Hitmakerのスタッフによるリレーコラムです


同期つながりでお鉢が回って来てしまいましたデザインの木村です。

樋口くんから
と紹介されましたが、 方向性の違いは在れども私に引けを取らない程マイペースな彼のこの一言に内心思わず「人のこたぁ言えんだろう」と突っ込みを入れてしまったのはきっと私だけではない筈…。
自覚があるので文句は言えませんが。

「最速」とは確かに無縁ですね。免許はオートマ限定な上に、車に求めるものは輸送力と馬力と燃費の良さですし(苦笑)

理由は
1)家事に便利(買い物など)
2)画材を運ぶのに便利(画材は大概嵩張る上に重い)
3)望遠鏡その他機材を運ぶのに便利(かなり重い上に観測地は山)という実利主義っぷりです。
4)は私が高校の頃に物理部地学班(部活名。他に無線班と実験班もあったがほとんど独立していた)に所属して天体観測をしていたからで、今だに年に数回は観測会に行っています。お題の「私と感動」はこの天文に関することから行きましょう。

さて、天文というと「ロマンチック」だと思われる方が結構いるんですが実際はそうでもないんです。確かに空の環境の良いところに行けば溜息が出るほど星は美しい。けれどそれはちょっと眺めるだけならばの話で、観測となるとそうも行きません。

アマチュアでも、ちゃんと観測をしようとすると望遠鏡もなるべく口径の大きなものにしたいし、人数がいれば台数も増やしたい。
良い写真を撮ろうと思ったらしっかりガイド出来る赤道儀が欲しいけれど、無理ならガイド用にスコープを。一眼レフカメラに各種レンズ、バッテリー、露対策のカイロなどなど、必要な機材は山程あります。
望遠鏡は重いもので1パーツ2・30kg位ありますが、それらを全て自分達で運ばなければなりません。

星の綺麗な場所は大体高地なので、途中までは車で運べても機材を担いで山道やら階段を登ることも良くあります。

その上そういう場所は夜になるとびっくりする位寒くて、うっかりしているとガチガチ震える羽目になりますし、観測中は望遠鏡に振動を与えないようにじっとしているので余計に冷えます。

観測のチャンスは幾らでもあるように思えるかもしれませんが、実は一番良い条件の時はそうそう巡っては来ないし、天文現象(流星や食など)はその時を逃したらもうそれでお終いです。なので、計画をしっかり立てて下準備を整えて臨みます。

それでも山の天候は変わりやすいので観測中に雲が出てしまって中断しなければならなくなったり、急に雨が降り出したり。しかもいつ晴れるか分からないので交代で見張りについたりします。

どこかの天文台を借りてコンピューター制御の望遠鏡で天体を入れ、暖かいところで映像を見る事も可能ですが、私は刻一刻と変わる自然の中で自分で天体を探して、入れて、観測することが好きです(観測が手段として必要ならば天文台を使った方が良いんですけどね)。

とは言え天文台で観られるものは桁違いに素晴らしいので、それはそれで感動的なのですが、苦労はしてもそこで得られる経験は替え難いものがあるし、単に天体を見る以外にも感動は在ります。

例えば観測中に体の周りを舞う蛍だとか、強い風に星が瞬いて見えるところ、雲が切れたら雨で洗い流された空がギラギラする位澄んでいたこと、柔らかい月の光と淡く発光するような月見草の草原。鹿の鳴き声や山の生き物の気配。徹夜空けに見た赤富士など。
それに彗星、流星、月食に日食などの天文現象は自分自身で体験してこそ感じられる感動だと思います。
他に「感動」と言えば屋久島に行った時のことを思い出しますが、これは私でなくとも感動すると思うので割愛します。

身近なところでは実家にいた頃のこと。
私の家はちょっとした丘の上に在って、南側の向かいには300m位の低い山が東から西に連なっています。
夏になると蝉が沢山いてうるさい位なのですが、日が翳って薄暗くなるとカナカナカナ…とヒグラシの声が山々に反響して急に幻想的な雰囲気になります。

ヒグラシと言うから夕方に鳴く蝉だと思っている人は結構多いのですが、この蝉は薄暗ければいつでも鳴きます。
むしろ朝方の方が他の蝉などの雑音が入らないので、とても美しく響きます。
朝、烏も活動する前の薄明。うっすらと蒼い風景の中でヒグラシが鳴き始めます。東の山の方から始まって、音が漣のように重なり合って、だんだんこちらの方にやって来る。鳴き声が山と丘との間の盆地を満たして、30分位すると夜が明けて日常の活気が戻ってきます。
中学生の頃、初めてこの体験をした時にはとても感動しました。
以来、この時期になると4時前に目覚し時計をかけ、ベランダに出てぼおっと景色を眺めつつ聞き惚れています。

…なんて。
感動にも色々在りますが、見事に自然系に纏まってしまいました。
疲れているんですかね…

さて、長々とお付き合い下さいましてありがとうございました。

オチも何も在りませんでしたが、次ぎの方に回したいと思います。
お題は疲れた時に欲しくなる「私と甘いモノ」で。
いつもフェミニンなスカート姿のおねえさま・齋藤純さんにお願いします。
では。


<< BEFOR ISSUE | NEXT ISSUE >>

HHP
HHP
■木村 友恵(デザイナー)
入社2年目(まだ4月だから違和感あるな)のデザイナー、木村さんでございます。
現在は丸秘プロジェクトでバリバリ活躍中の彼女。コラムにもあるように天然少女……じゃなくて天文少女で、いまでもたまに星を見に行くというステキな趣味の持ち主。
学生時代は日本画を先行していたそうで、とある美術館にも作品が展示されたことがあるっていうんだから、たいしたもんだ。

HHP