音楽対談 後編

2003/11/5

お待たせしました、音楽対談・後編となります。
引き続きディレクター小川とウェーブマスター床井氏の対談の様子をたっぷりとお楽しみください。いったいどんなお話が飛び出すのでしょう…?

前回より引き続き特製CDのお話となります。
 

手前・床井氏(WAVE MASTER)、奥・小川(SONIC TEAM)
 
■ユーザーの代表、小川の選曲■      
小川: ラウムの神殿をラストに入れることでアンガス・ラピスからの4曲目、5曲目、6曲目の繋がりが良くなりましたけど、ほんとに何回も聴きましたよ。何度EP2のEDとかEP1のEDとか収録止めようと思ったことか。
 
床井: 思いました?(笑)
 
小川: 後ろの3曲のパワーがやっぱり大きかったんで、僕が入れろと言っといて「いや〜、やめよう…」って何度も(笑)。
 
床井: この3曲、クオリティー高いですからね。 今回、こういう形で入れてもらって本当に嬉しく思ってるんですよ。なかなか日の目を見ませんからね、音楽というのは。
 
小川: ニンテンドードリームさんも100号記念ですからね。入れてもらうと決まった瞬間からもう出し惜しみせずに、僕は行こうと。
 
床井: すごいですよね〜。出し惜しみ感無いですよね。
 
小川: 無いです、全力投球ですね。
これ、街で見かけたら買いますもん。ソフトもそうなんですけど、僕が買いたいなぁと思うものじゃないと。当たり前ですけどね。

 
床井: 前、おっしゃってましたよね。僕はユーザーの代表的なモノにならないといけないと。そのための意見をサウンドにも言いますからって。
 
小川: なかなか葛藤がありますから、難しいのは難しいんですけどね。でも、すごくバランスも含めて僕が思い知るサントラの中でベストですね。
これを聴いてもらって、さらに12月10日発売のサントラ本編の方も聴いてもらおうと…。布石という意味でも、これ以上のモノはありえない!というような流れになってると思います。
 
床井: 実はこの特製CDなんですけども、ドルビープロロジックII(※1)というモノに対応していて、その環境があればその音質で楽しめるといった仕様にもなっているんですよ。
ですので、この特製CDを聴いていただいて雰囲気がすごく良いと思っていただけたら、ゲームの方もと…。
 
小川: そうなんですよ、この特製CDが付いてるニンテンドードリームさんはゲームよりだいぶ早く発売されるので、聴いてもらって「何かちょっといいかも?」と思っていただけたら、ゲームなりサントラなりを体験してもらえればと。
 
床井: (PSOの世界に)入るきっかけになっていただければと思いますね。
 
■12月10日発売サントラ情報■      
小川: サントラ、豪華2枚組みですね。いやぁ、曲を作りすぎた!(笑)
 
床井: すいません!1枚で収まりませんでした。実はこの2枚組みで3,150円というのはかなり…(小声に)。
 
小川: なんですよね。ごめんなさい。
 
床井: いえいえ。
この値段で初回特典には「カレンダー」「EP3特製トレーディングカード(※2)」がついてきます。さらに今回の特製CDに収録したEP1&2のOP・ED3曲をノーカットで入れちゃいました。
EP3だし、完結だし、入れられるモノは入れておこうと。
 
小川: 特製トレーディングカードも大変だったんだけど、その話はイイや。
しかし、いっぱい付いてきますね。ぶっちゃけ、よくやりますね。

床井: ま、完結ですし。これくらいやりましょう!ってことで。
発売元はウェーブマスター、販売元はエーベックスデストリビューションからということで12月10日になっています。

(※ サントラ追加情報 ※)
 
■音楽サイドから迫るエピソード3■      
小川: 話が飛ぶんですけど最初にEP3をやるとなった時「引き続き小林くんにお願いするか(※3)」となったわけですね。だけど、カードにシステムを変えたということもあり、もう少しSFよりはファンタジーの方を出してちょっと違うムードにしたいと。そういう要望をウェーブマスターさんの方に投げたんですね。じゃあ、誰々…という話がでてきて。で、ソニックの時にちょこっと床井さんとやってたので「じゃあぜひ床井さんで!」とお願いしました。
 
床井: 僕はその時「それは小林くんではないのか!?」って思いましたよ(笑)。
でも3はこれまでと違う仕様、違う遊び、ということを聞いて「じゃあ、やりましょう!」って引き受けたんです。
 
小川: でもね、難しいんですよね。3というものは。
 
床井: そうですね。3ということと、完結ということで、今回はかなり難しいんだろうなと思いましたよ。
 
小川: あらゆるジャンルを含めて、やはり3作目というのは難しいと思うんですよね。今までの通り作っても大抵「面白くない…」って言われる。かといって奇をてらいすぎると「え〜っ!」って言われちゃう…。難しいなぁと。
例えば
映画監督にしても、同じ物を続けて3本撮っちゃうとやっぱりテイストが似ちゃうし、面白くないとか「1が良かった」とか言われることが多いんですよ。

今回EP1&2の見吉、畑コンビから、DC版のVer.2まで係わっていましたけど、僕がやるということで、社長にも聞いたことがあるんですよ。「小川テイストになってもいいのか?」って。
そしたら「いいぞ」って言われまして。「ただ(シリーズを)完結させろよ。」みたいなことも言われて。じゃあ小川テイストで、僕が思い描いてるPSOはこんな感じかなぁっていうものを形にしていった感じですね。それにあたって音楽も少し変えてみようって。
それで最初にテーマについても話したときも、今までのシリーズとちょっと違って、アナログな感じとデジタルな感じとを融合した方向性でお願いしますってことを言ったんですよ。
 
