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コメント
初めて投稿いたします、甘味処と申します。楽しくPSOをプレイしています。
小品と思って書きましたが存外長くなってしまいました。
パイオニア2は食糧問題が大変らしいことに題材を採ってみました。
楽しんでいただければ幸いです。

P2T772@635
今からこの記録によってバックアップを取ることにする。
たとえ万が一の事態によりメモリが初期化されても俺が俺であり、俺の請け負っていた仕事を再開することに役に立つだろう。
人間なら日記と呼ぶだろうが。
名はChill。HUcastだ。
これを読んだ人間は壊れたとき俺のメモリをcasealに移動するのはやめてもらいたい。
今日政府から機密の仕事を請け負った。詳細は明日だそうだ。
常に複数の手を打っておくのが政治の常道とは言え組織とは効率が悪いものだ。

P2T773@443
機密の詳細が明らかになった。
あんまりくだらないのでここに書いて機密にしてやらないことにする。
俺の仕事は「食料調達」だ。
ラグオルから、適当に食えそうなものを「細胞をあまり破壊しないように」持ち帰るのが仕事だ。
種類、部位などの詳細なリストを記憶させられた。
パイオニア2がラグオルに到着してしばらく経つ。
むろん食料はだいぶ余裕をもって配給しているらしいし、サイクルシステムは完全・・なのだそうだ。
それでも万が一を考え、わずかでも調達を行っておくのが目的だ。
しかし「拒否反応を示す輩もいるだろうからこのことは最重要機密
事項だ」などとものものしい言い方をしていた。
笑える。物を食わない俺にはさっぱり分からない。
ともかく明日から仕事に入らなくてはならない。一人で。

P2T774@825
初仕事無事完了。ウルフ、ブーマを複数頭納入する。
納入先は係員からもらった携帯転送装置に放り込むこと。
メールでもう少し損傷を少なくするのとラッピーの納入を促された。
おい、そんなこと言うと生きたまま狸寝入りした奴を放り込むぞ。

P2T776@123
ヒルデベアを倒す。あまりに大きくて転送装置には入らない。
セイバーでカッティングし次々放り込んでやる。
そのうちどこからか係員がすっとんできて手伝い始めた。
研究に使うのかと聞いたが、それは普通のハンターズの仕事で
間に合うそうだ。
ついでにメイトの人工合成のように細胞の培養を行わないのか聞いたが効率が悪いからと一言ですまされた。
特殊な処理をしないと食べられないのだそうだ。
培養と処理2つ同時に行う余裕は無いそうだ。なるほど。

P2T779@566
だいぶ手慣れてきた。以前は銃で体力を奪ってから本攻撃を行っていたが一撃必殺で急所を狙わないと損傷が激しくなるため行っていない。
坑道と遺跡のものは食料適用除外が多いためコツさえつかめば
すぐ慣れてしまう。

P2T780@400
今日はリストの再発行で政府に呼び出される。その帰り道政府軍に会う。
こちらの仕事をある程度把握しているらしくにやにやと笑っていた。
ぼそぼそと「・・tabasco」などと言っている。何の意味だ。

P2T782@934
今日は気分転換にギルドで別の仕事を請け負うことにした。
何でも甘い物が食べたいという訳の分からない依頼だが食料ついでだ。
背の馬鹿高いFOnewmと組んで行うことになった。
的確に補助をしてくれる気のいい奴だったので、仕事のことは伏せてTP回復待ちの時tabascoのことを聞いてみた。
「ああ、それは多分・・・君が小さくてしかも真っ赤だからじゃないですか」
何でも辛い(よく分からないが)赤いソースの小瓶だそうだ。
軍の奴らには必携のものらしい。
「レーション(軍の携帯食料)って不味いらしいんですよ。それでごまかして食べる」
納得した。何か分からない不味い物をごまかして食べる、ということか。
FOnewmは外観をからかわれたと思ったのか気にしないように言ったが何、最初から気にはしていない。
獲物に穴と焼けこげしか付けられない能なし共に何を言われてもな。
今日は甘い物とやらを探せなかったので明日また一緒に捜索することにする。
まさかポイゾナリリーの蜜を分けるわけにもいかんだろう。

P2T783@660
昨日の依頼の続き。洞窟の中であっさりとケーキ3姉妹の店を見つける。
FOnewmは頭をかきながら自分と彼女の分まで購入していた。
依頼主にケーキを渡してやるとすさまじい勢いで食べはじめ、口の周りにケーキの屑とクリームが付いて醜悪だった。
しかも床にぼろぼろとこぼした屑をも指で拾って食っていた。
さすがにギルド受付も眉をひそめていたが。
しかしこれで多少人間の食に対する追求がすさまじいというのは
理解できた。
終わったあと又いつもの仕事をこなす。

P2T786@746
今日はついていない日だ。一人で秘密裏に行わないと行けないのだがあちこちで軍や他のハンターズに出会い、処理が出来なかった。
処理が一頭もできない日は初めてだ。
軍もどこまで俺の仕事を知っているのか分からない。
分隊の中には知らないところもあるだろう。どの程度知っているのか
明日連絡を取ることにする。

