一般公開するや否や、たちまちアミューズメント施設の一角で黒山のひとだかりをつくった『スーパーグルグルステーション』。大きさと華やかさがとにかく目を引いた。

コインを投入するとルーレットがスタート。ボタンでストップさせた数字がポイントとなる。


ほしい景品に狙いを定めたら、ボタンを押して高さを調節。景品が目の前にきたらタイミングよくもうひとつのボタンをプッシュ! アームが景品を押し出せば大成功!!


ポイントが貯まるとスペシャルアーム登場!! ブルトーザーのようなアームでGET率が大幅にアップする。


クリスマスイブ。幸せそうなカップルたちをひとり写真におさめるスタッフは、ふと「なんで俺はクリスマスに仕事してるんだろう?」と悲しくなった。

プロローグ
「お客さんどれがほしいの? これ?」
「そう、それそれ! プーさん!!」
「うーん、それじゃ特別に入れるからがんばって落としてねー」
「ありがとー!!」
まるで回転寿司のようなデンっとした風体のマシンと、ユーザーと店員のやりとり、そして異様なまでの盛り上がり・・・。こんなにもフレンドリーに楽しめるゲーム誕生のきっかけとなったのは、メカトロ研究開発スタッフ・深沢が常々感じていた不満だった。
〜ゲームセンターって楽しい空間なのに、なんだか自販機が並んでいるみたいで味気ないな。〜 もっと人と人とがコミュニケートできたら、アミューズメント施設そのものが楽しくなるんじゃないか・・・。そして1999年、全員参加型イベントゲーム『スーパーグルグルステーション』の開発が始まった。
すべてのお客様と均等にコミュニケートできるカタチ
まず頭を悩ませたのは、筐体をどんな形にすればみんなが一体感を持てるか、ということだった。それにはある程度の人数が同時にプレイできる大きさがなければならない。そして重要なのは、お客様を盛り上げる役(アテンダント)のポジション。参加者全員を見渡せ、ひとりひとりと対話できる位置がベストだ。そこで思いついたのが『回転寿司』だった。大きな楕円の筐体の周りで10人前後のお客様がプレイし、盛り上げ役が円の内側からゲームの様子を実況中継する。ひとつ決まると、あとは芋づる式に案が出てきた。
「どうせならとことん回転寿司に近づけて、寿司の代わりに景品を廻そう。それを客がGETするっていうのはどうだ?」。折りしも“寿司”をモチーフにしたキャラクターがハヤリはじめたころのことだった。
自分をかなぐり捨てて盛り上げた、社内擬似ゲーム
試作機ができた段階で、社内プレゼンを兼ねた擬似ゲームを開催した。プレゼンなら相当の場数を踏んできたスタッフたちも、同僚たちをお客にしたてて盛り上げ役を演じるのは初めてだ。かなり照れる。でもそんなことは言っていられない。実際に世に出回ったら、これをアミューズメント施設の店員にやってもらわなければならないのだ。スタッフたちは羞恥心を捨てて大声を張り上げた。
「さー、みんな盛り上がって行きましょー!」。
ロケテストで人気爆発!
試作機での擬似ゲームが大好評のうちに幕を閉じ、ついに一般公開。まずはロケテストということで、年末の2週間ほどアミューズメント施設に置いてユーザーの様子をみるのだが、そこでスーパーグルグルステーションは人気を博した。
特に盛り上がりを見せたのはクリスマスと大晦日。機械操作のシンプルさと景品がもらえるというお得感で、彼氏につれられてやってきた女の子たちが夢中になったのだ。大晦日は翌朝5時までの営業で予想以上の売り上げを出し、スタッフはあるひとつの確信を持った。
『このゲームは、人が集まるところ、集まる時期にめちゃくちゃ強い! 店員の煽動しだいで今までのアミューズメント施設とは全く別の、明るい雰囲気を作り出すことができるだろう!』。
結局みんな目立ちたがり!?
驚いたのは、客だけでなく盛り上げ役たちも楽しみだしたことだった。お客様の反応をダイレクトに感じられるゲームを初めて経験し、その快感に味をしめて「オレもオレも〜」と競って中へ入るようになったようだ。ユーザーがノってくると、店員が独自にじゃんけん大会やクイズ大会などを考えてお客様とコミュニケーションをとるようになっていった。
運営の難しさを再認識
メカトロ研究開発部のスタッフたちは今まで、ユーザーが夢中になれるゲームを作ってきたが、この「スーパーグルグルステーション」では、お客様とスタッフとの“コミュニケーション”もコアに考えた。それにより、運営することの難しさを改めて再認識したのだった。
今後も、「こうしたらもっと運営がしやすくなる!」ということをも念頭においてのゲーム制作は続いていくだろう。そしてこれから生まれるゲームにとって、『対人』は大きなテーマになっていくだろう。