床井: あと、クールで洗練されたイメージでというものがありましたね。
 
小川: そうですね。
 
床井: そのテーマで始めたのですが、こっちが考えていたものとやっぱりちょっと違っちゃって(苦笑)。
 
小川: いや、そんなに違わなかったですよ。違わないのは違わなかったんですけど、途中で限界を感じたんですよ。曲を作り続けてもらう中で、そういう話が少し出てきていたんで、これ以上はバリエーションを出しにくいのかなと…。
じゃあ、もう少しリズムのいい方向性のものを入れたりとかしてみようかなと思いまして。
僕もコンセプトに沿って曲を作っていくことは大事だと思っています。ただ、コンセプトがしっかりしてて1つの方向を向いているのであれば、その幅が多少広くても大丈夫だと思っているんですよ。
途中からデジタルでリズムのいいものを入れてもらったわけですが、よくなったと思います。ほんとに。
 
床井: やっぱり最初の方に作ったものと後半の方で作ったものとでは移行してるというか…。ただそこで全てトータルで考えた時に、じゃあ1個の何かテーマ性みたいなものって何か?というものを、僕はすごく考えてしまう人で。
ただ、ず〜っとやっていくうちに時間を考えないというか、システム的にも曲的にもそういうものが大きいなと感じて『無限』というテーマを(笑)。
 
小川: (笑)。でも広がりも出て、最終的には本当によくなったと思いますよ。

今回は『光と影』というテーマがあったのですが、僕の中でだけ『2つ』というキーワードがあったんです。ゲームのストーリーの中でも光だったり影だったりみたいなのがありますし、歌詞の中にも実はそういうのを入れてもらってて。元々のPSO自体が光と影みたいなところを背負ってるんで、そういうのをそのまま継承しつつ『2つ』というものに気をつけながらやってましたね。
 
床井: 実はですね、偶然にもサントラの2枚組みの組み分けも光と影になってたりするんですよ。
 
小川: なるほど〜。
あと僕は、床井さんのゲームミュージックに対するスタンスをお聞きしたいですね。気をつけてることとか。
 
床井: ゲームミュージックで気をつけていることは、やっぱり『最終形を考えながらつくる』っていうところですかね。画面にくっついた時の効果というものを考えながら作っているんですけれども、考えすぎて「あれ?」っていうこともあったりして。
でも、やっていくうちに「おぉ〜、いいじゃない、いいじゃない!」って自分もどんどん盛り上がっていくのがわかるっていうのが、一番楽しいところですね。ゲーム音楽ってやっぱり自分も楽しめないと音楽が生きないですから。
 
小川: ですね。まずは作っている人が楽しめないと、ダメですよね。今回は僕も個人的な嗜好を入れつつ楽しみながら作らせてもらいました。その分大変でしたけど…。大勢のスタッフが本当によく頑張って作ってくれました。

お、時間のようですので、最後に締めの言葉を何か。
 
床井: 今回は全てを出し切ったというか、僕の中での集大成ですね。ほんとに全力で小川さんに向かわないとOKが絶対取れませんから(笑)。
ゲーム全体の音楽を考えると、バリエーションもすごく増えたしゲーム性も消化できたとは思ってます。
実際プレイしていて盛り上がるところはちゃんと盛り上がっていると思ったし、SE(※4)のみで完結しているところもあったりするんですけど、そこもSEとゲームがちゃんとマッチしていたり、僕の中でも驚くことが多かったんで、今回は楽しめて出来ました。
 
小川: 今回の曲は良かったですね。色々直してもらった分納得いくものが出来たかと思います。大抵作るときはあんまりそこまで突っ込んで言わないんですけど、今回はディレクターをやるということで、突っ込んで言わせていただきました。いやぁ、ご迷惑をおかけしました。
 
床井: いえいえ『ゲーム性を上げるための努力をどこまで出来るか?』というのを改めて考えなきゃいけないというきっかけを与えてくれたという点では、すごくよかったと思っています。
 
小川: 今後も床井ワールドをソニックチームや色々なところのタイトルで出していってもらえればと。要チェックで聴いてますんで、ほんとに。
 
床井: こちらこそ、またよろしくお願いします。
 
小川: 今日はどうもありがとうございました。
 
床井: どうもありがとうございました。
 

…というわけで、ずいぶん公開が遅れてしまいましたが、「特別対談(前後編)」いかがだったでしょうか?ナニを隠そう私はニンドリ100号を10月6日の発売日に買えず、2日後にようやく買いに書店に向かったところ、どこにも売ってない(危うく99号を買うところでした)!?「本当に売ってるの?」とアチコチ心配になりつつも、見つかったのは5日後のとある本屋。残り1冊でした。よかったよかった。もしも、これを読んで「欲しい!」と思った方は、バックナンバーなどから購入できるかも???しれません。頑張って手に入れてみてください。少しでもニンテンドードリームさんのお役に立っていれば幸いなのですが…。
ところで当HPコラムの方もすっかり御無沙汰していますが、近日中には、なにやら活動再開予定です。製品版も発売ももうすぐ。乞うご期待。

最後にスペシャルエディション聞いてくれた方々、ありがとうございました。なにか感じるものがあれば良いのですが。


エピソード3ディレクター 小川
 

WAVE MASTERのクリエーターはもちろん床井さんだけではありません。時には『音』という違った側面からゲームに迫ってみるとちょっと楽しいかもしれませんよ。WAVE MASTERのホームページを覗いてみると、そんな側面からの情報に会えるかもしれません。

【WAVE MASTER ホームページ】

編集担当:白水

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