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後から付け足した部分があったりして文章がバラけてるかも知れません…(-_-;)
Ep2が始まったばかりのお話…という設定です。
最近、『PSO=戦ってアイテム探してウッハウハ』という方程式が自分内部で成り立ちつつあるのでこういうほんわかした(?)ストーリーがあってもいいんじゃないかと思ってみたり…(汗 |
「ねぇ、聞いた?ティスクル様の噂っ!」
ハンターズ御用達のカフェの一角。
向かいのテーブルに座っていた、3人のハンター達が噂話をしているのが耳に入った。
「聞いたよぉ〜。すごいよねぇ」
「VRテスト最初の合格者だってさ。新しく見つかったポイントへの降下も許可されたみたいだよっ」
「私達も見習わなくっちゃね〜」
"ティスクル"。ここ最近、ラボでハンターの中のハンターと呼ばれているハニュエールだ。
ラボの研究員達が開発した"VRシステム"と呼ばれる擬似戦闘試験。
パイオニア2が入手した情報を解析し、その情報をもとにより強力なエネミーを仮想空間に創り出す。
それらを全て倒してラボに帰還する。…口で言うなら、ただそれだけのテストだ。
しかし、この試験を突破することは決して容易ではない。
過去にパイオニア1の調査を任されていたハンター達でさえも、VRシステムのエネミーの前に敗北、無念の帰還を繰り替えしている。
今や「最も高等な試験」とまで言われている"VRシステム"。
その最初の合格者が、今話題になっていた"ティスクル"だった。
ふと、3人の内の1人と目が合う。
まだあどけなさの残っているフォマールだった。
彼女はテーブルを立ち、2人に軽く挨拶をしてから私の方に歩いてきた。
『あの、こんにちはっ』
「あ、うん…。こんにちは」
まさか話かけてくるとは思っていなかった。
目が合っただけで話かけてくるなんて。
『えと、もしここ空いてたら座ってもいいですか?』
あたしの正面の席。
「えぇ、どうぞ」
あたしがそう返すと、彼女は嬉しそうに笑って席に着いた。
『突然おじゃましちゃってごめんなさい。私、フォースのミトゥスって言います』
「ううん、気にしないで。あたしはハンターのティア、よろしくね」
久しぶりに交わした握手。
彼女の小さな手のひらから体温が伝わってくるのが、なんだか心地よかった。
『ティアさん…ですか。よろしくお願いします』
にっこりと笑ったままの彼女。
無垢というか、無邪気というか。
彼女の仕草を見ているだけで、思わずこっちが微笑んでしまう。
これが、あたしとミトゥスの最初の出会いだった。
それから彼女とあたしは、いつしか一緒にテストを受けるようになっていた。
最初…の友達かも知れない。
誰かと一緒に何かをするのが苦手だったあたしは、友達を作るのがひどく下手だった。
そんなあたしにできた、最初の友達。
ミトゥスとなら、いつまでも仲のいい友達でいられる…。そんな気がした。
ある日、あたしはミトゥスに聞いたことがあった。
どうしてハンターズになったのかと。
あたしが言うのも何だけど、ミトゥスはすごくいい子。
ちょっと背が低いけど、器量も良くて、いつも笑顔で。
高等なテクニックだって使えるし、何より優しくて。
…優しすぎるから。
だから、彼女はよく怪我をした。
弱っているエネミー。
回復の力を持っている彼女。
それが、裏切りに等しい行為だと知っていても。
たとえ、それが自分に仇名す存在だったとしても。
彼女は癒してしまう。
傷ついた者、全てを。
正直な所、彼女はハンターズよりは、メディカルセンターの治療員の方が向いている。
むしろ、ハンターズは向いていないとさえ感じるほどだった。
《どうしてハンターズになろうと思ったの》
あたしの質問に、彼女はゆっくりと答えてくれた。
自分を生んだ両親は、パイオニア計画の科学者だったという事。
自分を生んですぐ、パイオニア1の研究員として派遣された事。
そして…あの事故以来、連絡が取れなくなってしまった事。
