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こんにちは、KEIKというキャラで活動している者です。
前作の頃に書いたクエスト用ショートストーリーですが、よろしかったら読んでみてください。

「依頼主の名前なし、依頼内容不明、資格Sランクハンター、報奨2万メセタか・・」

「どうなさいます?」
目の前の女性が職業的に微笑む。

どうしても金が入り用になった私は、ギルドカウンターを訪れていた。必要な2万メセタで検索してもらった結果がこの依頼である。

「しかし、これではさっぱりわからん。やばい仕事ではないか?」

表情を崩さないまま、彼女が答える。
「どうでしょう?。依頼をお受けになった際にお渡しする、ブリーフィングシートには詳しいことが書かれていると思います。私たちにはブリーフィングシートを閲覧する権限がないのです。それはご存じでしょう?」

まぁもっともだ。どのみち私には選択の余地はない。今は金がいる。

「わかった、この仕事を請けることにする」

「ありがとうございます。こちらがブリーフィングシートになります。それから・・」

女性が契約条項を説明するのを聞き流しながら、ブリーフィングシートに目を通す。

依頼主:デ・ロル・レ
依頼内容:依頼主が直接説明します。

・・・・何かの冗談か?洞窟の化物が何の用だ?

「おいおい、これじゃあ・・」
「お客様!」ぴしゃりとやられる。
「仕事をお受けになったからには、お客様には守秘義務が生じます。ギルド事務員の私といえども、仕事内容に関して一切漏らしてはいけません。あぁ、依頼主の方がお見えになったそうです。私の仕事はここまでとなります」

いちいちごもっともな事だ。ため息をつきながら、私は立ち上がった。
「わかった。ありがとう」

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「あなたが依頼を受けたハンター? アンドロイドなんだ。ふぅん」
目の前にいるのが依頼主だ。まだ少女。でっぷりと太って、肌は不自然に焼けている。
目の周りに白い隈取りのようなメイクをしている。服の色はピンクでポンポンのついた
帽子をかぶっている。なんというか、なんとも形容しがたい。ぴったりの言葉をデータベースで検索する。「ガングロ、山姥メイク」なんじゃこれは?

「なに、ぼーっとしてんの? 私がデ・ロル・レ。あなたの依頼主よ」

「その名前、なんとかならんか? 偽名にしても、もっとましなのがあるだろう」

少女の眉が、きっとつりあがる。

「私の名前はデ・ロル・レッ! 本名っ!!」

絶句する私をにらみつけている。しばらくしてあきらめたようなため息をついて話し始めた。

「アントニオ・Sってハンター知ってる?」
聞いたことがある。確か初めてデ・ロル・レに遭遇したパーティーのメンバーだ。
そのパーティがあの洞窟の化け物を命名した・・。
「あいつ、幼なじみなのよ。初めてその化け物にあったとき、なぜか私の名前をつぶやいたらしい。で、今ではその化け物の通り名は、私と同じ名前ってわけ」

なぜつぶやいたかは、なんとなく想像できる。

「私はBランクフォースだから、その化け物を見たことがない。とにかくどんな奴か見たいのよ。それが依頼の半分。そいつを見てから後の半分は話すことにする。
オーケー?」

ハンターズはSからCにランクつけされている。もちろん公式の物ではない。
森の探索がやっとのものはCランク。私の様に遺跡の探索まで出来る者はSランクだ。
この少女は、洞窟の探索がやっとのようだ。あいつを見せれば納得すると言うわけだ。

「オーケー、じゃあ行こうか」

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見た目はともかく、少女はBランクフォースということでもあり、洞窟の探索はそれほど苦労しない。しかし、本当にあの化け物を見せていいものだろうか?

「ちょっとー。こいつウザイ。何とかして!!」
見るとパンアームズが出現していた。合体中は強固な防御力をほこる。こいつはしばらく放っておくに限るのだが、少女は戦闘杖で殴りつけていた。ダメージを与えられないので、パニックになっている。

「あぁ、初めて見たのか。そいつはパンアームズ。その状態だと鉄壁の防御力だ。しばらくほっとけば、二体に分離して防御力が落ちる。ちょっと下がってろ」
顔は黒いが、耳まで真っ赤になってるのがわかる。
「うっさい。ぼぅーっとしてないで、報酬の分は働けぇー」

こんな調子だ。とにかく地下水道の入口は目星をつけてある。余計なことは考えずに、早めに見せてさっさと帰ろう。その角を曲がれば、地下水道の入り口だ。

「きたぞ、ここを入れば奴を拝める」
少女がうなずく。心なしか緊張しているようだ。
「いくぞ」
テレポーターが起動する。何回転送されても、この瞬間はいやなものだ。体がきしむ。
目の前を光の渦が駆け抜けていく。途切れそうになる意識を必死でつなぎ止める。
 光が消えた。目の焦点を合わせる。奴はどこだ?

 いた!

咆哮を上げて、身をくねらせる。全長20m超の化け物。こいつがデ・ロル・レだ。
「こいつがそうだ。満足したか?」
振り返ると、少女の肩が震えている。

「こんなもんに・・、こんなもんに、私の名前をおぉー」

こちらがたじろぐほどの激怒。それはそうだろう。私もこんなものに自分の名前がついたら嫌だ。
とにかく、顔を拝ませてくれてありがとう、帰りますと言っても、こいつは聞いちゃあくれない。倒さないと。私は身を翻して切りかかった。
少女は狂ったようにラフォイエを連発している。気のせいだろうか、威力が高い。

かなりてこずったが、なんとかデ・ロル・レは撃退できた。私は装備品をひとしきりチェックして、少女に声をかけた。
「さぁ、帰るか」

「あと半分あるよ。依頼」
少女の怒りは静かで深いものに変わったようだ。ここはおとなしくしていた方が得策だ。
「聞こうか」