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「ゾークを探して欲しい・・・。」
この一言から始まった淡く切ない恋物語。
オフラインクエスト「ハンターの右腕」をオンラインクエスト風に仕立てた作品です。(Yuka)

「ひどい目にあわれてしまいましたね。二度とこんな事のないよう、頑張ってくださいね。」

看護婦のお決まりの文句を聞くとヒューマーのYukaは病院の出口に向かっていた。

「いてて・・・。師匠も無茶言うよなぁ。20000メセタの依頼なんてこなせるわけないのにさぁ・・・。」

ここは宇宙船 パイオニア2の船上。
地球が人間の住む事の出来ないくらい劣悪な環境となり、その状況を見かねて地球政府は宇宙上に移住可能な星がないか、探索隊を派遣していた。
その中で惑星 ラグオルが地球とほぼ同じ環境だったため、移住を決定した。
この計画が「パイオニア計画」と呼ばれる。
第1陣として派遣されたパイオニア1は無事にラグオルで安定した生活を開始する。
その2陣として派遣されたパイオニア2もラグオルの上空へと無事に到着したのだが、パイオニア1との通信回線を開き接続を完了したとたん、ラグオルの地表で謎の大爆発が発生。
パイオニア1との通信は途絶えた。
一体ラグオルの地上で何が起きたのか、その原因を探るべく結成されたのがYukaらが所属するハンターズの面々だ。
軍とは違い、民間の依頼も彼らに任せられる。
その依頼をYukaは受け、どうやら失敗してしまったようだ。

「はぁ・・・。こんなんじゃだめだな。新しい依頼を引き受けてくるかな。」

そうつぶやくと病院と隣接しているハンターズギルドへとYukaは足を向ける。

「あ、お帰りなさい。その顔じゃ依頼は失敗したみたいね。」

「当然ですよ、20000メセタの依頼なんて・・・。師匠も無茶だって分かっていたはずですよ!」

怒り気味にギルドの受付にいるalulun.にYukaは言う。

「旦那なりのあなたへの愛情よ。あまり怒らないであげて。」

「分かってますけど・・・。」

そういうとYukaは口ごもる。

「そんな事よりもっと楽な依頼ないですか?自分のためにももう少し頑張りたいし。」

「ちょっと待って。今調べるから。」

そういうとalulun.は端末を操作する。

「・・・これなんかどうかしら?5000メセタとちょっと高めだけど、あなたならやれると思うわよ。」

彼女がYukaに端末を見せる。

「人捜しか・・・。初めてだけど頑張って挑戦してみるかな。じゃあ依頼を引き受けます。依頼人に連絡を入れてもらえますか?」

「分かりました。しばらくお待ち下さい♪」

急に嬉しそうな表情をしてalulun.はYukaに言う。

「どんな内容かな・・・。細かい事は書いてなかったけど、自分でもやれるよね。」

自問自答するようにYukaはそうつぶやく。
程なくして一人のレイキャシールがギルドの中へと入ってくる。
周囲を気にしていかにも人を捜すようなそぶりだ。ようやくYukaを見つけ、そのレイキャシールは彼の元へと駆け寄ってくる。

「あなたがYukaさんですか?」

「はい。そうですが。」

「お名前を聞いたときには失礼ですけど、女性の方だと思っておりました。」

「よく言われるんですよ。もう慣れましたけどね。」

そういってYukaは苦笑する。
そのレイキャシールは軽く咳払いをし、改めてYukaの前に立ち直す。

「今回は依頼を引き受けてくださいましてありがとうございました。私SHINOと申します。」

そういってSHINOは深々と頭を下げる。

「依頼の内容ですが、私のマスターでもあるゾーク・ミヤマを探して欲しいのです。」

「ゾークは先日遺跡に探索に行くと言って出かけたのでございます。その際、私もお供させてください、とお願いしたのですが、ゾークは『着いて来てはならぬ。私が帰ってくるまでここで待っているように。』と私に言い残してラグオルへと出発したのです。」

「しかし、彼がそう言い残して既に1週間。未だに彼からの連絡がないのです。」

話を聞きながらYukaは不思議そうな顔をしていた。
当然である。昔ならいざ知らず、現在ではアンドロイドは完全自立型が主流となっているからだ。
彼女もそのことに気づき、依頼の説明をやめ自分自身の事を話す。

「不思議に思われるのも当然ですね。私は外見こそ新型ですが、中身はかなり旧世代のアンドロイド。ミヤマ家には3代前からお仕えしていた事になります。」

その説明を聞き、Yukaもようやく納得した。
SHINOもその表情を見てまた依頼の説明を始める。

「それはそうと、彼からこれだけ長い期間連絡がなかったのは今までございません。何か事故にでも巻き込まれたのではないかと胸騒ぎがしてなりません。是非私と一緒にラグオルへと降りて探していただけないでしょうか?」