『私、両親に会いたくて…』
彼女も本当はわかっている筈だ。
彼女とて、地表に一度も降りていない訳ではない。
試験を必要としない、旧探索地点。
彼女は実際にそこに降りて、目にしているのだから。
あたし達の兵器をものともしないエネミー達。
なにより、破壊されてしまった研究所を。
だから彼女は知っている。
両親が、生きている可能性なんてゼロに近いんだという事。
…叶わない望みなんて、最初から持たない方がいい。
だから、あたしは彼女に聞いた。
「ミトゥス…。希望って、下手に持つと逆に苦しむ事…わかってるよね?」
その問いに、彼女は少しだけ間を置いて答えた。
『わかっています…会える訳、ないんだって』
初めて見る、ミトゥスの悲しそうな顔。
自分が悪いわけではないのに…。
心が、ぎゅっと締め付けられたのを覚えてる。
『でも…でも…、私……わたしっ……!!』
それから先は、言葉にならなかった。
ぽろぽろと涙を零して、ミトゥスは俯いた。
隣でミトゥスが泣いてる。
考えれば考えるほど、いたたまれなくなって。
気がつくと、あたしは彼女の頭を撫でていた。
あの子に…よく似てる。
いなくなってしまった、あたしの妹。
"ティスクル"と言う名の…妹に。
いつの間にか、眠ってしまったミトゥス。
この頃からだったっけ。
この子を悲しませたくない。
この子の側にいてあげたい。
自分の気持ちに、素直になれるようになったのは。
そして、あたしとミトゥスが、ものすごく仲良くなったのは。
それから。
一生懸命に戦いの練習をした。
時にはハンターズギルドの依頼を受けたり。
特訓と称して旧降下地点を探索…もとい、散歩したり。
ミトゥスにテクニックを教わったりもした。
あたし達は段々と強くなっていった。
戦いに必要な強さ。
悲しみに負けない強さ。
そして…きっと、一番強くなったのは"絆"。
誰かが、自分を必要としてくれることの嬉しさ。
それに気がついたから。
そして、しばらく時が流れて。
"VRシステム:神殿"の突破に成功したあたし達は、
"VRシステム:宇宙船"最後のフロアへと続くテレポーターの前にいた
"VRシステム"が完成して以来、"ティスクル"だけが見たという…この幻のテレポーターの前に。
『いよいよ…ここまで来ましたね』
ミトゥスは少し緊張している様だった。
「そうだね…。ここまで、来た」
ミトゥスが言った言葉を、噛み締めるようにもう一度呟いた。
『ティアさん、準備はいいですか?』
不安そうに聞くミトゥス。
「えぇ。薬は持てるだけ持ったわ」
心配させまいと、できるだけ元気に答えた。
でも、ミトゥスは小さく首を横に振った。
『戦う準備じゃないんです。…その、心のほうの』
心の、準備。
これから現れる、未知の敵と戦うための。
不安、恐怖。
最悪の場合、死ぬかも知れない。
あたしは一呼吸置いて、静かに…でもはっきりと答えた。
「ミトゥスがいてくれれば…どんな敵でも大丈夫だよ」
ちょっと照れくさかったけれど。
あたしは、確信していた。
戦いの中の話だけじゃなくて。
信頼できる友達と一緒だから、安心できる、という事を。
『…えへ、ちょっと照れちゃいますよ、今のセリフっ』
その返事にミトゥスは、いつものミトゥスと同じ笑顔を見せてくれた。
あたしが大好きな、あの笑顔を。
2人でテレポーターに乗る。
深呼吸をして。
手を繋いで。
一緒に唱えよう。
あたし達の、冒険の始まりを告げる合図を。
『「最終フロア、転送開始!!」』おしまい |
ふとしたきっかけで知り会った人が後の大切な友達になったり、重要な出会いというのは何処に転がっているか分かりません。
互いを信頼し強い絆で結ばれたティアとミトゥスも、出会いはたわいもないものでした。
ロビーには沢山の人がいます。
みなさんも是非、積極的に声をかけて、2人のように素敵な関係を築ける友達と沢山出会ってくださいね!
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