Hitmakerのスタッフによるリレーコラムです


伊藤周と申します。プログラマーですが、シナリオライターに憧れています。
そんなんで短編小説を書いてみました。
それでははじまりはじまり…



「眠り姫」
むかしむかしあるところに、お姫様がいました。そのお姫様は、魔法使いがに貰った呪いのリンゴを食べて以来、眠りつづけていました。
その「眠り姫」の噂はある剣士の耳にも入りました。剣士はその呪いを説く方法を知っていました。実はキスをすることで呪いを解くことができるのです。

王城に赴いた剣士は「キスをする」ということを内緒にして、お姫様のお付きの婆やに事情を説明しました。



剣士は眠っているお姫様の頭を抱えるとキスをしました。するとどうでしょう、お姫様の目が開くではありませんか。



そうなのです。今度はキスした当の剣士が眠ってしまったのでした。お姫様が揺さぶっても叩いても、剣士は起きませんでした。



そういって今度はお姫様が剣士にキスすると、案の定、今度はお姫様が眠ってしまいました。



(姫は目覚めさせたいけど、自分が眠ってしまっては意味がない…。まてよ、自分が眠る必要もないのか…)



そう言ってお姫様にキスをしてしまいました。そうして三度、お姫様は目覚まし、剣士は眠ってしまいました。



そうして呪いのリンゴ食べた姫は王子の隣に眠ってしまいました。



婆やはお姫様を剣士にキスさせようと、お姫様の頭を弱々しい手で抱えました。しかし、その手がふと止まりました。

(待てよ…よく考えてみれば、この剣士様には何も義理もない。それどころかさっきは酷いことも言われて、危うくわしが眠り続けるところじゃった。姫様にしても、この婆やのおかげで立派になったと言うのに、なんじゃさっきの態度は。日頃の恨みはとうに脊髄に達しておるわ…)



決意した表情でゆっくりと立ち上がると、ドアの向こうにいる近衛兵を呼んだ。



そうして剣士とお姫様は仲良く二人で眠りつづけたのでした。

おしまい



次回は「頭文字D Arcade Stage Ver.3」のチーフデザイナーの工藤さんで、お題は「オレと必殺」でお願いします。


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■伊藤 周(プログラマー)
前回の平魯さんと極秘プロジェクトを遂行中のプログラマー伊藤さん。
幼少時代ファミコンを親に買ってもらえず「パソコンだと勉強とかできそうだから」という理由でMSXを与えられた悲運のプログラマー(そういう人全国に1万人くらいいるんだろうな)。
愛車RX-7を3回凹ませるほどブイブイいわせてると思いきや、仕事では妥協をせず、厳しいバグもとことん取る職人肌な一面も。
あ、あと最近彼女ができてマルくなったらしいです、ハイ。

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