、そのボディも。」

フロスティアは半分笑みを浮かべながら、前に立つレイキャシ−ルに言った。

「・・・・。」

レイキャシ−ルは、顔を背ける様にフロスティアを見ようとしない。

「とっても、似合ってますよ、エクセルさん。」

リテルナは、私の周りを回りながらそう言った。

「ま・・修理が終わるまで我慢する事ね〜。」

と、言いつつフロスティアは別の作業に取り掛かってしまう。
今回の件で、ラボ内は忙しなく人が動き回るようになっていた。
施設内の端末から引き出した情報の解析、私のボディとリテルナのハンタ−ス−ツに付着した数々の痕跡、リテルナが手にしていたフォトンの結晶・・・。
数々のことが今回の件で明らかになるようだった。
私のボディの修理はかなり後の事になりそうだ・・・。

「まぁ、いい。これ以上の厄介事は願い下げだ。」

「はい!」

リテルナは訳も無く返事をし、私に笑顔を見せた。
A.Iとしてではなく、私という機械仕掛けの心に・・・

機械仕掛けの心・・・FIN
 

オリジナルのストーリーに本編後半の内容が上手に取り入れられ、とても緊張感をもって読み進める事ができました。
リスティアを捨て身で助けようとするエクセルの行動には、単に”依頼を受けたから”という理由以上のものを感じずにはいられません。
機械仕掛けの体。たとえそれが人によって作られたものでものであっても、宿った心は本物であったという事でしょう!

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