Hitmakerのスタッフによるリレーコラムです


正直このコラムも回ってはこないと思っていましたが、回って来るものです。
仕事で大分お世話になっている川竹さんの依頼も断りづらいので、書かせて頂きます。

それでは、少し昔の話をしましょうか。

もう10年ほど前、私はある役者さんの追っかけをしておりました。
出会いはその方が組んでいたユニットのライブでの事。
他の方が目当てでそこに行った私は、その強烈なキャラクターに惹かれていったのです。
そのうち、パソコン通信で知り合った仲間に、その役者さんのレギュラー番組の収録の日を聞きました。
そうなると毎週その曜日は仕事が手につきません。いつもより早めに退社し、収録スタジオに向かいます。毎週収録があるといっても、その方の出番があるかどうかは分かりません。すでにスタジオ前にいる仲間にスタジオ入りしたかどうかの確認をし、収録が終わる時間まで近くの店で時間をつぶす。そして収録が終わり、出てきた役者さんに挨拶と二言三言話をして、そこで別れる。その日は金曜日だったので、後は夕食、徹夜でカラオケ、朝食という事を繰り返していました。

しばらくすると、顔を覚えられた私たちに「○月○日にXXでイベントがある」とありがたい言葉を頂く事があります。
ただ一口にイベントと言っても、場所や開始時間、入場は有料か無料か、座席があれば指定席か自由席か、入場に整理券は必要か等々欲しい情報は沢山あるのですが、役者さんに聞いても判らない事がほとんどです。所属事務所や主催者に連絡を入れ、情報を補完していくのです。イベントに必要なものは確実に入手しなければなりません。
インターネットでチケット購入なんて普及していなかった時代です。有料チケットの場合、チケットショップの店頭に発売日数日前から並ぶのは当たり前。店の設備、記入用紙を事前に配る等の購入方法、店員の入力スキル、並ぶ場所が指定されている等々。色々な事を考え、少しでも前の席に座るために頭をひねります。
入場が無料もしくは座席が自由の場合は数日前に会場に訪れ、会場の職員と交渉し、徹夜の許可をもらったりしました。
品川のホテルの脇、日本橋の百貨店の入り口脇、池袋の高層ビルの軒下。池袋では雪が舞う中、名古屋ではセミの鳴き声と、徹夜にも色々な思い出もあります。

イベントが始まるまでの時間も貴重なものです。
その役者さんにお聞きしたところ、ステージから客席を見ても、お客さんの顔が認識できるのはせいぜい前から3列目まで。そこにいらればいいものの、見つけられなかった時が悲しいので、待っている間は便箋を広げ手紙を書いたりもします。まあ他愛の無い事ですが、前回のイベントの事とか、最近の仕事の事とか。書いた手紙はイベントスタッフに託して、本番を待ちます。
開場した時が一番緊張する時です。席が決まっていない場合、会場に足を踏み入れた瞬間にステージと客席の位置関係、すでに入っている客の分布状況、その役者さんのステージでの立ち位置等を判断し、速やかに場所を確保。そこでやっと一息ついて、後は幕が上がるのを待つだけ。
地方のイベントでは、そこに行く間も楽しいものです。
名物を食べたり、観光をしたり。
大垣夜行に青春18切符で名古屋や大阪に行ったのも楽しい思い出です。

追っかけを通して色々な方と知り合う事も出来ました。
実は私の奥さんも同じ役者さんを追っかけていて知り合ったのですが、私達の結婚をその役者さんは大変喜んでくれました。そしてその役者さんも結婚、幸せに暮らしているそうです。
その方の結婚と、私にも子供が出来た事でイベントにも行きづらくなり、追っかけからも足を洗い私は普通の生活をしております。
でも、たまにチケットショップの前で徹夜をしている人達を見ると、本当に懐かしい思いがしますね。

その役者さんと、今はどんなお付き合いをしているかと言えば、先日息子を抱っこして喜んでもらったのでした。


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■山崎 剛史(プログラマー)
入社13年目の大ベテラン。プログラマーの山崎さんでございます。
現在は極秘プロジェクトにて、やさしい兄貴っぷりを遺憾なく発揮している山崎さんですが、プライベートではちょうど1歳になる長男坊に夢中。まあ、一番かわいい時期っすからね。
子供の将来について聞いてみたところ、長い沈黙の末「間違ってもこの業界には入って欲しくないねぇ・・・」とポツリ。悲しいけど俺も子供ができたらそう思うんだろうなぁ、うぅぅ(泣)。

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