PSOみんなの広場





「また探し物依頼かよ・・・」

俺は愚痴をこぼしながら依頼にあったアンドロイドを探していた。
ここはラグオルの地表、モンスターと呼んでも不自然でないぐらい凶暴化した動物が闊歩し、多くの人々が突然行方不明になってしまった大地、最近ではドラゴンの目撃報告すらもあり、今は誰がそいつを一番に倒すかがギルドでのもっぱらの話題になっている。

「ま、探し物ぐらいが俺にはお似合いなんだろうけどな」

そう、駆け出しハンターの俺にとっては、ドラゴン退治なんて手の余る仕事なのだ。


「ウグァァ!」

(くそ、モンスターかっ)
セイバーを握る手に力を込め、土の中から出てきたモグラのようなモンスターを正面に見据える。

「ウグァァ!」

(なに!?)

モンスターは一匹ではなかった。
もう一匹のモグラが足元から爪を突き立ててきた

(あっちは囮か)

あわてて俺は足元のモグラの頭へセイバーをつきたてる。
濃縮され刃と化した赤いフォトンは吸い込まれるようにモグラの頭へ突き刺さる。
モグラはその一撃で絶命したようだった。

(さすがにすごいな・・・)

切れ味に驚いている暇もなく、今度は囮が襲い掛かってきた。
体制を整えようとするが、俺の脚をモグラの死体が離そうとはしなかった。

(くそ、こいつ、死んでもじゃまをっ)

「シャァァ!」

(くっ)

囮モグラが振りかざした爪を、俺はどうにかシールドで受け止めることができた。
怪力なはずのモグラの腕だがシールドはそれをしっかり受けとめている。

「くそぉぉっ」

俺は右手でどうにか死体からセイバーを引き抜き、そして囮モグラの腹へそれをねじ込んだ。


「はぁ・・・はぁ・・・まったく・・・」

一息ついた俺は手に持ったセイバーを見つめた。
濃縮され刃と化したフォトンが静かに光っている。

「さすがにすごいもんだな・・・この剣」

剣の名はカラドボルグと、鑑定屋の親父は言っていた。
伝説といっても差し支えないぐらい、強力な剣だという。
今のが並みのセイバーだったのならモグラを一撃で倒すことなどできなかっただろう。
この初戦の勝利が自分の力では無く、武器によるものだということ
それを実感するたびに、俺は自分が半人前であることを思い知らされた。


「ま、いいさ、そのうちお前たちを使いこなせるようになってやるさ」

俺は背中に居るもう一人の相棒、マグに聞えるようにいった。
半人前の俺がこのセイバーを使いこなせている理由、それが背中のマグだった。
ヴァラーハというこのマグは装着者の力を著しく高めてくれた。
このマグのおかげで俺はベテランで無ければ扱えないようなこのセイバーを扱うことができた。
だが、このマグの助けを借りなくてもカラドボルグを扱いこなせるようになったとき、そのときがこのマグたちの主人になれる時なのだろう。

(そしてもう一本の剣もいつか使いこなしてみせる)

休憩を取り息を整えた俺は、目的のアンドロイドを探すために、再び森の捜索を再開した。


しばらくして目撃情報と一致したアンドロイドを見つけることができた。
途中、何度かモンスターとの戦闘はあったが、戦闘に慣れたのか、初戦と比べるとあっけないくらい簡単に勝負はついた。


「あれ・・・やっぱりあのこがいない・・・」

アンドロイドは何かを探しているようだった。
俺は近づいて声をかけてみることにした

「わ、びっくりしましたぁ・・・」

夢中で探していたのだろう、声をかけるまで俺のことはまったく気がついていなかったらしかった。
アンドロイドのセンサーならすぐに発見できそうだが・・・
どうやら少し変わり者のアンドロイドらしかった

「あの・・・すみません、どこかでマグを見かけませんでしたか?」

「ああ、今アンドロイドに奪われたって言うマグを捜索に来たところなんだ」

俺の言葉を理解したのだろう。
平謝りに謝るアンドロイド、どうやら悪気があっての事ではなさそうだった。
俺は自分の名を名乗り、アンドロイドから事情を聴くことにした。


彼女はエルノア・カミュエル、どうやらマグがエルノアと一緒になったのは意気投合したためらしい、しかし、マグたちは結局、元の主人の所へ帰るとエルノアの元からも離れていった。事情はそんなところのようだった。
ただ一体だけ、エルノアと一緒に居ると言ったマグもいたようだが、そのマグも今、エルノアの前から姿を消してしまったらしい、
俺はそのマグをエルノアとともに探すことにした。

「あの・・・マグを勝手に放しちゃって・・・怒っています?」

道を歩いている途中、不意にエルノアがたずねてきた。

「いや・・・そのときは依頼主へは見つからなかったと報告するだけだしね」

聞いたとたんに謝り出すエルノアに軽く笑いかけながら俺は答えた。
別にエルノア思ってのことじゃない、ギルドで情報を集めていたときから思っていたことだが、マグを金儲けの対象としか見ていない依頼主の考えには正直、気分の悪くなるものがある。
依頼内容を直に聞くまでマグを拾ってくるという内容すら知らされていなかった。
おそらく、それを知っていたら引き受けなかっただろう。
そんな俺の考えを感じたのか、エルノアは少しほっとしたようだった。

「あまり気がつかないかもしれないですけど、マグにもちゃんと心があるんです」

「ハンターが装備したとき、マグはちゃあんとその人をマスターとして認識するんですよぅ」

歩きながらもエルノアはそう話し続けた。
俺は黙って聞き続けた。

(だとしたら、こいつの今のマスターはだれなんだろうな?)

俺は後ろにいるマグをを思った。
こいつの前のマスターと比べれば、俺は本当に頼りないひよっ子だろう。