彼女の不安げな表情を見てYukaも断る理由は見あたらなかった。

「ええ。もちろん引き受けさせてもらいますよ。安心してください。」
自信げにYukaはSHINOへと告げる。
その言葉を聞き、SHINOは明るい表情を見せる。

「ありがとうございます。では早速・・・」

「いえ、すいません。準備を整えてから出発という事でよろしいですか?」

Yukaは申し訳なさそうにSHINOにそう告げる。無理もない。洞窟での依頼だったため、それに合わせた装備しかしていなかったのだ。

「ええ。構いませんわ。ここでお待ちしておけばよろしいでしょうか。」

「はい。すぐ準備してきますから。」

そう告げてYukaはチェックルームへと向かう。
チェックルームに到着すると必要な武器、防具を引き出す。すると不意に後ろから声をかけられる。

「おう。Yuka、さっきの依頼はどうだった?」

あごひげを蓄えた男性のハンター、CHEIKOが声をかける。

「あ、師匠!あんな依頼無茶ですよ!分かってて僕に任せたんでしょ!おかげで怪我して依頼失敗ですよ!どうしてくれるんですか!?」

「まぁまぁ、そう怒るなって。今の様子を見ると新しい依頼を引き受けてきたみたいだな。今度はどんな内容だ?」

「今回は人捜しです。何でもゾークって言う人を遺跡で捜して欲しいらしいんですけど。」

「何だって!?ゾークを探して欲しいだと!?」

そういってCHEIKOは驚いた。
豪刀 ゾーク。ゾーク・ミヤマのまたの名だ。
フォトンを応用した武器が主流となっている現在、カタナなどと言ったアンティークな武器を主力にするものは少ない。
ましてやそれでラグオルの原生生物と渡り合う事など、愚の骨頂と周りから笑われてもおかしくない。
しかしゾークは3本のカタナでラグオルの原生生物と渡り合い、一気にその名前を上げていった。
もちろんハンターズの中でその名前を知らないものはモグリと言われてもおかしくない。
しかしYukaはまだハンターズに入って1年ほどしか経っていないため、彼の名をまだ知らなかったのだ。
CHEIKOはその話を聞いてYukaに言った。

「ちょっと待ってろ。」

そういってチェックルームから1丁の銃を引き出した。
Yukaにも見覚えがある。父が愛用していたヴァリスタだ。
彼の父もまたハンターズでは有名な人間だった。普通ハンターは長剣系の武器の扱いを得意とするのだが、彼は短銃系の扱いを得意としていた。
「短銃使いのKenzi」として名前の上がっていた彼の父だったの
だが、ラグオルの探索中に原生生物との戦闘中に深手を負ってしまい、殉職してしまった。
その際、仲の良かったCHEIKOにKenziがそのヴァリスタを預けていたのだ。
『Yukaがハンターズの一員になった暁にこれを渡してくれ。父の後を追ってこい。父と変わらない立派なハンターズの一員になれるように。』と遺言を残して。

「おまえの親父さんから預かっていたもんだ。遺跡に行くならこれぐらいの武器がないと渡り合えないだろうからな。」

そういってCHEIKOはYukaに手渡す。
Yukaも手渡され、父の思いをしっかり受け取ったのだろう。今までの表情とは全く変わり、引き締まった表情へと変わる。

「師匠、ありがとうございます。今度の依頼は絶対成功させて見せますよ!」

「それでも心配だからな。俺もついて行っていいか?」

「え、でも依頼人に一応話を通さないと・・・。私は構いませんけど。」

「よし、それじゃ決まりだ。ちょっと待ってろ、すぐ準備をすませるから。」

そういってCHEIKOはチェックルームから必要なアイテムをすばやく引き出す。

「待たせたな。それじゃ行くか。」

「はい!」

2人はギルドの方向へと歩き出す。
ギルドへ入ろうとしたとき、入り口のそばで待っていたフォニュエール Mistが声をかける。

「お〜い!Yukaちゃ〜ん!なんかニュースとかないかな?」

「その『Yukaちゃん』って呼び方やめてもらえますか?恥ずかしいし・・・。」

「にゃはは☆気にしない気にしない♪」

「Mistさんが気にしなくても僕は気にするんですよ。」

「ごめんごめん。ところでなんかニュースとかないかな?」

「ニュースかぁ・・・。今からゾークって言う人を探しに行くぐらいかなぁ・・・。」

「え!?ゾークを探しに行くの!?」

MistもCHEIKOと同様に驚いた。CHEIKOとほぼ同時期にハンターズに入隊した人間だからだ。元々はパイオニア2でも名前の売れたフリーカメラマンだったのだが、もっとスクープを入手するにはこうするしかないと思い、ハンターズに入隊した。
もちろんゾークの名前は知っているし、おまけにあのゾークを探しに行くなんてスクープ中のスクープだからだ。
そう聞いたMistの目がランランと輝いてくる。

「ね、Yukaちゃん。私もついて行ってもいい?」

「だめって言ったってついてきますよね?」

Yukaはあきれ顔でMistに言う。

「一応依頼人に話を通さないと分かりませんから。それからでいいですか?」

「うんっ!ありがとう☆」

Mistはそれを聞いて喜ぶ。

「それじゃ今から依頼人のところに行きましょう。」
そういってギルドの中へ3人は足を踏み入れる。

「すいません。お待たせしました。」
YukaはSHINOの前に申し訳なさそうに立つ。

「・・・そのお二人は?」

Yukaについてきた二人を見てSHINOが尋ねる。

「あ、こちらのハンターが私の師匠でもあるCHEIKOさん、こちらのフォニュエールがハンターズ仲間のMistさんです。」

「2人とも是非ゾークさん探しに協力したいそうなんですよ。一緒について行ってもらっても構いませんか?」

Yukaは少々心配そうにSHINOに尋ねる。

「えぇ。構いませんわ。一人でも多くの方に協力していただけるのなら私としてもありがたい限りですから。」

SHINOはそう答える。

「それでは早速お願いできますか?」

「はい。それでは行きましょうか。」

4人はラグオルへの転送装置前へと向かう。
「手がかりとか何かゾークさんを発見する手だてはあるのですか?」

Yukaは疑問に思い、SHINOへと尋ねる。
「えぇ。彼の愛刀には万が一の事を考えて発信器が取り付けてあります。一定の距離に近づかないと反応しませんが、闇雲に探すよりはまだよろしいかと思いますわ。」

SHINOはYukaに説明する。

「それでは遺跡へと参りましょうか。」

「分かりました。」

そういって転送装置へと入る。