どれほど時間が経ったのだろうか。10分、いや20分だろうか。SHINOが不意に口を開く。
「Yukaさん、CHEIKOさん、Mistさん、ありがとうございました。私はここに残ろうかと思います。」
「本来であればマスターであるゾークの命令に従うべきなのでしょうが・・・。不思議とゾークの元へ残るのが私の義務であるように思えてくるのです。」
「ギルドにはこのカタナを見せて下さい。依頼完了の証として。」
そう言ってSHINOはゾークの愛刀をYukaに手渡す。
「Yukaさん、CHEIKOさん、Mistさん、本当にありがとうございました。」
「ゾーク、お側に・・・。」
そう言ってSHINOはそっと目を閉じる。
「SHINOさん!」
YukaがSHINOに向かって叫んだ時には既に遅かった。
自らシステムを停止し、スリープモードへと移行した後だった。
「SHINOさん!!」
何度もそう叫ぶYukaの肩をCHEIKOは叩き、パイオニア2へと向かうテレパイプへと彼を連れて行った。
「はぁ・・・。」
パイオニア2に戻ってきたYukaはため息ばかりをついていた。
「ため息ばかりついてどうしたんだ?」
「依頼・・・失敗しました・・・。」
「何を言ってるんだ?SHINOさんは死んだ訳じゃないぞ?自分から残るって言ったんだ。それにこのカタナ。何でお前に預けたんだ?無事にゾークを見つけた、それで依頼が完了したと判断したからこそお前に渡してくれたんだぞ?」
CHEIKOはYukaにそう言って諭す。
「でも・・・。」
「でももくそもねぇよ!成功した証拠がここにある以上、お前は胸を張ってギルドに報告すりゃいい。それで何の文句があるって言うんだ?」
「はい・・・。分かりました・・・。」
仕方なく返事をしてYukaはギルドへと歩き出す。
その途中、カメラからフィルムを取り出す音が聞こえる。
「あっ!」
YukaはMistの行動に驚く。
撮りかけのはずのフィルムをカメラから取りだしていたのだ。
「SHINOさんのあんなけなげな姿見てたら、なんだかスクープだって騒ぐのが気が引けちゃうよ・・・。私も同じ立場に立ったとしたら、あんな事出来ないかも知れないし・・・。せめて私たちの心の中だけに留めておこうよ。」
そう言ってMistは近くにあったゴミ箱に撮り終わったフィルムとともにそのフィルムも投げ捨てた。
「さっ、元気出して報告しに行こうよ☆ね?」
Mistは精一杯の笑顔を浮かべ、Yukaに促す。
「はい。」
「お帰り〜。依頼、どうだった?」
「成功しました。」
「そう、良かったわね。・・・あれ?依頼人の方の姿が見えないけど・・・。どうしたの?」
そう尋ねるalulun.にYukaは預かった刀を差し出し、事の顛末を話す。
「・・・・・・そうだったの。」
一通り話を聞いたalulun.は納得する。
「・・・あら?依頼人からYuka君宛にBEEシステムでメールが届いてるわ。今転送するから確認して。」
依頼完了の処理をしている途中、alulun.が気づき、Yukaにそう告げる。
YukaはBEEシステムの端末を取りだし、SHINOさんのメールを確認した。
Yukaさんへ
依頼を引き受けて下さり、ありがとうございました。
無事にゾークを見つける事が出来ましたし、感謝しております。
本来ならばそちらに戻ってお礼を言うべきなのですが、あちらでもお話ししたとおり、私はゾークの元へと残ります。
出来る事ならばあなたのような心優しき方の元へ今一度仕える事がゾークに対する供養になるのかも知れませんが・・・。
あなたが立派なハンターズの一員になる事を願っております。
それでは。SHINOより
メールを読み終わってYukaはふぅとため息をつく。
「なんて書いてあったんだ?」
CHEIKOはYukaに尋ねる。
「お礼のメールでした。」
「そうか。律儀な人だったな。」
「えぇ。」
「さて、報酬は?いくらなんだ?」
「もう・・・。現実に引き戻すような事言わないで下さいよ。とりあえず5000メセタでした。」
「そうか。それじゃお前のおごりで何か食べに行くか!」
「賛成〜☆私はおスシがいいなぁ♪」
「おっ!いいねぇ!んじゃ特上のスシできまりだな!」
「えぇっ!?勝手に決めないで下さいよぉ〜!」
「いいじゃねぇか。何ならalulun.も行くか?」
「いいわね。どうせ引き継ぎの時間だし、ちょっと待ってて。」
「alulun.さんも来るんですか!?メセタ大丈夫かな・・・。」
「何よ?文句ある?」
「いえ、ありません・・・。」
すごんでくるalulun.にYukaは恐怖を感じて、あっさりと引き下がる。
今日もこうやって民間の依頼は彼らハンターズの手で解決される。
父の背中を追いかけて、Yukaは今日も依頼をこなす。
Fin |