名越コラム
メンバー紹介
長沼 英樹長沼 英樹:今ハマっていることは「倍賞千恵子の再評価」。『オーリーキング』のイカすサウンドは全てこの人の手によるもの。横山 昌義:最近、「名越さんのオゴリで遊ぶ」ことに目覚めてしまったディレクター。好きな言葉は「漁夫の利」、人生観は「弱肉強食」。横山 昌義
菊池 正義菊池 正義:アルファロメオスパイダーを乗り回すプロデューサー。今欲しいものは北欧製のリッチなテーブルと合コン相手。
第1回:『JSR』の世界観を実際のストリートで試してみたかった。
「オーリーキング」は『ジェットセットラジオ』チーム初のアーケードタイトルですね、なぜアーケードでやろうと?
横山JSRF(ジェットセットラジオフューチャー)』を作ってたときに、菊池さんが「ジェットのキャラでスケボーゲームを作ったら面白くない?」って言ってたのが始まりかなあ。『Ollie King(オーリーキング)』
菊池DC版の『JSR(ジェットセットラジオ)』を作ってたときに、実はスケボーに乗った敵キャラがいたんすよ。ボツになったけど。
長沼いたいた、スケボーマン!確かボイスも撮ったなあ。
菊池ま、僕らもアーケード作ったことなかったし、チャレンジしてみたいっていう部分もあったからね。
それで、横山どう?って
なるほど、今度はスケボーでいこうと。スケボーとかスケートカルチャーが好きなんですか?
横山スケボーは少年時代にちょっとやりましたね。光GENJIがローラースケートやってる頃、俺はスケボーやってましたよ。ローラースケートできなかったから。でも後頭部を強打して止めましたけど。
菊池僕も少年時代にちょっとスケボーやったけど、上手くはならなかったなあ。こういうエクストリームものってヤッパ怖いじゃないですか。でもみんな憧れはある。じゃあゲームで作っちゃえ!って。スケートカルチャーも『JSR』シリーズとの共通点がかなりあると思うんですよ、乗ってるものは違うけど。それなりにその文化に触れてはいたんですよ。
横山俺ら、スケボーが上手くできなかったから、ゲームが作れたんだと思うんすよ。実際は「後ろを踏めばジャンプ」なんて簡単なもんじゃないでしょ。
菊池そうそう、スケボーには乗れないけど、でもその気持ちよさは味わいたいんだよね。ゲームならその気持ちよさにすぐ行ける。実際のスケボーは気持ち良さがわかるまで、えれえ大変なんだけど。

『JSR』シリーズを作っていたからこそ、生まれたゲームなんですね。じゃあ『JSR』シリーズと変えようと意識したところは?
菊池何つっても「レースゲーム」だってことですね。『JSR』シリーズって自由にフィールドを駆け回ってなんでもできるってところが魅力的だったんだけど、逆にそこが敷居が高いのかなとも思うんですね。のめりこめればいいんですけどね。その点レースゲームは目的がはっきりしてる分、わかりやすいんで誰でも入りやすい。
横山そう、レースっていうのがやっぱりポイント。言うなれば70年代のスケボーなんすよ。サーフィンの波待ちの間に生まれた、黎明期のスケボー。トリックをメイクするよりも、低いライディングポーズでひたすらダウンヒルするっていうスタイル、そのスケボーの感覚。で、長沼さんにも音楽もその世界観がほしいってお願いして。
長沼そうですね、70年代は意識しましたね。『JSR』の時よりもテクニックに走らなかったというか、もっとラフに作ったというか。ま、でも70年代のヒップホップにしろサーフミュージックにしろテンポがゆっくりなんですね。だから、そのままではゲームに使えない。なので、70年代の要素を汲み取りつつ現代にもってきた、70年代の音楽をデジタルで再解釈した感じですね。特にタイトル曲「Boarder 70」はその色が濃いかな。
横山長沼さんにとっては、今回は新しいチャレンジだったと思うんすよ、俺は。『JSR』シリーズは長沼さんが好きなことをやって、長沼ワールド全開みたいな部分があったけど、今回って70年代とかガキっぽいパンクにして、とか今までにないテイストを色々オーダーしたから。
菊池僕が長沼さんに一番強く出してたオーダーが、やんちゃなガキ達が聞いてワーッてバカ騒ぎできるような、そういうガキ達に直接届くような音楽が欲しいって。
横山そうそう、そう言ってた。で、長沼さんが、自分の席で「ウーン、どんなだろ」って悩んでて。確かに大変そうだなって思ってたんすよ。でも俺は、「ま、がんばってね。じゃ」って軽く。
長沼そのガキっぽいパンクを一番意識して作ったのが、京都ステージの曲「Too Fast」ですね。ガキパンク+デジロックという感じで。
菊池ゲーム的には音楽もそうなんですけど、今回はスピードいっぱい出せることがうれしいですね。『JSR』だとスピードを出しすぎちゃうと難しくなりすぎちゃうんですね。すぐ壁にぶつかっちゃうとか。でも、今回はレースなんで思いっきりスピードが出せるんですよ。これがうれしい。ま、ある程度のリアリティは出さなきゃいけないですけどね。
横山うれしいって言えば俺はアレすね。プロスケーターの米坂淳之介君にモーションを頼んでて、そのモーションをゲームに組み込んで、プレイしてもらったンすけど、淳之介君が「グラインドの操作感が本物に近い」って。ホントにレールの上を滑ったことのある人に、そう言われたのってスゲーうれしかったっすね。狙って作ったわけじゃないんだけれど。簡単で誰にでもできるゲームを目指して作ってるんだけど、本物を知ってる人にもリアリティを感じてもらえたっていうのがすごく良かった。

