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グレイブ家の執事、ブラントの捜索から1年。
少女マァサからあなたに依頼が届きます・・・

『いらっしゃいませ!あなたのハンターズ人生を豊かに彩るハンターズギルド、受付はこちら!』

 ギルド内受け付けカウンターの中でそう明るく話しかけてくる受付嬢に、私は名前を名乗り、ハンターズIDを提示した。
 私宛に依頼が来ているはずだったので、その事を告げると受付嬢は手際良く検索を始めてくれた。

ピッ、ピッ、ピッ・・・

『はい。確かに依頼が一件ありますね。依頼主はマァサ・グレイブ。本日午後1時に中央公園に来るように、との事です』
 私は依頼を承諾して、ギルド内に設置されている転送装置に入り、中央公園へと向かった。午後にはまだ早かったが、少女の事を思い出す時間には不自由しないだろう・・・

 惑星ラグオルに調査隊として下りた私にとっては、パイオニア2中央公園の造られた自然はもう、心を癒してはくれない。
 いつからこんな殺伐とした気持ちが芽生えたのだろうか?。惑星を調査すればするほど気持ちが重くなっていく。私達にはもう、そこしかないというのに。
 『あっ、お久しぶりですハンターさん。・・・お待たせさせちゃいましたか?』
 ベンチに腰掛けうつむいていた私に、その少女は明るい口調で呼びかけてきた。
 私は顔をあげ、フルフルと首を横に振って少女に答えた。少女と初めて会った時の事を思い出していた、とも付け加える。
『そうですね・・・。あれから一年経ちましたが、ハンターさんはお変わりない様で私、安心しました』
 少女はそう告げると私の横に腰掛ける。私服の、いつもより少しだけ短いスカートを気にする仕草が微笑ましいく、私はつい笑顔になっていた。
『お忙しいところを来ていただいて、ありがとうございます。今日は少し・・・私の話し相手になってもらいたくって、ハンターズギルドに無理を言ってお願いしてもらいました』
 そう言って私の方を向いた少女の頬が、ほんのり桜色に染まっている。
『ご迷惑・・・でした?』
少女の問を一瞬で否定する私。

 それから少し、私達は公園内を歩きながら他愛もない話しを交わす。
 公園内の一角にあるドーム型展望室の中へ入り、惑星ラグオルを見下ろす私達。
 そこで少女は静かに語り出す。その声はどこか弱々しく悲哀に満ちている。
『前にもお話しましたよね、両親の事』
私は僅かに頷く。
『いつも家にいなくて、家にいる時ですら研究の事で頭がいっぱいだった両親。私はいつもそんな両親の事を、どこか別の家族を見るような気持ちで見ていました。私が産まれた頃、ううん、そのもっと前から執事として従事していたブラントが、私には家族であり、父親だったので、寂しい想いはしていなかった・・・そう思っていたんです』
 少女はそう言うと、一枚のビジュアルメモリを取り出す。そこには幼いマァサと、マァサを腕に抱いた父親、寄り添う様に立つ母親、その頃からもう若くはない執事のブラントが写っている。
『あの日・・・パイオニア1が両親を乗せて惑星ラグオルへ旅立った日、私は泣きました。寂しくて、寂しくて、泣きじゃくる私をブラントが優しく慰めてくれたのを、今でも昨日のように思い出します』
少女は少し照れた笑みを浮かべる。
『両親がいなくなって、初めて寂しいと感じた自分の気持ち。でもきっと、いなくなる前から寂しかったんだと今は思います』

 少女はビジュアルメモリの記録を次に変えて、ブラントが紅茶をいれてくれている映像にきりかえる。
『両親が今も、惑星ラグオルのどこかで生きているのかはわかりません・・・。でも私はもう、一人の父親を亡くしてしまいました。それで』
少女は私の方に向き直ると言葉を続ける。
『それで私は決めたんです。もう私のような思いをする子供がでないように、この惑星ラグオルで平和な生活を営めるような、そんな世界をつくる努力をしよう、って』
 少女は両手を自分の後ろにまわすと、はにかんだ笑顔で私を見つめた。その笑顔はまだ子供のものだったが、少女の見つめる眼差しの奥には、確かに輝かしい未来の希望の光をたたえている。
『今日はこの事をあなたに伝えたかったんです。ブラントには優しさや、生きている意味を教わったけど、あなたには未来に続く道を教わった気がするから』
 少女はもう子供ではなかった。彼女ならきっと、その夢に向かって真っ直ぐ歩み続けられるだろう。私はそう確信した。

『それでね、私』
何かを言おうとした時、呼び出し音が言葉を遮った。少女は慌てて携帯端末の受信ログに目を通す。
『もうこんな時間!ごめんなさい、私これからウェインズ姉妹と会う約束があるんです。クロエはともかく、アナは遅刻するといつまでもうるさくて』
私は少女に、気にしなくていいよと告げて別れの握手を求めた。少女はその手を両手で握り、名残惜しそうなため息をつく。
『じゃあハンターさん、今度はもっとゆっくり会いましょうね』
そう言って公園出口の方へ駆けてゆく。
 その姿を見つめる私に少女は振り返って『あっ、そうだ。依頼料はちゃんとハンターズギルドで受け取ってくださいねー』と、やはりまだどこか子供っぽい仕草のバイバイをした。

 私はまだ少し公園に残って考え事をしていた。惑星調査の不安・・・。
 でもすぐに結論は出た。迷う事なんてないんだ。私は私にできる事をやろう。それがきっと、マァサの夢に繋がる事になるのだから。

 私は公園をあとにすると、ハンターズギルドに顔を出した。そして受付嬢に依頼を達成したと告げる。
『依頼主マァサ・グレイブより確認を取りました。見事依頼達成ですね!どうぞ報酬をお受け取りください。あなたのハンターズ人生を豊かに彩るハンターズギルドに、またどうぞ!』
 私はその報酬を受け取ると、その一枚を口に入れる。
 手作りのそれは、甘味はなかったが、どこか懐かしいホッとする味のするクッキーだった。

悲しい出来事に直面したものの、夢を持って前へ進んでいこうとする少女と、その姿を見て迷いを断ち切れた主人公。こんな素敵な関係の友達を、みんなも見つけられるかな?

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