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コメント
フォースをやってると「ああ、お互い助け合わないと駄目なんだなぁ」って思います。
そんなわけで小説を書いてみました。よろしければ読んでください。

え、これがどうかしたのかい?
ああ、なんでこんな武器つかってるかってこと?
まぁ、確かに遺跡のエネミー相手にはちょっと力不足かな?
…そうだねぇ。じゃあ君はどんな武器が一番だと思う?
ダブル=カノン?うん、あれは強いね。とても。
希少価値も高いからね。欲しがる奴は多い。

…さてと、準備はいいかい?そろそろ行こうか。

…え?ああ、そうだね。質問に答えてなかったね。
じゃあ教えてあげよう。僕がこのソウル・グラディウスを使ってる理由。
ちょっとだけ長くなるけど…いいかな?


新米フォーマーのイルがラグオルで調査を始めてしばらくたった頃。
それは既に他のハンターによって遺跡の存在が確認されていた後であり、イルは随分と出遅れていた。
遺跡に行くにも彼のLVでは到底歯が立たず、しかもセントラルドーム周辺のエネミーにも苦戦している有様だった。
だからといって調査を断念するわけにもいかず、結局は森で
LVをあげる日々だった。
(VRじゃあ結構いい成績だったのに…)
どうやら仮想空間で戦ったエネミーと現実のエネミーでは強さが段違いらしい。
本来の主力武器であるテクニックはその威力が激減し、また敵の攻撃力も強まっているようだ。

(やっぱり1人じゃあ厳しいな…でも仲間なんていないし…)

―それから数日たったある日の事。
ロビーで1人のハニュエールがイルを呼び止めた。

「ね、一緒に行かない?」
「え?でも僕弱いですよ?」
「何いってんの?最初から強い人なんているわけないでしょ?それにさ、私も1人だし困ってるの」

それが彼女…テトとの出会いだった。
イルはその日、半ば強引に足を踏み入れた事のない洞窟エリアへ連れて行かれ…
そしてこの日から2人は行動を共にするようになる。


―それからまたしばらくたったある日。
イルのLVもあがり、随分と戦闘にも慣れてきた頃である。
たまたまフォニュエールとチームを組む事になった。
坑道の調査が終了し報告を済ませた後、イルが呟いた。

「僕って才能ないのかなあ…」
「え、どうしたの?いきなり?」
「だってさ、同じフォースなのにさっきの人に比べてテクニックの威力は弱いし…それに精神力でも劣ってるから…」
「気にすることないよ。それにさ、イルはニューマンじゃないんだから…」

事実、先程のフォニュエールとイルを比べると明らかにイルはフォースとして劣っていた。テトは全く気にしていなかったが、イルとしてはそれが大きな劣等感になっていた。
テトを守りたい、常に最前線で戦う彼女を守ってあげたい、それが彼の望みだった。

「そうだ!じゃあこれ使ってみる?」

テトがイルに渡したもの、それはソウル・グラディウスだった。

「イルって自分じゃあ気づいてないけどさ、結構力あると思うよ。それにこれ、エレメントがソウルだし、命中補正もあるからうまく使えばいけると思うんだけどなぁ」 

そしてその日から、イルはテトに剣の使い方を教わる事になる。


ハンターズには二種類のハンターがいる。一方は純粋に調査を目的としてラグオルへ降りる者、そしてもう一方は希少価値のあるアイテムを求めて、また自身を磨くために降りる者、である。
イルは前者、テトはどちらかといえば後者のハンターであった。
一度、イルが「なんで?」と、聞いたが「特に理由はないよ」と
そっけなく返された。
後にして思えば、彼女なりの理由があったのだ、とイルは思う。
なぜだか分らないが、ひどく悲しそうな顔をしていたのが印象に残っていたからだ。

―遺跡のエリア3が確認され、多くのハンターが遺跡に挑むようになった。
イルとテトも随分と遅れたが遺跡の調査を開始した。
そしてその頃からテトの様子が変わってきた、とイルは記憶している。
「シフデバお願い!」「はやくレスタしてよ!」
日がたつにつれテトが苛立っていくのがはっきりと分った。
イルはそんな彼女が少し怖かった。

「あなたは補助テクだけ掛けて下がってて!フォースはそれだけしてればいいの、…剣振り回しても足手まといよ!」

その一言がきっかけとなり…2人の間に溝が生まれた。
もともと気が弱いイルはその日から彼女を避けるようになり、またテトも高LVのハンター達に混ざって遺跡へ行くようになった。
イルはどうしようもなく悲しくなった。初めて会った頃の彼女はもういなくなってしまった。
ただ、ひたすら力を求めるだけの彼女の姿は見たくなかった。

その後、イルは彼女から貰ったソウル・グラディウスを倉庫に収めた。
剣を杖に持ち替え、自分よりもLVが低いハンター達に混ざり補助テクニックでサポートばかりする日々が続いた。
そしてハンター達はLVがイルよりも上になり、イルに何も言わずに彼の前から姿を消し…そんな事を幾度も繰り返していた。

―それからまたしばらくたった頃、事件が起こった。
遺跡深部で原因不明の震動発生。多くの調査部隊が行方不明となり、また、調査部隊を救出に向かったハンター達も犠牲となった、あの悲劇が起こった。
イルはその事件には関わることはなかったが…彼の嫌な予感は的中した。
行方不明となったハンターの中にテトの名前があったのである。
生存の可能性は絶望的。調査から帰ってきたハンターの報告の中には「泡のように人が消えていった。遺跡に吸収されているようにもみえた」
というものもあった。

「フォースのイルさんですね?BEEでメールが届いていますけど…」

ハンターズギルドの受付に声を掛けられ、呆然としていたイルは我に返った。

「でも…このメールは…今回の事件で行方不明になったテトさんからなんですが…」

イルはメールを読んだ。

イル、ごめんなさい。やっぱり、ごめん、駄目だった。
どうしようもなかった。わたし強くなりたくて、ああこんなことをいいたいんじゃなくて、あ
 
そこでメールは終わりだった。
イルは少しだけ、泣いた。
それから…イルはテトに貰ったソウル・グラディウスを手にした。


―遺跡エリア3・最深部と呼ばれるそのエリアのさらに奥。
調査に向かったハンターの多くが最後に通信を行なうポイントがある。
何故最後かというと、その先に進んだ者は誰一人帰還していない為、必然的に最後の通信になってしまうのである。
それはつまり、その先に強大な何かが存在しているという事の証明だった。

「…おっと、長話がすぎたかな?じゃあ、そろそろ行こうか。多分、この先で…なんていうのかな?
よくわからないけどさ、待っているような気がするんだ。」

イルは立ち上がった。
その手にはソウル・グラディウスが強く、強く握り締められている

ソウル・グラディウス  完


「誕生日プレゼントに貰ったモノメイトがどうしても捨てられない」などと言う話を聞いた事があります。作品のようなシチュエーションは、ゲーム中でも十分に起こりうる事です。勿論、そう思わせるような相手がいての事ですけれど…
私も、「僕には“この”ソウル・グラディウスじゃないとダメなんだー!」なんて言える出会いをしてみたいです…。


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