米坂 淳之介君って、日本のトッププロですよね、そんな人とどうやって知り合ったの?
横山淳之介君には俺がいきなり電話して・・・まあ『JSRF』でお世話になった人に電話番号教えてもらって「あのーワタクシ、セガのヨコヤマと申しますけれども・・・」「セガってゲームの?(淳)」「そそそ、そうです。(横)」って、淳之介君のお兄ちゃんの真之助君が、前に『トップスケーター』(ヒットメーカー)に関わってたこともあって、セガを知ってて、快く協力してくれたんすよ。そういうわけで、トリックだけじゃなく、しゃがんだりライディングスタイルだったりも含めて、キャラクターのモーションを淳之介君と真之助君、あと猿渡 聡君の3人のプロスケーターにお願いしたんですよ。
菊池このゲームは、ある意味スケボーとしてのリアリティがないじゃないですか、すごいスピードが出たり、とんでもないところを走ったり。でも逆に彼らはそれを面白がって楽しんでくれましたね。それは、僕としてはかなり安心しました、上手くエクストリーム感が出せたかな、って。

グラフィックがすごく特徴的だけど、なぜこういう非リアル系の路線でいこうと?
横山もともと『JSR』の世界観をアーケードで試してみたいって思ってたんすよね、アーケードはリアルな絵が多いのでこのテイストのものが新鮮で存在感があるんじゃないかと思って。『ジェットセットラジオフューチャー』
ジェットセットラジオフューチャー
菊池確かに試したいってのはありましたね。『JSR』テイストってストリート的なカッコよさを追求しているので、実際ストリートにあるゲームセンターに持っていってみたいって、ずっと思ってましたね。

矢印が追っかけてきたり、トリックを出すと波紋が広がったりっていうのも、その辺を意識して?
菊池JSR』シリーズは、ストリートカルチャーのひとつとしての「グラフィティ」ってものを主軸に置いていたんだけど、この「オーリーキング」でもなにか違った形で「グラフィティ」を表現できないか、というのが一つの命題だったんですよね。それを具現化したのが、あの形式なんですね、「動くグラフィティ」というか。『JSR』のように壁に書くのではなくて、その世界全体をグラフィティで埋めるという感覚にしたかったんですよ。しかも、3Dで。
初公開!『Ollie King』初期画像
初公開!『Ollie King』初期画像
横山テスト段階では、もっともっと派手にやってたんすよ。すごくトリップ感を出したくて。音楽のビートに合わせてビルが「うんにょ♪うんにょ♪」って伸び縮みしたりとか、キャラの影が勝手に動いたりとか、過剰な演出や凄まじいカメラアングルとかも実験したんすよ。見た目にすげえカッコいいって思ったものも、プレイしてみると何がなんだかわからなくなってたりして。色々試行錯誤してみた結果、スケボーゲームとして成立して、かつトリップ感のある今の形に行き着いたってカンジすね。
第2回
まだまだ続きます!→→第2回

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