P2T787@882
政府に秘密にする範囲を再確認した。
「最重要機密事項」に変わりはない、とのことだ。
ただ軍の動向については俺にあらかじめ情報を「ある程度」教えておく、とのことだ。
あの調子だと軍のレーションにも俺の獲物が入っているかも知れない。
いいざまだ。
処理の能力が上がったため、より多くの食料を求められた。
金を多くもらえるとはいえ、やれやれだ。しかし武器をくれたからよしとする。
昨日の分をリカバリーするために明日も遅くなるだろう。

P2T796@786
リカバリーのせいでバックアップが今まで取れなかった。
武器の切れ味はなかなかだが、隙が大きいのでタイミングが図れない。
うっかり取り囲まれてしまいそうになった所に先日のFOnewmが通りかかって氷漬けにしてくれたおかげで助かった。
処理は出来なかったが、とりあえず礼を言う。
また雑談ついでに疑問に思っていたことを聞く。
メイトだけでは暮らせないのか?と。
苦笑いしながら彼は「食べる、ということはやめられないと思いますよ・・・
水だけ飲んで生きられるとしても我々は早々そのことを放棄しないでしょうね。
なんか、頼りなくて。あと美味しいものってやっぱり生きる元気がでますから」
と答えた。本当に気のいい奴だ。
彼の食っている物に俺の獲物が入っているかと思うとすまない気もする。
しかしこれは俺の仕事だ。

P2T797@903
採っても採っても追いつかない。でかい奴を狙えば処理にかかる時間は長くなるが、ノルマ分を探し回る時間は減る。しかし種類は少なくなる。
小さい奴だと処理は楽だが探し回る時間がかかる。
途中の馬鹿でかいのを狙おうとすると他のハンターズがわらわらとよってくる。
うっとうしいことこの上ない。
何がレアだ、仕事の邪魔をするな。

P2T800@737
政府にまた呼び出された。ノルマが果たせないことで叱られるのかと思ったが、違った。
複数のcastとcasealがそこにいた。
個々に依頼を行っていたが、本格的に組織を組むことになったそうだ。
ふん、見たことのある奴もいる。どうりですぐ立ち去ったわけだ。
長は俺になった。早速手分けして仕事に入る。見張りがいる分だけやりやすい。
黄色いRAcastが帰り道話しかけてきた。おしゃべりな奴で何でこの仕事につけたのか分からない。「盗み食いをしないためアンドロイドを選んだんだろう」
とか「チーム名は何にする?」とか。
くだらん、と言いそうになったが考え直し、明日答えることにする。
そうだな。俺の名前はChill。tabascoが軍での通り名だ。
レッド・ホット・チリペッパーというのはどうだ。R・H・Cだ。

P2T801@665
黄色いRAcastに昨日の件を伝えた。えらく喜んでいた。
他のメンバーは訳がわからないという顔をしていたが、今流行の
感情レンジが大きい奴なのだろうと言い含めておいた。
組織の長というのもなかなか困るものだ。

P2T805@501
今日も順調。チームワークも抜群となる。お互いの氏素性は分からないが気持ちがいいものだ。軍や政府の態度は相変わらず気にくわないが。

P2T807@553
メンバーの一人が早速欠けた。とはいっても奴の仕事は完璧だった。
政府に告げられたのだ。
俺達の仕事を依頼しておいて何だ。腹が立つ。
事情通のHUcasealによれば政府裏組織のごたごたに巻き込まれたらしい。
「私も知っているから欠けるかもね」と自嘲気味に言っていたが
そうはさせない。
このままの状態が続くことを奴らは望んでいないでもないような態度をとっている。ということはパイオニア2も当分このままだということだ。
あのFOnewmの言葉がよみがえる。「我々は食べることを放棄しない」と。
ならば、肝心の食料という首根っこを押さえているのはどちらか、という事だ。
自分たちだけ安全な物をのうのうと食うにも限りはある。
組織をもっと強くするために処理をする所を巻き込めないものか。

P2T808@342
処理を行う人間と接触に成功。気の弱そうなnewearl。
秘密を貯めていたものが一気に吹き出たらしく、何を言わなくても喋った。
「私たち、このままパイオニア2が留まるにしても新しい所に行くにしてもこのままの状態ではいけなくて、ラグオルから補給する必要があると考えています」
「長期摂取においてどのような影響があるか分かってないのにこんなことを行うのには問題があるのは分かってます、でも」
「フォトン調整と細胞除去処理は完璧です、博士のお墨付きです」
「私、兄弟とか友達が飢えて死ぬの見たくない・・・」
最後は泣いていた。
大丈夫だお嬢ちゃん。だから組織を固めないか?良いように俺達を扱う奴らに対抗するために?
奴らは俺達の命運を握っていると思っているがそれがどっちか将来教えてやろうじゃないか?
R・H・Cで?

P2T809@985
今日も俺達は作業を行う。完璧に。奴らの運命をこの手に握るために。
食べない俺達が、食料のために身を捧げていると思っているだろう。
だが、人間が食べることを放棄しない限り、最後に笑うのは俺達だ。
必ず。
 
 HUcastのメモリーを読む形で話が展開されるというアイデアが素晴らしいですね!
 パイオニア2の食糧事情という一見地味な着眼点から、これだけひきこまれるストーリーに仕上げられているのも見事です。
 素適な作品をありがとうございました。


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