●サウンドについて 
そうそう、サウンドについても忘れてはいけません。
今回のアトムのゲーム中BGMは、おなじみ「金さん」こと金子さんと、こちらもトレジャーサウンドで定評あるNONさんの豪華競演となっています。これは私がご無理をお願いしたものですが、お二方とも本物のプロですので、がっぷり四つに組んだ素晴らしいコラボを
見せてくれてました。

幾多のトレジャー作品を彩ってきたNONさんの、燃える各面テーマ曲と、親しみやすいメロディで聞かせる金さんの主題歌(例によって私が適当に作詞したものですが、手塚プロの許可をもらってますので、いわばオフィシャル!)をはじめとして、金さんが作った「シャラクのテーマ」にNONさんがさらにアグレッシブなイントロやオブリガードを加えるなど、かなり細かいところまで共同作業が行われていますので、この曲はどっちかな?などと考えるのも楽しいかもしれませんね。

また、私は以前からNONさんの担当された「ガンスターヒーローズ」には心酔してまして、この「アトム」にも、NONさんを拝み倒して、一曲だけガンスターの曲を入れてもらいました。個人的に一番思い入れのある曲で、どうしても使いたかったのです。この部分はシナリオの方を曲調にあわせて書きましたので、どこで出てくるかお楽しみ…。

そして、村田さんによるSE(効果音)も実にすばらしいものです。ゲームにおいてSEは、見落とされがちですが、実は絵と同じくらい重要な要素なのです。今回村田さんの仕事ぶりは、私がこれまで見たことのないほど緻密なもので、そのこだわりには脱帽しました。

ここでも「こだわりのトレジャー」の秘密を垣間見た思いです。私は、白黒アニメ版アトムの電子音によるポップなSEが大好きで、最初参考用にと「鉄腕アトム・音の世界」という有名なCDをお渡ししたのですが、できあがってきた素材は、その一枚も二枚も上を行く、ポップさとゲームとしての迫力を兼ねそなえたものでした。

 「ザコの歩行音」「V3号がやられる時の音」「青騎士の飛行音」…


村田さんは謙虚な方で、SEはあくまでゲーム中に聞くためのものだとして、当初SEをサウンドテストからは外すよう求められたのですが、こんな凝ったSEが単体で聞けないままにしておくようでは、全国百万のトレジャーマニアに申し訳が立ちません。これまた無理をお願いして、真クリアすればBGMともどもサウンドテストで聞けるようにしましたので、その細かいお仕事をぜひともお楽しみください。

●おわりに
この「ASTRO BOY 鉄腕アトム 〜アトムハートの秘密〜」には、特別に目新しい部分はありません。前述の通り、いまどきは珍しくなってしまった、ごくごくあたりまえの2Dアクションゲームです。しかし、ゲームの歴史において「遊びやすさ&わかりやすさ」と言う点では、ここらへんのゲームシステムこそが、実は一番飽きのこないバランスの取れたものではなかったか、とひそかに思っております。

手塚ファン、鉄腕アトムファンの方はもちろん、「ゲーム、昔はけっこう好きだったけど、ちょっと最近のにはついていけないなあ」というような方々にも、「ああ、いかにもゲームだ!」と安心できる、肩のこらない「ASTRO BOY 鉄腕アトム 〜アトムハートの秘密〜」、よろしかったらぜひゲーム屋にダッシュしてお手にとっていただけると幸いです。

また、私が適当に総括してしまいましたが、もちろん多くのスタッフの協力なくして、このゲームの完成はありえませんでした。

短いスケジュールの中でプロのこだわりを見せてくれたトレジャーのみなさん
ゲーム完成のために強力な援軍となってくれた助っ人のみなさん
あらゆる面からバックアップしてくれたセガとヒットメーカーのみなさん
そしてソフトを買っていただいたすべてのユーザー様へ
この場を借りて、あらためてお礼申し上げます。


ありがとうございました。

私たち、普通の女の子に戻ります…(ぶち壊しな終わり方)