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はじめまして! PSO関連の小説を書きました。ぜひご一読ください。 (かになべ)

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テレポーターから降り立つと、熱風が二人をあぶった。溶岩の赤い光で照らされる洞窟の中には、おびただしい数のモンスターの死骸があった。

「よく一人でここまでやれたわね」

 サトミが半ばあきれながら言った。

「ちょっと、たいへんだった・・・」

 テレ隠しにほほをかきながら答える

 死骸の山をたどりながら、洞窟の奥へと進んでいく。やがて見覚えのある、真っ二つになったナノノドラゴを発見した。

「あそこの岩肌に穴があいているのが見える?」

溶岩の河で隔たれた向こう岸を指差しながらサトミに問い掛ける。ホタルの指さすその先には、壁面に大きな亀裂が走ったところがあった。

「あそこから光が漏れているでしょう? あそこに行こうとしたところでサトミに助けられたの」

 サトミが目を凝らしてみると、確かに亀裂の向こうから青白い光が漏れていた。明らかに人工の光であった。

「迂回していくしかなさそうね」

 二人の目の前にまたがる溶岩の河を見つめながらつぶやいた。おおよその見当をつけて迂回を始める。

 隣の空洞に繋がる細長い通路を進んでいると、モンスターのうめき声が聞こえた。サトミはハンドガンのセーフティーを解除し、ホタルもソードを正眼に構える。

 その時。

 ドクンッ! と、ホタルの心臓がひとつ大きく拍動した。思わず手で胸を押さえ、その場にうずくまる。

「どうしたの!?」

 驚いたサトミが駆け寄ってきた。

「ナイトメアの言って負荷って・・・これね・・・」

 絞り出すような声で答えた。寄生防具が興奮しているのだということを、直感的に理解する。しかし拍動が収まると、急に意識が鮮明になった。全身に力が入る。

「大丈夫みたい・・・。行きましょ!」

 気合を入れてモンスターの群れに斬り込む。


 全滅したモンスターの死骸から戦利品をあさりつつ、ひとつため息をつくと、ホタルは心臓が普通の状態の戻っていることに気がついた。身体の調子もいつもどおりの戻ってしまっている。

「・・・。元に戻っちゃった・・・。戦闘中だけなのかなぁ・・・。強烈は鼓動も定期的みたい・・・」

 見つけたセイバーをチェックしながらつぶやいた。

「あ、きっとあれじゃない? アドレナリンがどうとかってやつ」

「便利なんだか、不便なんだかわかんないね」

 そんなお喋りをしながら、さらに奥へとむかった。

 その後、どうにか亀裂の前にたどり着くことができた。方向音痴の二人がさんざん道に迷ったことは、割愛する。

 亀裂は人ひとりが通れるぐらいのもので、そこから冷たい風が引き出していた。

 亀裂の向こう側はやはり人口のトンネルで巨大な下水道だった。かなり大規模な水道で、対岸までの幅は十メートルを超えていた。天井までの高さも十分あり、水面から少なく見ても五メートル以上あった。

「大きい・・・」

 ホタルが呆然とつぶやく。

「パイオニア1の下水処理施設かな?」

「いずれにしても変なところに出ちゃったわね・・・」

 サトミがあたりを見渡しながら言う。水面を見ていると、わずかにだが、確かに動いていた。水が流れている。

「ホタル、この流れをさかのぼってみましょう。何かわかるかもしれないわ」

「何かって?」

 ホタルは真顔で問い返した。それにサトミはため息で応じる。

「あのねホタルちゃん。私達はどうしてラグオルにいるんだっけ?」

「あ・・・。連絡の取れなくなったパイオニア1の、調査と救助の為だっけ・・・」

「しっかりしてよ、もう・・・」

 サトミの突っ込みにエヘヘと笑う。

「じゃ、行きましょうか!」

 ことさら大きな声でいい、ホタルは先に歩いていった。その後をサトミはこめかみに指を当てながらついてゆく。


 しばらく下水道を歩いていると、小さな建物だ見えてきた。プレハブのような建物で、見た感じでは長期間生活するための物ではなさそうだった。

「観測所かしら」

「どうする? 調べるの?」

 サトミの言葉にホタルが問う。

「もちろん」

 即答し、建物に近づいた。ドアの前に立ち、コンコンとノックするが、当然返事はない。

「誰もいないみたいね」

「誰かいたら逆に怖いって」

 ホタルが返しながらドアノブを回した。静かな水道にガチャガチャという音が響いた。

「カギがかかってるか・・・」

「どいて、ホタル」

 と、すでにサトミはハンドガンを抜いていた。

バシュ! バシュ! バシュッ!
と、乾いた音がして、ドアノブがごろりと床に落ちた。

「あぶないなぁ!」

 ホタルの非難の声を無視してサトミはドアを押し開けた。

「ワタシは外を見るねー」

 一声かけてホタルは観測所の裏手に回った。

 プレハブの中はトンネル内と同様に静まり返っていた。いくつかあるコンピューター端末のスイッチを入れてみたが、いずれも反応はなかった。エネルギー供給がたたれているらしい。

 室内を調べるうちに、床にあいたいくつかの穴を発見した。そこから下をのぞいて見ると、水の流れが見て取れた。

「サンプル採取用の穴?」

 にしては乱雑にあけたような穴だった。

「んー、なんだろ・・・」

 と、つぶやいたとき、その穴から見た水面に一瞬、影がよぎった。

「!!」

 もう一度目を凝らしてみるが、すでにそこにはなにもなかった。

「?」

サトミが首をかしげていると、外からホタルの声がした。

「サトミー、船があったよー!」

 ホタルの見つけた船は割と大型のものだった。観測以外に、物資の輸送用いていたのだろう。かなりシンプルなつくりで甲板上が長方形で平らになっていた。ミニサイズのタンカーといった趣である。

「これで行こ! 歩くより早いし」

 早くも船に乗ったホタルが言ってきた。

「それはいいけど・・・、運転できるの?」

「大丈夫みたい。オートよ、これ」

 ホタルがコントロールパネルを操作すると、ミニタンカーは静かに始動しはじめた。バッテリーに蓄えがあったらしい。

「オッケー、いきましょ」

 二人を乗せたミニタンカーはゆっくり岸を離れ、水道上を進み始めた。

「それで、この船はどこに向かっているの?」

「さぁ?」

 ホタルから思ったとおりの言葉が返ってきた。ため息をつきながらミニタンカーの起こす波を見つめた。